適応障害で休職する際に知っておくべきこと 適応障害で休職したときの過ごし方を解説 | キズキビジネスカレッジ  

適応障害で休職する際に知っておくべきこと 適応障害で休職したときの過ごし方を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。

適応障害になったことで、休職を考えている方もいるかと思います。

ただ、休職をするにしてもどのような手続きが必要で、休職期間中はどのように過ごせばよいかの不安な方もいるかと思います。

このコラムでは、適応障害で休職する際に知っておくべきことや休職中に適応障害を治療する際に意識すべきポイント、適応障害で休職したときの過ごし方、復職する際に知っておくべきこと、復職後の再発防止策について解説します。

適応障害で休職する際に知っておくべきこと

適応障害で休職を考える場合、休職についての知識が必要です。

この章では、適応障害で休職する際に知っておくべきことについて解説します。(参考:松﨑博光『新版 マジメすぎて、苦しい人たち:私も、適応障害かもしれない…』

休職とは?

休職とは、雇用契約を維持したまま労働を免除、または停止させる措置のことです。(参考:大阪府「34 休職と休業」

休職する際は、業務を行えない相当な事由が必要で、原則的には医師からの診断書などの提出が必要です。

職場によっては休職をすることで、人事考課に多少の影響が生じる可能性があります。しかし、休職しない方が、「適応障害などの病気を悪化させて心身を壊す」といった、デメリットの方が大きいと考えられます。

かかりつけの医師や専門家、支援機関と相談の上、総合的に休職を検討することが大切です。

休職の必要性と判断基準

休職の必要性を判断するためには、以下のポイントを考慮することが重要です。

まず、症状の程度を評価することです。以下のような症状が現れる場合は、適応障害の兆候が出ています

  • 遅刻、早退、欠勤の頻度が増えた
  • 作業効率が落ちて、ミスや小さなケガが増えた
  • 身だしなみを整えないで職場に出てくるようになった
  • 会議の場などで些細なことイライラするようになった
  • 同僚とのコミュニケーションを避けてひとりでいることが増えた
  • 「同僚が陰口を言っている」と思い込むようになった

次に、症状の継続期間を考慮することも重要です。

症状が一時的なものであれば、休暇や短期休業で対応することもできますが、長期間にわたって続く場合は、休職を検討する必要があります

ただし、紹介した兆候はあくまで目安です。適応障害での休職を考える際には、自身の状態を正しく評価し、医師や専門家、支援機関の意見を参考にすることが重要です。

休職制度の種類と手続き

休職は、以下の種類に分けられます。

  • 私傷病休職:業務外の病気やケガを理由とする休職
  • 事故欠勤休職:傷病以外の私的な事故を理由とする自己都合による休職
  • 起訴休職:刑事事件などに起訴された労働者に対して行われる休職
  • 出向休職:他社への出向期間中の労働者に対して行われる休職
  • 組合専従休職:労働組合の役員に専従する場合の休職
  • 自己都合休職:公職就任や海外留学など従業員本人の希望による休職

適応障害で休職する場合は、「私傷病休職」が該当します

職場の就業規則によって異なりますが、ここでは一般的な流れをお話しします。

まずは心療内科やメンタルクリニックなどの診断を受けましょう。

休職をするには、原則として医師からの診断書が必要になります。

診断書が下りたら、メールでも構いませんので、所属長に面談のアポイントメントを取りましょう。

診断書には相応の効力があります。基本的には休職が認められるはずです。場合によっては、人事担当者との間で、異動などの打診を含む面談が行われる可能性があります。

しかし、原則的には社内の書式に則って申請書を提出し、休職の手続きが完了する流れになります。

休職中の給与・手当

休職をする際に、まずは確認するべきことがあります。

それは給与支給の有無です。

休職中の給与についてですが、休職は、職場が定める就業規則に従って適用する制度であるため、その詳細は職場によって異なります

一部の職場では、休職中も一定の給与を支給してくれる場合もありますが、一般的には給与が減少するか、一時停止されることが多いです。

また手当についても同様のケースが多いです。休職中は通常の業務を行わないため、業務手当や交通費手当などの支給が停止されることがあります。

休職可能な期間も同様に、職場によって異なります

休職中の給与や手当、期間などの具体的な内容は、職場の就業規則や労働契約書に基づいて決まります。休職を検討している人は、経済面も考慮にいれて、詳細な情報を職場の人事部や労働組合に確認するとよいでしょう。

