ADHDの方へオススメの対策17選〜仕事・生活・二次障害に分けて徹底解説〜 | キズキビジネスカレッジ  

ADHDの方へオススメの対策17選〜仕事・生活・二次障害に分けて徹底解説〜

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田淳平です。

ADHDの特性・傾向をお持ちのあなたは、様々な場面で困りごとを抱えていると思います。

「生活面だけでなく、仕事面での対策もしなくては」と、普段から緊張感やストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。

また、後述するように、うつ病や適応障害といった「二次障害」への対策が必要な人もいらっしゃいます。

そこで今回は、ADHDの人に実践してみてほしい対策を、仕事・生活・二次障害に分けて徹底解説いたします。

ADHDの傾向があっても確定診断の下りていない「グレーゾーン」の人にも役立つ対策を紹介していきますので、ADHDの特性でお困りの人はぜひ一度、読んでみてください。

【本文に入る前に…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?

「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。

キズキビジネスカレッジ(KBC)を利用した方は…

初任給
うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
就職までの期間
通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
就職率
通常52%のところ、
KBCでは82%

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2022年7月現在9校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。 臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。

【著書など(一部)】
子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数

日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」

監修角南百合子

すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい

執筆寺田淳平

てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

目次

ADHDの人の困りごと6選

まずこの章では、ADHDの人が直面しやすい、以下の困りごとを紹介します。

ただし、これらの困りごとは、「ご自身がADHDかどうかを判断するためのもの」ではありません。

ADHDの特性は人によって個人差があり、その特性による悩みも人それぞれで異なります。

そのため、「まだ検査を受けておらず、自分がADHDであるかどうかを確定させたい人」は、専門医の診察や心理検査を受けてみてください。

「検査を受けるべきかどうか」悩んでいるなら、後述する支援団体で相談できますので、ご興味にある場合はご利用ください。

①整理整頓がうまくできない

①整理整頓がうまくできない

1つ目は「整理整頓がうまくできない」という困りごとです。

ADHDの「気が逸れやすい」「先延ばしにしやすい」といった特性上、書類などをデスクに置きっぱなしたり、掃除をしなかったりすることで、机周りが散らかるという人が少なくありません。

ペンやハサミといった道具類も無意識のうちにどこかに置いてきたり、とりあえずしまっておくといった行動が起こりやすいため、整理整頓が苦手な傾向にあります。

仕事の場面では、備品や重要書類を紛失することもあるため、「整理整頓がうまくできない」ことが悩みだという人は多いでしょう。

②忘れ物やミスが多い

2つ目は「忘れ物やミスが多い」です。

ADHDの特性である「不注意性」ゆえに、持ち物を確認しなかったり、内容をよく読まないで書類を書いたりしやすく、忘れ物やミスが頻発します。

仕事では、別の業務や新しいアイディアに気を取られて物忘れをするというのも、ADHDの特徴の一つです。

前に挙げた「整理整頓がうまくできない」ことから、探し物を見つけることに時間がかかり、そのうちに人から声を掛けられて「自分が何をしていたのかを忘れてしまう」ケースも見られます。

③スケジュールの先延ばしや遅刻をしやすい

③スケジュールの先延ばしや遅刻をしやすい

「スケジュールの先延ばしや遅刻をしやすい」というのもよくある困りごとです。

とりわけ、衝動性の強いADHDの人の場合、本人の感覚を重視して行動するためそもそも「計画を立てる」「スケジュールを調整する」ということが苦手な人もいます。

また、不注意性が強い人もスケジュール確認や準備を怠りやすいので、「予定を詰めすぎて遅刻してしまった」という事態が起こりやすいです。

専門家の中には、こうした時間管理が苦手な傾向を「時間処理の障害(Temporal Processing)」として、大きな特性の一つに数える人もいます。

例えば、臨床心理士の中島美鈴氏は、「ADHDの人は、特性上、時間の経過を把握することが難しい」ということを述べています。

そのため、「本人の見積もっている時間」と「実際にかかる所要時間」との間にズレが生じやすく、計画を立てても想定通りに進まずに締め切りを過ぎたり、準備に手間がかかって待ち合わせに遅れたりすることが、こうした悩みにつながるそうです。
(参考:中島美鈴『もしかして、私、大人のADHD?』)

