ADHDの転職を成功させる5ステップ 向いてる転職先や転職エージェントも紹介 | キズキビジネスカレッジ  

ADHDの転職を成功させる5ステップ 向いてる転職先や転職エージェントも紹介

「転職をしたいが、自分の特性と合う仕事がわからない」「どう転職活動をしていけばいいのかわからない」と悩むADHDのある人は多いと思います。

この記事では、ADHDの人に向けて、転職を成功させる5ステップやADHDの人に向いている仕事、向いていない仕事、おすすめの転職エージェント、転職の体験談などをご紹介します。

ADHDではなくASDのある人(またはADHDと兼ねている人)は、下記コラムもご覧ください。

ADHDの人が転職を成功させるための5ステップ

転職をする際にはしっかりと準備をすることが大切です。希望する職場や適職への転職に向けて、この章では、ADHDの人が転職を成功させるためのステップをご紹介します。

前提として、以下のことが行えるとより転職活動がしやすくなります。可能であれば転職活動中は継続的に行っていけるとよいでしょう。

その上で、以下のステップを参考にしてみてください。

前提①心身の調子を確認する

前提①心身の調子を確認する

転職活動を行う前に、まずは「転職ができる状態か」をよく確認しましょう。

ADHDが原因で、職場や私生活で具体的な「困難」があったりした場合、自分の思う以上に心身が疲れていることがあります。そのようなときは、まずは十分に休養を取った方がいいかもしれません。

必要に応じて、医者・カウンセラーに相談しながら、「今すぐ転職を行ってもいいか」を確認しましょう。うつや心身症などの二次障害がある場合は、治療に専念することが大切です。

前提②発達障害の支援団体に相談する

ADHDの人が転職を考えるときには、発達障害の支援団体に相談することも大切です。

発達障害の支援団体に相談することで、自分の発達障害(ADHD)の特性、向き不向き、活かせる経歴などが具体的・多面的にわかります。これから紹介する各ステップについても、相談することで「実際のあなたがどうするべきか」を決めていくことができます。

発達障害の支援団体には次のようなものがあります。無料で利用できるところもたくさんあります。

詳しくは、下記コラムをご覧ください。

ステップ①自分のADHDの特性を洗い出す

ステップ①自分のADHDの特性を洗い出す

仕事を探す際は、どのような仕事が向いているのか、何が苦手なのかを自分で把握しておくことが大切です。まずは自分のADHDの特性を洗い出してみましょう。

職場や私生活でのこれまでの出来事や困り感を振り返ってノートに書き出したり、家族など身近な人に聞いてみたりすることも有効です。

ステップ②自分の状態に適した「次の一歩」を検討する

心身の状態から、「今すぐの、正規雇用での転職」が難しい場合もあるでしょう。そのようなときは、あせらず、「今の自分に合った次の一歩」を検討しましょう。

「次の一歩」の例
  • 非正規雇用(掛け持ち)で働く(※1)
  • 個人事業主やフリーランスで働く
  • 職業訓練を受ける(資格取得や学び直しも含む※2)
  • 障害者枠での転職を検討する
  • 休職・退職して、休養(治療)する

上記を経てから、いずれ「正規雇用への転職」に至ることは珍しくありません。現在の経済状況・心身の状況・将来設計などにもよりますが、「あせらないこと」が(将来的な)適職への転職につながります。

※1補足

非正規雇用(アルバイト・パートタイム)や通じて、自分の向き不向きが確認できることもあります。

※2補足

ADHDの人は、ビジネスマナー・資格・技術などを先に身に着けてから転職活動を行った方がいい場合もあります。ハローワークが行う「ハロートレーニング」や、後述する就労移行支援事業所などが利用できます。

ステップ③ADHDであることを明かすかどうかを検討する

ステップ③ADHDであることを明かすかどうかを検討する

転職活動時に、転職エージェントや応募先にADHD(発達障害)であることを明かすか・明かさないかを検討しましょう。それぞれのメリット・デメリットをしっかりと把握し、継続しやすい環境を整えることが大切です。