休職期間の目安

適応障害による休職期間は、個人の状態や症状の重さによって異なります。

一般的には、数週間から長い場合は6か月の休職が必要とされることが多いです。しかし、具体的な期間は病状の進行や治療の効果によって変動するため、一概には言えません。

具体的な休職期間を決める際には、専門の医師や心理カウンセラーなどの専門家、支援機関の意見を参考にすることが重要です。彼らは、患者の状態や治療の進行状況を考慮し、最適な休職期間を提案してくれます。

適応障害で休職した人の事例

適応障害で休職に至る事例として多いのは、異動による職場不適応や過労、上司とのトラブルです。

例えば、営業職のAさんは、社内の定期異動で上司が替わってから、体調に変化が現れました。

新しい上司はそれまでの上司とは違って、とても管理が厳しく、高圧的で、業務成績が悪いと同僚の前でもお構いなしに叱り飛ばす人です。

Aさんは、ノルマ達成のために遅くまで外回りをしていましたが成績は上がらず、叱責されることが増えました。

そのため、朝からめまいがしたり、通勤電車の中で吐き気や息苦しさを感じるようになったのです。

内科にその旨を訴えても、原因がわからない「不定愁訴」ということで、経過観察を言い渡されました。

そのうち無気力な状態になることが増えて、遅刻や無断欠勤をするようになり、休養を打診されました。

そして、内科ではなくストレスクリニックを受診したところ、適応障害と診断されて休職に至ったのです。

以上のような対人トラブルによる適応障害の事例は、少なくありません。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、適応障害のある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、通える範囲にお住まいであれば、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

休職中に適応障害を治療する際に意識すべき2つのポイント

この章では、休職中に適応障害を治療する際に意識すべきポイントについて解説します。(参考:乃樹愛・著、鈴木由香・解説『なんで私が適応障害!? 暗闇の中で光を見つけた私。』

ただし、「実際のあなた」に必要な具体的な治療法は、医師が個別に判断します。医療機関とのつながりを保つようにしましょう。

ポイント①ストレスの原因である環境を調整する

適応障害は、その当事者が身を置いている環境に不適応を起こしていることで生じます

そのため、不適応の原因であるストレス環境を変えることが治療の第一歩です。環境の変化や負担が大きい場合は、少し休息を取ることも必要です。

例えば、職場での人間関係が原因でストレスを感じていた場合、コミュニケーションの改善やカウンセリングを受けることで問題を解決することができたかもしれません。

また、仕事の負荷が大きかった場合は、異動申請や業務量の調整申請を検討してもよかったでしょう。

環境の調整には、自分自身の意識や行動を変えることも含まれます。

日常生活でのストレスを軽減するために、十分な睡眠や食事、適度な運動を心がけることも大切です。ストレスを感じたら、自分自身に対して優しく接し、リラックスする時間を作ることも意識しましょう。

適応障害になる前に、環境の調整や自己ケアを行うことで、ストレスを軽減し、心身の健康を保つことができます。

もし、これらの対策が効果がない場合や症状が悪化している場合は、早めに専門の医師やカウンセラーに相談することも大切です。

ポイント②ストレスの原因を把握して、ストレスへの対処法を身に着ける

適応障害では、自分自身でストレスの原因に対応できるようになることも大切です。

まず、自分のストレスの原因を把握することが重要です。自分がどのような状況でストレスを感じるのかを理解することで、原因への対処法を考えることができます

ただし、ストレスの原因を把握して、対処法を検討する際には、就労していたときの振り返りをする必要があるため、人によっては精神的に大きな負担がかかるでしょう。まずはしっかり休養を取ることが大切です。

例えば、仕事のストレスが原因であれば、仕事の負担を軽減するために効率的な時間管理や適切な休息を取ることが重要です。

また、人間関係のストレスが原因であれば、コミュニケーションの改善やストレス発散の方法を見つけることが必要です。

日常生活でのリラックス法も有効です。例えば、深呼吸やヨガ、瞑想などは、心と体のリラックスに役立ちます。さらに、適度な運動や十分な睡眠もストレスを軽減する効果があります。

最後に、人とのコミュニケーションを大切にすることもストレス対処法の一つです。家族や友人との時間を大切にし、話を聞いたり相談したりすることで、ストレスを解消することができます。