④タスク管理が苦手

4つ目は「タスク管理が苦手」という困りごとです。

タスク管理とは、対応すべき業務や課題(タスク)を的確に把握し、進捗管理を行うことです。

以下のような作業がタスク管理に該当します。

  • 業務遂行までに必要な工程を洗い出す
  • 洗い出した工程をもとに計画を立てる
  • 作業に優先順位を付け、進捗状況を記録する

ADHDの特性上、考えを整理することにも困難を感じやすく、必要な工程や作業をうまく切り分けて並べ替えることが難しいという人は珍しくありません。

また、業務が溜まってくると、タスクそのものを失念したり、新規の案件に気を取られて優先順位を見失ったりします。

仕事の場では、タスク管理は業務遂行のベースになるため、困りごととして挙げる人は多いです。

⑤気が散りやすくて集中できない

⑤気が散りやすくて集中できない

仕事でも勉強でも、作業をするときにはある程度の集中力が必要です。

特に、締め切りに追われているときや繁忙期には、短時間で多くの処理を行う必要があります。

しかし、ADHDの特性上、人から話しかけられたり、仕事以外に気にかかることがあったりすると、そちらに気を取られて集中できないという人が多く、パフォーマンスが上がらないことが困りごとになる人もいます。

⑥うつ病や適応障害などの「二次障害」に悩まされる

ADHDやASDなどの発達障害のある人は、特性上、処理能力やコミュニケーションに障害が生じ、社会生活でのストレスを抱え込みやすいと言われています。

このような、発達障害に伴って生じるうつ病などの精神疾患等を「二次障害」と呼びます。

特に、ADHDの社会人の場合、正確な処理やスケジュール管理ができず、上司や同僚から叱責を受けることで二次障害を患うケースが度々見られます。

その結果、働くことが嫌になって仕事が続かないなど、二次障害の悩みを抱える人は一定数いるようです。

【仕事編】ADHDの人が実践したい8つの対策

この章では、「仕事」に取り入れられる対策を見ていきましょう。

一番大切なことは、発達障害に伴う仕事の悩みを一人で抱え込まないことです。

周囲の同僚や上司、専門機関の支援員など、できるだけ周りの人の協力を求めるようにしましょう。

それを踏まえて、以下の対策を試してみてください。
(参考:司馬理英子『大人の発達障害 アスペルガー症候群・ADHD シーン別解決ブック』、對馬陽一郎『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の方が上手に働くための本』)

対策①医師や支援機関に相談する

対策①医師や支援機関に相談する

まずは「医師や支援機関に相談する」ことから始めましょう。

主治医は、あなたがADHDの特性とうまく付き合っていく上で、大切なパートナーです。

定期的に通院して悩みを共有することで、あなたの特性に即したアドバイスがもらえるでしょう。

生活上の悩みだけでなく、仕事に関係する相談にも乗ってもらえます。

また、公・民を問わず、ADHDの人を支援している機関は複数あります。

  • 発達障害者支援センター(全国の一覧はこちら
  • 精神保健福祉センター(全国の一覧はこちら
  • 地域障害者職業センター(全国の一覧はこちら
  • 障害者就業・生活支援センター(全国の一覧はこちら

特に「地域障害者職業センター」と「障害者就業・生活支援センター」では、状況に応じてお勤め先とあなたの間に入って業務の調整を図る場合もありますので、仕事にお困りの人には頼りがいがあるかもしれません。