残念ながら、ADHD(発達障害)がある人の採用をためらう職場があるのは事実なようです。一方で、明かしてから採用となった場合は職場に配慮を求めやすいでしょうし、障害者に限定した求人(障害者枠)もあります。

なお、明かすか明かさないかはエントリーごとに決められます。

参考(1)

障害や病気を明らかにして就職することを、「オープン就労」と言います。

障害や病気を明かさずに就職することを、「クローズ就労」と言います。

詳細はそれぞれ下記コラムをご覧ください。

オープン就労とは? メリットやデメリット、条件を人事の視点から徹底解説

クローズ就労とは? メリットやデメリット、就職先の選び方を徹底解説

参考(2)

「障害者枠」で転職するためには、一般的に、「医師の診断書」と「精神障害者福祉手帳」が必要です。特に「精神障害者福祉手帳」は、精神障害があることを証明する手帳ですが、医師の初診日から6か月以上経たないと診断書を発行してもらえないので注意しましょう。

障害者枠の詳細や障害者手帳の詳細はそれぞれ下記コラムをご覧ください。

障害者手帳を取得するメリット5選 体験談や等級別の事例などを解説

障害者雇用の条件とは? 事業主向けに制度の概要やメリット、助成金について徹底解説

ステップ④「一般論」ではなく、「自分に合う転職先・働き方」を探す

ADHDの人は、自分の特性に合った仕事に転職できると、充実して働けます。その点で大切なのは、「自分はADHDだから、○○でないといけない」などと、一般論に当てはめ過ぎないことです。

一例として、「ADHDの特性は会社員に向かないから、フリーランスになる『べき』だ」という意見を見聞きすることがあります。確かに、フリーランスが向いているADHDの人はいます。「組織の中でやっていくことの困難さ」からは解放されます。

しかし、「ADHDの人は、フリーランスになったら絶対にうまくいく」というわけではありません。フリーランスになると、「組織の中での苦手さ」を離れることができても、「フリーランスならではの大変さ」が出てくるからです。

ADHDの人がフリーランスで困りがちなこと
  • 締め切りや時間を自分で管理する必要がある
  • 仕事の段取りを自分で考える必要がある
  • もの忘れを自分で防ぐ必要がある
  • 会社では事務の人がやってくれていた経理などの事務仕事を自分で行う必要がある

大切なのは、自分のADHDの特性を熟知しつつも、ADHDの枠にとらわれない自分に合った仕事や働き方を見つけることです。

逆に言うと、「一般的には向いていないとされる事務職」でも、その職場の配慮、仕事の進め方、マニュアルなどによっては、充実して働ける可能性もあるのです。

先ほどお伝えした「向いている(向いていない)可能性のある仕事」も、参考にしていただいた上で、「実際のあなたの転職先」は、各相談先ともじっくり話しながら検討していきましょう。

ステップ⑤転職エージェントに相談する

ステップ⑤転職エージェントに相談する

具体的な転職先を探す際には、転職エージェントの利用が有効です。詳細は次章でご紹介します。

ADHDに向いている転職先・向いていない転職先

この章では、一般論として、ADHDの人に向いている転職先候補・向いていない転職先候補をご紹介します。

①ADHDの人に向いている転職先

①ADHDの人に向いている転職先

一般的に、ADHDの人に向いている仕事には次のようなものがあります。どの仕事にも、「自分の特性をよい方に活かせる」または「自分の特性が悪い方に働きにくい」という可能性・特徴があります。

不注意型の人に向いている仕事
  • デザイナー
  • アニメーター
  • イラストレーター
多動・衝動型の人に向いている仕事
  • 営業職
  • ジャーナリスト
  • カメラマン
  • 起業家
集中力が高い人に向いている仕事
  • プログラマー(※)
  • エンジニア
  • 研究者
  • 建築士
参考記事