適応障害は治療が必要な病気ですが、ストレス対処法を実践することで、日常生活でのストレスを軽減することができます

適応障害の治療のために、薬物療法を補助的に行うこともあります。医師の指導のもと、治療とストレス対処法を組み合わせることで、より良い結果が期待できます。

適応障害で休職したときの過ごし方6選

この章では、適応障害を治療するために有効な休職中の過ごし方を紹介します。

過ごし方①医師やカウンセラーと定期面談する

休職中は「医師やカウンセラーとの定期面談」を欠かさないようにしましょう。

あなたの心の状態について、専門的な見地からアドバイスをくれる医師やカウンセラーを持つことで、休職を漫然と過ごすことなく、経過を観察しながら回復に努めることができます

ご自身では回復傾向にあると思っていても、状況次第では追加での治療が必要であったり、安静にした方がよいという場合があります。

もし、診断やカウンセリングに納得できなかったり、薬物療法に抵抗があったりという場合は、セカンドオピニオンを求めて別の病院へ行くのも一つの手段です。

また、代替医療や民間療法ではなく、「病院」で診察を受けるという点も重要です。

きちんとした専門機関で、診察や定期面談を受けてください。

過ごし方②休養を優先する

2つ目に大切なのが、「休養を優先する」という姿勢です。

人によっては、休職中に新しいことに着手したり、旅行へ出たりするかと思います。

もちろん、意欲が湧くのはよいことですが、先述したように過労などで体力が戻っていない場合など、専門医の目から見れば加療が必要なケースがあります

そのため、まずは休養を優先するという姿勢を忘れずにいてください。

過ごし方③就労支援機関を利用する

ある一定の休養期間が過ぎたら、「就労支援機関を利用する」ことをオススメします。

就労支援機関では、適応障害などの病気や障害によって就労が難しい人に向けた、福祉サービスを実施しています

一例をあげると、障害者総合支援法に基づいて設置されている就労移行支援事業所などは、診断書があれば最低0円からサービスを受けることが可能です。

障害に理解のある支援員が、体調管理やメンタル面の相談、復職に向けた具体的なアドバイスなどを行っていますので、まずは無料相談をしてみるとよいでしょう。

就労支援機関に通うことで、生活リズムを定着させるとともに、復職したときのイメージが掴みやすくなるというメリットもあります。

過ごし方④規則正しい生活を送る

4つ目は、「規則正しい生活を送る」という点です。

適応障害では、生活習慣の改善をすることが大切です。生活習慣とは、食事や睡眠、運動などの日常の習慣のことです。生活習慣を改善することで、体の状態を整えることができます

初期の休養期間は、睡眠の時間が多くなるため、生活が不規則になりがちです。

そのため、この期間を過ぎたら、朝きちんと目を覚まして、三食バランスよく食事を取ることを心がけましょう。

バランスの取れた食事を心がけたり、十分な睡眠をとったりすることで、体の免疫力が高まります。また、適度な運動をすることで、ストレスを解消することができます。

特に、朝陽を浴びることで、血管や内臓の働きをコントロールする自律神経が整ってきて、心身が落ちつくようになります。(参考:原田賢『忙しいビジネスパーソンのための自律神経整え方BOOK』

適応障害は誰にでも起こりうるものです。自分の体や心の状態に気を付け、適切なケアをすることが大切です。

健康で充実した毎日を送るために、生活習慣の改善や心のケアを意識してみましょう。

過ごし方⑤セルフケアの方法を学ぶ

適応障害では、治療だけでなく、セルフケアの方法を学ぶことも同じくらい重要です。

セルフケアとは、自分自身で行う心のケアのことです。適応障害のセルフケアの方法は、人によって異なる場合がありますが、以下の方法が一般的に効果的です。

まず、十分な睡眠をとることが重要です。睡眠不足はストレスを増大させる要因となります。

また、適度な運動を行うことも効果的です。運動はストレスを解消し、気分をリフレッシュさせる効果があります。

さらに、食事にも気を配ることが大切です。バランスの取れた食事を摂ることで、体調を整えることができます。

そして、ストレスを発散する方法を見つけることも重要です。趣味や興味のあることに時間を使ったり、リラックスする時間を作ったりすることで、ストレスを軽減することができます