また、後述する「就労移行支援事業所」のように、仕事の悩みに丁寧に寄り添って解決策を提示してくれる支援機関もあります。

もし、どの支援機関に行くべきか迷うという場合は、お住いの自治体の障害福祉課が窓口になりますので、詳細を問い合わせてみてください。

対策②同僚にリマインドをお願いする

2つ目は「同僚にリマインドをお願いする」という対策です。

ADHDの人は、スケジュール管理を自力でしようにも、特性的に困難な場合があります。

そういうときは、業務を分担している同僚に事情を話して、リマインドを依頼しましょう。

「自分で解決すべきだと思い詰めていたけれど、同僚にお願いしてみたら嫌がられることもなく、簡単に解決した」というケースは案外あるものです。

ぜひ、無理のない範囲で、周囲の同僚に相談してみてください。

対策③整理整頓だけする時間をつくる

対策③整理整頓だけする時間をつくる

3つ目は「整理整頓だけする時間をつくる」という対策です。

一日のうちに「整理整頓しかしない時間」を設けると、自分の行動やタスクを落ちついて確認する機会ができます。

その時間に、書きつけたメモを一つの手帳にまとめたり、現在の業務に直接関わりのない書類を決まったところに片付けたりすれば、仕事の見通しがよくなるはずです。

対策④リスト化を徹底する

「リスト化を徹底する」というのも効果的な対策です。

これはタスクの見落としや忘れ物で悩むADHDの人に、特にオススメの対策です。

リスト化のコツは、できるだけ「一つの」ノートや紙などにまとめることです。

その上で、仕事や持ち物を書きだし、完遂したら線を引いて消す習慣をつけましょう。

マーカーの色にルールを設けて優先順位を付けるなど、リスト化の際に工夫を取り入れることで、もっと仕事が楽になる可能性もあります。

対策⑤ゲーム要素を取り入れる

対策⑤ゲーム要素を取り入れる

「ゲーム要素を取り入れる」という方法もあります。

これは興味のあること以外はやる気になれないというADHDの人に有効な対策です。

医学博士である星野仁彦先生は、ADHDの人はゲームやネットなどにはまりやすく、寝食も忘れてのめり込む傾向が顕著だと指摘しています。
(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』)

見方を変えれば、ゲームやネットにはまりやすい傾向を利用することで、仕事に対しても集中力を切らさずに取り組める可能性があるということです。

競争心を刺激されるようなことや勝負事といった「ゲーム要素」を取り入れることで仕事に楽しみが見いだせるかもしれません。

具体的には、タイムアタック形式のようにどれだけ早く作業を終えられるかを計測してみたり、一緒に仕事をしている同僚とどちらが多く契約を取れるかを競ってみたりするといった方法が挙げられます。

仕事に楽しみを見出し、やる気を出すためにも、「ゲーム要素」を取り込んでみてはいかがでしょうか?

対策⑥ツールを導入する

6つ目は「ツールを導入する」という対策です。

近年、ADHDの特性を補う目的で開発された「タスク管理ツール」が注目されています。

例えば、社会福祉法人SHIPの提供している「タスクペディア」では、ADHDの当事者の人が編みだしてきたタスク管理の手法が採用されています。

また、医療分野において様々な解決策を提示している株式会社Welbyが開発した「AOZORA」も、ADHDの人向けのタスク管理ツールとして有名です。

いずれも、当事者や専門医の監修を経て開発されているため、信頼のおけるツールとなっています。

自力でのタスク管理に限界を感じるADHDの人は、こうしたツールを導入するのも良いでしょう。

対策⑦雇用枠や働き方を見直す

対策⑦雇用枠や働き方を見直す

7つ目は「雇用枠や働き方を見直す」です。

仕事内容や働き方で苦労しているなら、雇用枠や働き方を見直すことも検討しましょう。

障害者を対象とする求人・雇用に、「障害者雇用(障害者枠)」というものがあります。(障害者枠以外の求人・雇用のことは、「一般雇用枠(一般枠)」と言います)