※特にプログラマーについては、下記コラムをご覧ください。

ADHDのある人がプログラマーに向いている理由5選 向いていないケースやおすすめ仕事術などを解説

②ADHDの人に向いていない転職先

一般的に、ADHDの人は、スケジュール管理や緻密な作業が必要な仕事は向いていないと言われます。

ADHDの人に向いていない仕事
  • 秘書
  • 経理
  • 総務

③一般論は参考としつつ、「実際のあなた」「実際の転職先」について検討することが大切

上記の向いている・向いていないは、「一般論」です。ADHDの特性には個人差があります。また、各職場での仕事の進め方や配慮の度合いも異なります。

そして、ADHD以外にもASDやLDが併せてある場合には、ASDの「臨機応変が苦手」、LDの「計算ができない」といった特性も考慮する必要があるかもしれません。

さらに、向き不向きには、発達障害以外の要素(性格、体格、興味・関心など)も関係します。

ご紹介した「向き・不向きの仕事」は、参考や「向いてる仕事はある」という安心材料にしていただきつつ、「実際のあなたに向いている転職先」は、後述する発達障害の相談先や転職エージェントによく相談してみてください(こちらの章で改めて触れていきます)。

ADHDの人が転職するときにオススメの転職エージェント8選

この章では、転職エージェントについてご紹介します。

ADHDかどうかに関わらず、現代の転職では、エージェントの利用はメジャーな方法です。障害のある人専用の転職エージェントもあります。

①転職エージェントとは?

①転職エージェントとは?

転職エージェントは、転職に関連する諸々の手続きを代行したり、求職者にアドバイスを行ったり、必要に応じて応募先との調整を行ったりします。

転職エージェントのサービス内容(利用するメリット)
  • 無料で利用できる
  • キャリアアドバイザー・キャリアカウンセラーが、求職者のキャリアを分析し、向いている転職先を紹介する
  • 「求人サイト」に載っていない、非公開求人の紹介がある
  • 応募書類や面接のアドバイスを行う
  • 面接日程・給料(・必要な配慮)などについて、求人元との交渉を代行する
  • 特に障害者枠にエントリーする場合、「実際には身体障害者のみを募集している求人」などを除外して紹介できる

上記のサービス内容は、特にADHDの人には力強いものでしょう。

転職エージェントごとに紹介できる求人の傾向や詳細なサービス内容は異なります。また、エージェントとの相性もあるでしょう。複数のエージェントに相談することをオススメします。

なお、転職エージェントを利用して自分の向き・不向きなどを確認しつつ、さらに求人サイト(転職サイト)やハローワークなども並行利用して転職先を探したり転職活動を行ったりすることは、全く問題ありません。

②一般の大手転職エージェント5社

続いて、一般の(=障害者に特化していない)大手転職エージェントをご紹介します。気になるところがあれば一度話をしてみましょう。(※それぞれ類似の指標で「No.1」となっていますが、調査機関や対象が異なることをご了解ください)

また、これは一例です。ご紹介するもの以外も含めて、前章で紹介した「相談先」などと話すことで、「よりあなたに向いた転職エージェント」が見つかると思います。

なお、取り扱う職種・職場やエージェントとの相性は、人それぞれで異なりますので、「紹介する順番にオススメ」というものではありません。

(1)リクルートエージェント

国内最大の求人数と登録者数を持つエージェントです。求人数も多く、サポートも丁寧です。「転職支援実績No.1」(厚生労働省「人材サービス総合サイト」における無期雇用および4ヵ月以上の有期雇用の合計人数)。

(2)doda

障害者枠のエントリーも可能。他にも地方の求人など、様々な角度からの求人を揃えています。「転職者満足度」No.1(電通バズリサーチ調べ。インターネット上での人材紹介会社に関するポジティブな口コミ数)。