適応障害の治療は専門家のサポートが必要ですが、セルフケアの方法を学ぶことで、自分自身でも心の健康を守ることができるでしょう。

過ごし方⑥副交感神経を意識して行動する

次にオススメしたい過ごし方は、「副交感神経を意識して行動する」です。

血管や内臓の働きをコントロールする自律神経の一種である副交感神経は、心身をリラックスさせる役割を担っています(参考:乃樹愛・著、鈴木由香・解説『なんで私が適応障害!? 暗闇の中で光を見つけた私。』

副交感神経への意識を高めるには、あなたがリラックスできる環境や行動を知った上で、それを習慣づけることが大切です。

特に、以下のような行動がオススメです。

  • 深呼吸
  • 長時間の入浴
  • 瞑想
  • アロマテラピー
  • ヨガ

休職期間中にリラックス法を見つけることは、適応障害が回復した後の再発防止にも役立ちます。この機会にぜひ副交感神経を意識する習慣をつけてください。

ただし、いくら気持ちが安らぐとはいえ、お酒やタバコなどの嗜好品は依存性があるため、避けた方がよいでしょう。

過ごし方⑦転職や異動について検討してみる

休職中に「転職や異動について検討してみる」のもよいでしょう。

ただし、あくまでも「心身に余裕が出てきた」「転職や異動のことを考えると気持ちが前向きになる」という段階に達してから検討するようにしてください。

具体的な転職活動などに移る際には、必ずかかりつけの医師や専門家、支援機関への相談も忘れないようにしましょう。

適応障害による転職については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

適応障害から復職する際に知っておくべきこと

休職が終わったら、復職するのも選択肢のひとつになります。

では復職する場合は、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。

この章では、適応障害から復職する際に知っておくべきことを解説します。

復職の準備

復職するためには生活リズムを整えて、仕事に耐えうる体作りをしなければなりません。

生活リズムが整っていなかったり、体力が戻っていなかったりする状態で復職すると、仕事が継続できない可能性が高いです。

そのため、生活リズムを出社していた時と同じ状態にして、運動をするなど体力を整えておきましょう

また、急にフルタイムでの復職をするのではなく、週数日の短時間勤務から始められるように職場と相談することも必要でしょう。

復職後の注意点

適応障害による休職から復職する際には、こちらで解説したとおり、ストレスの原因を分析し、それを軽減する対策を考えることが重要です。

具体的な対策としては、まず、職場の環境を見直すことが挙げられます。

適応障害の原因となったストレスの要素を排除したり、改善したりすることで、復職後も再発を防ぐことができます

また、職場の上司や同僚とのコミュニケーションを円滑にすることも大切です。適応障害は、人間関係のトラブルが原因で発症することが多いため、コミュニケーションの改善は、復職後のストレス軽減につながります。

さらに、復職する際には、自分自身の体調管理にも気を配る必要があります。

十分な睡眠や食事、適度な運動を心がけることが重要です。また、適応障害の症状が再発しないように、定期的なカウンセリングや心理療法を受けることもおすすめです。

適応障害からの復職は、時間がかかる場合もあります。焦らずに自分のペースで取り組むことが大切です。また、周囲の理解やサポートも必要です。可能な範囲で上司や同僚に適応障害の状況を伝え、協力をお願いすることもオススメです。

適応障害からの復職は、一人で抱え込まずに、専門家や周囲の支えを受けながら取り組むことが成功の鍵です。焦らずに、着実に回復を目指しましょう。

適応障害で休職した人の復職後の再発防止策4選

この章では、適応障害で休職した人の復職後の再発防止策を解説します。

自力でできる再発防止策を中心に解説しますが、何よりも大切なのは「一人で抱え込まない」ということです。

本格的に調子が崩れる前に、少しでも「再発しそうかも」と思ったときには、周囲の人やかかりつけの医師、専門家、支援機関に相談しましょう。

防止策①仕事を早めに切りあげる

復職間もない頃に、特に有効な防止策が、「早めに仕事を切りあげる」ことです。

適応障害を発症する人の中には、がんばり屋で我慢強い人が少なくありません(参考:松﨑博光『新版 マジメすぎて、苦しい人たち:私も、適応障害かもしれない…』

そのため復職してすぐに、「休職前と同じペースで働こう」「一気に挽回しよう」と前のめりになる場合があります。

しかし、休職中にどれだけ規則正しい生活を送っていても、いきなりギアをあげて仕事にとりかかることは難しいです。

適応障害を再発させないためにも、仕事を早めに切りあげるという姿勢を保ちましょう

適応障害のある人に向いてる仕事や働き方については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

防止策②相談相手を持つ

防止策の2点目は、「相談相手を持つ」です。

ストレスクリニックの院長である松﨑博光氏は、適応障害になりやすい人の特徴の一つに、相談相手がいないことを挙げています(参考:松﨑博光『新版 マジメすぎて、苦しい人たち:私も、適応障害かもしれない…』