障害者雇用枠では、発達障害の特性や程度に応じて、業務内容や業務量への配慮を得ながら働くことができます。

ADHDに限らず、「一般雇用枠」で働いている発達障害の人は、「障害者雇用枠」に移ってから心理的な負荷が減ったというケースが少なくありません。

しかし、障害者手帳が必要であったり、給与水準や昇進などは、一般雇用枠に比べて、満足のいく待遇を得られない可能性もあります。

あなたの二次障害の状態や、経済状況、働き方、生活と仕事の優先順位などを総合的に考えて「一般雇用枠」か「障害者雇用枠」のどちらで働くかを判断することが大切です。

雇用枠や就労形態にはそれぞれ一長一短がありますので、実際に見直しを行う際には支援機関の専門家に相談することをオススメします。

障害者雇用枠の詳細は、コラム「障害者雇用で働くための条件とは〜メリット・注意点・サポート団体なども紹介〜」をご覧ください。

対策⑧就労移行支援事業所で仕事術や向いている職業を考える

最後に、特に転職・退職を検討されている人は「就労移行支援事業所で仕事術や向いている職業を考える」ことも有効な対策です。

就労移行支援事業所では、病気や障害のある人が就職や転職のためのサービスを受けられます。

就労移行支援事業所は、公的な認可を受けた様々な団体がそれぞれの理念や得意分野によって運営しています(私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)もその一つです)。

利用のためには障害者手帳は必須ではなく、専門医による診断書があれば支援を受けることが可能です。

<p>支援の詳細は事業所ごとに異なりますが、あなたの特性に合わせた「個別支援計画」に基づいて、仕事の相談だけでなく、コミュニケーションの訓練や専門スキルの習得、就職先の紹介までと、多岐に渡るサポートを行っています。

もちろん、ADHD対策として有効な仕事術だけでなく、あなたの特性的に「向いている職業」を考えるお手伝いもしています。

また、事業所によっては就職・転職された人向けに「職場定着支援」を行っているところもあります。

就労定着支援では、一般的な定期面談の他に、就職先での業務内容や業務量の調整といった、職場で長く働き続けるためのサポートが受けられますので、仕事が続かないことでお悩みの人には、特にオススメです。

実際に、障害者職業総合支援センターの統計によれば、職場定着支援を受けた人とそうでない人で、1年後の職場定着率に20%近い差が出ています。
(出典元:障害者職業総合支援センター ※PDF「障害者の就業状況等に関する調査研究」)

相談・見学は無料ですので、受けたい支援内容のある事業所に、一度問い合わせてみるとよいでしょう。

【生活編】ADHDの人が取り入れたい5つの対策 

この章では、ADHDの人が生活の上で取り入れたい対策を5つ紹介いたします。
(参考:村上由香『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』)

対策①同居者に確認をお願いする

対策①同居者に確認をお願いする

1つ目は「同居者に確認をお願いする」です。

ADHDの特性は、脳の機能の偏りによって生じているため、自力で全てをカバーするのは難しい面があります。

それは仕事に限らず、生活面でも同じです。

ご家族や恋人と同居されていたり、ルームシェアをしていたりする人は、予定や持ち物の確認をお願いできるとよいでしょう。

家を出る前や、朝食を一緒に取っている際などに教えてもらうことで、その日の予定や持ち物の抜け落ちをある程度、軽減できるでしょう。

対策②スケジュールやリストを壁に貼る

スケジュールなどが抜けやすい人には「スケジュールやリストを壁に貼る」ことがオススメです。

具体的には、リビングや共用部にホワイトボードなどを掛けておいて、共有したい予定を思いついたら書きつけておくという対策法があります。

あなた自身が予定を確認しやすくなるだけでなく、見落としているときには、同居人の方が予定を確認しやすくなりますので、オススメです。

スケジュールやリストは、できるだけ一つにまとめて、壁に貼ったり、ホワイトボードに書いたりするようにしましょう。

対策③持ち物を一つのバッグにまとめる

対策③持ち物を一つのバッグにまとめる

3つ目は「持ち物を一つのバッグにまとめる」です。

これは、支度に時間がかかることで遅刻しやすい人や、忘れものをして取りに戻ることが多い人にオススメな対策です。

持ち物を「できるだけ一つのバッグにまとめる」習慣を身につけることで、支度にかかる時間や忘れ物を減らすことができます。

バッグが複数あると、バッグごと忘れる可能性もあるため、普段から持ち歩くバッグを一つに決めておくのがよいでしょう。

対策④毎日の起床と就寝の時間を定める

4つ目は「毎日の起床と就寝の時間を定める」という対策です。

ADHDの人は、興味・関心の強い趣味や作業に対して異様な集中力を発揮する「過集中」という状態になりやすいことが知られています。

「過集中」状態になると、時間を忘れて没頭するため、夜更かしをしやすく、それが朝寝坊による遅刻につながる場合も少なくありません。

それゆえ、起床と就寝の時間をきちんと定めて習慣化することで、生活リズムを安定させることが重要です。

この対策のポイントは、「起床と就寝の時間だけは厳守する」「入浴の時間は決めておく」「毎日同じ時間に夕食を食べる」というように、自分の生活上のルールを明確にすることです。