(3)マイナビエージェント

20代や新卒に強いエージェントです。就職後にも手厚いサポートがあります。

(4)パソナキャリア

「年収アップしたい人」や「女性のキャリア」に適したエージェントです。「お客様満足度」No1(オリコン満足度調査)。

(5)JAC Recruitment

30代以上のハイクラスの転職(管理職・技術職/専門職の転職)に向けたエージェントです。

③障害のある人に特化した転職エージェント3社

③障害のある人に特化した転職エージェント3社

障害のある人に特化した転職エージェントもあります。

(1)at GP

障害者専門の老舗転職エージェントです。管理部門の転職に強い「atGPハイクラス」、障害やアスリート専門の「atGPアスリート」もあります。「障害者転職サポート実績」No.1(株式会社メンバーズポップインサイトカンパニー調査)。

(2)ランスタッドチャレンジド

専任コンサルタントが面談から定着フォローまで一貫して行います。

(3)dodaチャレンジ

「障害者の転職支援実績」No.1(厚生労働省「人材サービス総合サイト」における無期雇用および4ヶ月以上の有期雇用総計人数)

補足

エージェント(担当サポーター)のつかない「転職サイト(求人サイト)」の利用も、もちろん可能です。ただし一般論としては、発達障害のある人は、自分の特性をエージェントとしっかり話した方が、「自分に合う仕事」が見つかりやすくなります。

④無期雇用派遣を取り扱う人材派遣会社

最近では、「無期雇用派遣」という働き方の求人を取り扱う人材派遣会社も増えてきました。無期雇用派遣には、大きく次の二つの特徴があります。

  • 派遣元の会社と、期間を定めずに雇用契約を結ぶ(派遣先での業務が終わっても、派遣元との雇用契約は続く)
  • 派遣先がない時期にも、派遣元の会社から給与や休業手当を受け取ることができる

転職エージェントとは異なり、またADHDの人に特化しているわけではありませんが、ご興味があれば、下記のような人材会社と話してみることをオススメします。

無期雇用派遣を取り扱う人材会社の例
  1. ミラエール
  2. キャリアシード
  3. リクルートスタッフィング
  4. A-JOB
  5. WDB

ADHDの人の転職には就労移行支援事業所もオススメ

ADHDの人の転職には就労移行支援事業所もオススメ

転職エージェントの他に、スキルやマナーを身につけることができる「就労移行支援」というサービスもあります。就労移行支援事業所とは、「病気や障害のある人の(再)就職・転職を援助する福祉サービス」のことです。

各事業所は、公的な認可を得た民間事業者が運営しています。そのサービス内容は、次のように多岐にわたります(一例であり、事業所ごとに様々なサービスを行っています)。

就労移行支援事業所のサービス
  • 転職のための知識・技能の習得
  • 履歴書・経歴書・エントリーシートの作成支援
  • メンタル面のサポート
  • 再就職・転職先候補や、職場体験実習(インターン)の紹介
  • 転職後の職場定着支援

利用の可否は、お住まいの自治体が、下記などに基づいて判断します。

  1. 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがある
  2. 18歳以上で満65歳未満である
  3. 離職中である(例外あり)

※上記を満たすなら、障害者手帳を所持していなくても利用可能です。

ご自身が利用できるかどうかは、自治体や、各就労移行支援事業所に相談してみましょう。

就労移行支援についてさらに詳しく知りたい人は、下記コラムをご覧ください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつ病や発達障害などの人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、通える範囲にお住まいであれば、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

適職探しにおける、ADHDの特性の長所と短所

ADHDの特性には、「転職を成功させるために考えるべき長所と短所」があります。

自分に向いた仕事を探す際には、ADHDを単なる「障害」ととらえるのではなく、「特性」として受けとめることが大切です。

その上で、「自分はADHDの特性の中がどのように現れているのか(現れやすいのか)」を見極める必要があります。

そうした見極めや就職活動全体については、上記の就労移行支援事業所など、ADHDに理解のある就労支援機関を積極的に利用することをオススメします。

特徴をそれぞれ長所と短所にわけて理解することができれば、あなたに合った転職先・仕事・働き方などを探すポイントは見えてきます。

転職・就活・適職探しなどにおける「ADHDの特性の長所と短所」の詳細は、下記コラムをご覧ください。

転職を成功させたADHDのある人の体験談

KBCで転職を成功させた、ADHDのFさんの体験談

ADHDのFさんは、現在、中小IT企業のシステムエンジニア(SE)として、一般枠の正社員で週に5日(2日出社、3日在宅)、フルタイムで働いています。働きはじめて半年が過ぎ、自信もついてきました。