同居人に、就寝30分前に声を掛けてもらうなど、一緒に生活をしている人に協力をお願いするのも良いでしょう。生活リズムの安定は、気分や体調の安定にもつながることが知られています。

対策⑤リマインダーアプリを利用する

対策⑤リマインダーアプリを利用する

最後は「リマインダーアプリを利用する」という対策です。

スマートフォンの内蔵アプリや、Googleの提供しているカレンダーアプリなど、設定した時刻になるとプッシュ通知をする無料のアプリはたくさんあります。

こうしたアプリの「リマインダー機能」を活用することで、タスクや予定の漏れを軽減できるはずです。

また、「Time Tree」のような予定共有アプリを使うことで、効率的に家族とスケジュールを共有するといった利用の仕方も有効でしょう。

【二次障害編】ADHDの人向けの4つの対策

最後に、二次障害を持つADHDの人ができる対策を4つ紹介します。

治療にあたっては医師の判断や指示をきちんと聴くことが大切です。

特に、薬を服用している人は、自己判断での断薬は絶対にしないでください。

かかりつけ医はあなたの状態に応じて薬剤を出していますので、副作用などを理由に減薬・断薬を考えている人は、まずは相談するようにしましょう。

上記の点に留意して、以下の対策を実践してみてください。
(参考:木津谷岳『これからの発達障害者「雇用」』、佐藤隆『職場のメンタルヘルス実践ガイド』)

対策①定期的なカウンセリングを受ける

対策①定期的なカウンセリングを受ける

1つ目は「定期的なカウンセリングを受ける」です。

医師の診察と薬の服用はもちろん有益ですが、それに加えて臨床心理士などによるカウンセリングを受けることも、二次障害の改善には有効です。

カウンセリングでは健康面の悩みだけでなく、仕事に関する悩みについても相談できますし、具体的なアドバイスを得られます。

話をするうちに、自分でも気付かなかった「考え方の癖」を自覚することで、ADHDの特性理解につながるなど、様々なメリットが期待できます。

経過観察を続けることで、カウンセラー側でもあなたの特性や現在の状態を指摘しやすくなりますので、二次障害にお悩みの人も予防を心掛けたいという人も、ぜひカウンセリングを受けてみてください。

カウンセリングを行う人の例として、臨床心理士は、一般社団法人日本臨床心理士協会のウェブサイトで探せます。

対策②生活習慣を整える

心身の健康のためには、安定した生活習慣が必要です。

特に、就寝と起床の時間はできるだけ一定にするようにしましょう。

睡眠リズムの乱れは、生活習慣の乱れに直結するだけでなく、仕事中のパフォーマンスにも関わってきます。

また、薬を服用中の人は特にアルコールやカフェインの摂取に注意してください。

これらの嗜好品は治療の妨げになるだけでなく、頭痛・不安・不眠の原因になると言われています。

アルコールは、依存を防ぐためにも、毎日飲んだり大量に飲んだりしないように気をつけましょう。

カフェインも、不眠を防ぐために、夜に摂取することは控え、日中も多すぎる量を摂らないよう注意しましょう。

対策③適度な運動を取り入れる

対策③適度な運動を取り入れる

3つ目は「適度な運動を取り入れる」です。

二次障害の対策には、日頃受けているストレスを上手に発散することが重要ですが、その方法として「適度な運動」は効果的です。

適度な運動の例には、以下のようなものがあります。

  • 毎日20分程度の散歩
  • 簡単な屈伸運動やストレッチをする
  • 週2~3日程度30分のジョギング

ただし、無理をすると運動自体がストレスになる可能性もあるため、注意してください。

二次障害対策として運動する場合は、あくまでも「疲れすぎない程度」という点が肝要です。

対策④食生活を改善する

4つ目は「食生活を改善する」という対策です。
(出典:志村哲祥「特集 産業精神保健の現状と課題 睡眠・生活習慣とジョブストレス・プレゼンティーイズム」)