そんなFさんは、学生時代から発達障害(ADHD)の特性に悩み続け、新卒で入社した会社では環境が合わずに適応障害にもなりました。

発達障害を理由に自分に自信がなかったFさんは、キズキビジネスカレッジ(KBC)のサポートと現在の仕事を通じて徐々に自信を取り戻していきました。

詳細は、下記のFさんの体験談をご覧ください。

改めて、ADHDとは?

改めて、ADHDとは?

改めて、ADHDの概要を紹介します。既にご存知かもしれませんし、これまでに紹介した内容と重複する部分もありますが、全体的な理解が深まると思いますので、よければご覧ください。
(参考:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、田中康雄『大人のAD/HD』、岩波明『大人のADHD:もっとも身近な発達障害』)

①ADHDの概要

①ADHDの概要

ADHDとは、「注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)」を意味する発達障害の一種です。

ADHDには多くの特性がありますが、その中でも下記の2点がよく見られるものとして挙げられます。

  • 不注意…忘れ物やケアレスミスが多く、確認作業を苦手とする
  • 多動・衝動性…気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない

その他にもよく挙がる特性の現れ方として、「マルチタスクやスケジュール管理が苦手」といったものがあります。

②ADHDの診断は医師だけが可能

②ADHDの診断は医師だけが可能

「自分が(ある人が)発達障害(ADHD)かどうか」の診断は医師による問診や心理士が実施する心理検査を中心に行われます。逆に言うと、医師以外には「発達障害かどうか」の診断・判断はできません。

あなたが(ある人が)「発達障害かどうか」をハッキリさせたいのであれば病院を受診してみることをオススメします。

「診断を受けるのが不安」と思う人は、発達障害者のサポートを行う団体(各都道府県にある発達障害者支援センターなど)に「病院に行くべきかどうか」「診断をつけるメリットやデメリット」などを相談することができます。

③ADHDの医学的な診断基準

下記は、2013年にアメリカ精神医学会がまとめた『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』に挙げられているADHDの診断基準です。

次のような診断基準に当てはまればADHDの可能性があります(あくまで可能性です。「どの程度なら『当てはまる』と言えるか、他の病気や障害の可能性はないかなども含めて、「ある人がADHDかどうか」は、医師だけが判断できます)。

不注意
  • (a)学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする
    (例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)
  • (b)課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である
    (例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)
  • (c)直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える
    (例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)
  • (d)しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない
    (例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)
  • (e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である
    (例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)
  • (f)精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題、成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う
  • (g)課題や活動に使うようなもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくしてしまう
  • (h)しばしば外的な刺激(成年後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう
  • (i)しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい

上記の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる12歳以前から複数の症状が見られる。

多動性および衝動性
  • (a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、またはいすの上でもじもじする
  • (b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる
    (例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)
  • (c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする
    (注:成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)
  • (d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない
  • (e)しばしば”じっとしていない”、またはまるで”エンジンで動かされているように”行動する
    (例:レストランや会議に長時間留まることができないかまたは不快に感じる;他の人には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)
  • (f)しばしばしゃべりすぎる
  • (g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう
    (例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことが困難である)
  • (h)しばしば自分の順番を待つことが困難である
    (例:列に並んでいるとき)
  • (i)しばしば他人を妨害し、邪魔する
    (例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)