ファストフードの摂取や、食べすぎによる肥満、ダイエットによる栄養不足など、食生活の乱れは落ち込みやうつの発症に関わります。

反対に、野菜、果物、魚、大豆製品、きのこ類、緑茶など、健康的でバランスのとれた食事を摂ることが精神疾患の予防・改善に役立つと考えられます。

ぜひ、医師などとも相談しつつ、食生活という観点から、二次障害を緩和できないか考えてみましょう。

改めて、ADHDとは?

改めて、ADHDとは?

改めて、ADHDの概要を紹介します。既にご存知かもしれませんし、これまでに紹介した内容と重複する部分もありますが、全体的な理解が深まると思いますので、よければご覧ください。
(参考:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、田中康雄『大人のAD/HD』、岩波明『大人のADHD:もっとも身近な発達障害』)

①ADHDの概要

①ADHDの概要

ADHDとは、「注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)」を意味する発達障害の一種です。

ADHDには多くの特性がありますが、その中でも下記の2点がよく見られるものとして挙げられます。

  • 不注意…忘れ物やケアレスミスが多く、確認作業を苦手とする
  • 多動・衝動性…気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない

その他にもよく挙がる特性の現れ方として、「マルチタスクやスケジュール管理が苦手」といったものがあります。

②ADHDの診断は医師だけが可能

②ADHDの診断は医師だけが可能

「自分が(ある人が)発達障害(ADHD)かどうか」の診断は医師による問診や心理士が実施する心理検査を中心に行われます。逆に言うと、医師以外には「発達障害かどうか」の診断・判断はできません。

あなたが(ある人が)「発達障害かどうか」をハッキリさせたいのであれば病院を受診してみることをオススメします。

「診断を受けるのが不安」と思う人は、発達障害者のサポートを行う団体(各都道府県にある発達障害者支援センターなど)に「病院に行くべきかどうか」「診断をつけるメリットやデメリット」などを相談することができます。

③ADHDの医学的な診断基準

下記は、2013年にアメリカ精神医学会がまとめた『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』に挙げられているADHDの診断基準です。

次のような診断基準に当てはまればADHDの可能性があります(あくまで可能性です。「どの程度なら『当てはまる』と言えるか、他の病気や障害の可能性はないかなども含めて、「ある人がADHDかどうか」は、医師だけが判断できます)。

不注意
  • (a)学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする
    (例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)
  • (b)課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である
    (例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)
  • (c)直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える
    (例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)
  • (d)しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない
    (例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)
  • (e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である
    (例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)
  • (f)精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題、成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う
  • (g)課題や活動に使うようなもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくしてしまう
  • (h)しばしば外的な刺激(成年後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう
  • (i)しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい

上記の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている
症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる
12歳以前から複数の症状が見られる。

多動性および衝動性
  • (a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、またはいすの上でもじもじする
  • (b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる
    (例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)
  • (c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする
    (注:成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)
  • (d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない
  • (e)しばしば”じっとしていない”、またはまるで”エンジンで動かされているように”行動する
    (例:レストランや会議に長時間留まることができないかまたは不快に感じる;他の人には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)
  • (f)しばしばしゃべりすぎる
  • (g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう
    (例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことが困難である)
  • (h)しばしば自分の順番を待つことが困難である
    (例:列に並んでいるとき)
  • (i)しばしば他人を妨害し、邪魔する
    (例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)

上記の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている
症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる
12歳以前から複数の症状が見られる。

④ADHDの「治療」について

ADHDの特性に働きかける薬や対応などの治療は確立されてきています。

その例はコラム「大人のADHDとは?その特徴・特性/診断/対応法/サポート団体などを紹介」の「ADHDの特性への4つの対応方法」の章をご覧ください。

⑤ADHDは、生まれつきのもの

⑤ADHDは、生まれつきのもの

ADHD(発達障害)は、生まれつきのものです。ADHDの特徴は幼少期から見られます。

そのため「成長してからADHDになる(成長につれてADHDになる)」ということはありません。

また、以前は「ADHDは、子ども特有のもの」と考えられていましたが、現在の医学では、「ADHDの症状は、大人になっても継続するもの」であるとされています(ただし、多動・衝動性の特性は、一般的に成長するうちに薄れることも多く見られます)。

このコラムでもご紹介してきたとおり、対策、相談先、特性を緩和する薬などもたくさんあります。苦労や困難が生じることもあるとは思いますが、必要以上に不安に感じる必要はありません。

⑥いわゆる「大人のADHD」とは

近年、「大人のADHD」という言葉が使われるようになってきました。

大人のADHDとは?
  • 幼少期からADHDの特性は持っていたものの、「大人になってからADHDだと気づいた状態」を指す俗語のことです。決して「大人になってからADHDになった」わけではありません。
    就職後に正確な処理・確認作業・管理業務を求められるようになったことで、困難に直面しADHDの特性があることに気付いたという人は少なくありません。

「大人のADHD」について詳しく知りたい人はコラム「大人のADHDとは?その特徴・特性/診断/対応法/サポート団体などを紹介」をご覧ください。

⑦いわゆる「グレーゾーン」とは

⑦いわゆる「グレーゾーン」とは

ADHDの傾向が確認されるものの、確定診断が下りるほどではないほどの状態・人のことを俗に「(ADHDの)グレーゾーン」と言います。

グレーゾーンの場合、確定診断がないことから利用できる公的なサービスが限定されることがあります(例:障害者手帳を取得できないため障害者手帳が必須なサービスを利用できない)。

ただし、グレーゾーンの人でも「発達障害者支援センター」のようなサポート団体への相談は可能です。

確定診断があってもなくても、またADHDに関係してもしなくても「発達障害に関する悩み事」は専門的な知識を持つ人たちに相談した人が対策や解決策を見つけやすくなるでしょう。

⑧ADHD以外の発達障害

発達障害はその特徴によって、いくつかのグループに分けられています。

ADHD以外の主な発達障害には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、SLD(限局性学習障害)などがあります。

ADHD・ASD・SLDの複数が併存する人もいます。気になる人はコラム「【大人の発達障害】発達障害の3つの分類とそのタイプ、対処法、相談先などについてお話します」をご覧ください。

ADHDの人ができる対策はたくさんあります

ADHDの人ができる対策はたくさんあります

ADHDの人が抱えやすい困りごとから、仕事・生活・二次障害への対策を網羅的に紹介してきましたが、あなたが取り入れられそうな対策はありましたか?

繰り返しにはなりますが、ADHDの人は、特性に伴う悩みを一人で抱え込まないように心掛けましょう。

これまで紹介してきたように、医師、家族、同僚、支援機関など、あなたが頼れる相手はたくさんいます。

ぜひ、こうした周囲の人に協力を求めながら、これまで解説してきた対策を実行していっていってください。

このコラムが、少しでもADHD対策に悩む人の助けになれば幸いです。

【最後に改めて…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?

「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。

キズキビジネスカレッジ(KBC)を利用した方は…

初任給
うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
就職までの期間
通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
就職率
通常52%のところ、
KBCでは82%
よくある質問(1)

ADHDの自分が仕事の場で実践できる対策を知りたいです。

一般論として、次のような対策が考えられます。

  1. 医師や支援機関に相談する
  2. 同僚にリマインドをお願いする
  3. 整理整頓だけする時間をつくる
  4. リスト化を徹底する
  5. ゲーム要素を取り入れる
  6. ツールを導入する
  7. 雇用枠や働き方を見直す
  8. 就労移行支援事業所で仕事術や向いている職業を考える

詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

ADHDの自分が生活の中で実践できる対策を知りたいです。

例として、次の5点が挙げられます。

  1. 同居者に確認をお願いする
  2. スケジュールやリストを壁に貼る
  3. 持ち物を一つのバッグにまとめる
  4. 毎日の起床と就寝の時間を定める
  5. リマインダーアプリを利用する

詳細はこちらをご覧ください。

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