上記の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる12歳以前から複数の症状が見られる。

④ADHDの「治療」について

ADHDの特性に働きかける薬や対応などの治療は確立されてきています。

その例は下記コラムをご覧ください。

⑤ADHDは、生まれつきのもの

⑤ADHDは、生まれつきのもの

ADHD(発達障害)は、生まれつきのものです。ADHDの特徴は幼少期から見られます。

そのため「成長してからADHDになる(成長につれてADHDになる)」ということはありません。

また、以前は「ADHDは、子ども特有のもの」と考えられていましたが、現在の医学では、「ADHDの症状は、大人になっても継続するもの」であるとされています(ただし、多動・衝動性の特性は、一般的に成長するうちに薄れることも多く見られます)。

このコラムでもご紹介してきたとおり、対策、相談先、特性を緩和する薬などもたくさんあります。苦労や困難が生じることもあるとは思いますが、必要以上に不安に感じる必要はありません。

⑥いわゆる「大人のADHD」とは

近年、「大人のADHD」という言葉が使われるようになってきました。

大人のADHDとは?
  • 幼少期からADHDの特性はあったものの、「大人になってからADHDだと気づいた状態」を指す俗語のことです。決して「大人になってからADHDになった」わけではありません。
    就職後に正確な処理・確認作業・管理業務を求められるようになったことで、困難に直面しADHDの特性があることに気付いたという人は少なくありません。

「大人のADHD」について詳しく知りたい人は下記コラムをご覧ください。

⑦いわゆる「グレーゾーン」とは

⑦いわゆる「グレーゾーン」とは

ADHDの傾向が確認されるものの、確定診断が下りるほどではないほどの状態・人のことを俗に「(ADHDの)グレーゾーン」と言います。

グレーゾーンの場合、確定診断がないことから利用できる公的なサービスが限定されることがあります(例:障害者手帳を取得できないため障害者手帳が必須なサービスを利用できない)。

ただし、グレーゾーンの人でも「発達障害者支援センター」のようなサポート団体への相談は可能です。

確定診断があってもなくても、またADHDに関係してもしなくても「発達障害に関する悩み事」は専門的な知識を持つ人たちに相談した人が対策や解決策を見つけやすくなるでしょう。

⑧ADHD以外の発達障害

発達障害はその特徴によって、いくつかのグループに分けられています。

ADHD以外の主な発達障害には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、SLD(限局性学習障害)などがあります。

ADHD・ASD・SLDの複数が併存する人もいます。気になる人は下記コラムをご覧ください。

まとめ:人に相談することで転職の成功は近づいてくるはず

まとめ

ADHDの人も適した仕事に転職することはもちろん可能です。そして、一人で悩まず、医師・支援機関・転職エージェント・就労移行支援事業所などに相談することで、転職の成功は近づいてくるはずです。

この記事が、お役に立ったなら幸いです。

よくある質問(1)

ADHDの自分が転職を成功させるためのステップを知りたいです。

一般論として、次の4点が考えられます。(1)自分のADHDの特性を洗い出す、(2)自分の状態に適した「次の一歩」を検討する、(3)ADHDを明かすかどうかを検討する、(4)「自分に合う転職先・働き方」を探す。前提や詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

ADHDの自分に向いている転職先を知りたいです。

一般論として、次のような候補があります。デザイナー、アニメーター、イラストレーター、営業職、ジャーナリスト、カメラマン、起業家、プログラマー、エンジニア、研究者、建築士。支援団体などに話すことで、「実際のあなた」に向いた転職先は他にも見つかるはずです。詳細はこちらをご覧ください。

監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。 臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。

【著書など(一部)】
子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数

日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

Amazon
翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

監修角南百合子

すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい

執筆内田青子

うちだ・あおこ。1982年生まれ。上智大学文学部卒。
大学卒業後、百貨店勤務などいくつかの仕事を経た後、2018年から発達障害・不登校・中退経験者などのための個別指導塾・キズキ共育塾で講師として国語(現代文・古文・漢文)と小論文を指導し、主任講師となる。
並行して、聖徳大学通信教育部心理学科を卒業。現在、公認心理師の資格取得を目指して、発達障害や不登校支援についてさらに勉強中。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

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