適応障害になった場合、家族や周囲の人々に理解とサポートを得ることが重要です。

特に自分に自信が持てない人ほど、他人とうまく交流できずに問題を抱え込みがちです。

そうした状況を避けるためにも、復職をしたら相談相手を持つようにしましょう。

家族や友人は、私たちが抱える問題や苦しみを理解し、共感してくれる存在です。一人で抱え込まず、彼らに自分の状況を説明し、理解してもらうことで、心の負担が軽減されることがあります。

また、休職中に信頼関係を築いた専門医のもとへ、カウンセリングを受けにいくというのも、「相談相手を持つ」ことに含まれます。

復職後に不安のある人は、相談相手としてカウンセラーとの関係を継続しましょう。

防止策③レジリエンスを鍛える

防止策の3点目は「レジリエンスを鍛える」です。

レジリエンスとは、「ストレスから立ち直るための精神的回復力」を意味する精神医学の用語のことです。(参考:内田和俊『レジリエンス入門 折れない心のつくり方』

近年、「落ち込まない強さ」よりも、落ち込んでも「すぐに回復できるしなやかさ」を身につけることが、ストレス耐性の観点で重要視されています。

仮に芯が弱くても、柳のように衝撃を受けとめて戻ることができれば、心が折れることはありません。

レジリエンスを鍛えるためには、普段からミスや問題を引きずらずに、「気分を切り替える」ことを意識する必要があります

具体的には、以下のような「切り替えスイッチ」を見つけることが大切です。

  • 落ち込んだときに運動をする
  • 行きつけのレストランへ行く
  • 趣味に打ち込む

適応障害に悩んでいる人は、自分なりの切り替えスイッチを見つけて、レジリエンスを鍛えることに努めましょう。

防止策④時には情報を遮断する

最後は、「時には情報を遮断する」という防止策です。

適応障害を克服した人が再発するタイミングとして、異動などで環境や担当が変わった場合が挙げられます。

新しい環境に移ると、対人関係や業務に慣れるまでに時間がかかるため、疲労が蓄積して容量オーバーを起こしがちです。

疲労を感じたときは、目を閉じて神経を休める、映像や音楽などの情報を遮断するだけでも違います

時には情報を遮断することも大切だということを忘れずにいてください。

適応障害とは?

適応障害とはそもそもどのようなものなのでしょうか。

この章では、適応障害の概要や症状、原因、うつ病との違いについて解説します。

(参考:アメリカ精神医学会『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、松﨑博光『新版 マジメすぎて、苦しい人たち:私も、適応障害かもしれない…』、新橋スリープ・メンタルクリニック「ストレス性障害(適応障害)」、大阪メンタルクリニック「適応障害」、こころ診療所「適応障害の治し方6つ」

適応障害の概要

適応障害とは、仕事や職場の人間関係などから生じる特定可能な明確な心理的・社会的ストレスを原因に、心身がうまく対応できず、情緒面の症状や行動面の症状、身体的症状が現れることで、社会生活が著しく困難になっている状態のことです。

適応障害の症状

適応障害の症状は、情緒面の症状、行動面の症状、身体的症状の3つに分かれます。

ストレスから逃れることで、安定することもあるため、休日は元気で遊んでいるなど、理解されない部分もあります。

そのため職場で理解されずに、本人の立場が悪くなり、さらに症状が悪化することもあります。

具体的な適応障害の症状は以下のとおりです。

情緒面の症状
  • 憂鬱な気分(抑うつ気分)
  • 不安感が高まる
  • 無気力
  • 注意力・集中力・記憶力の低下
  • わけもなく悲しくなる
  • イライラする
  • 細かいことがいつまでも気になる
行動面の症状
  • 衝動的な言動の増加
  • たばこや飲酒の量の増加
  • 喧嘩や自傷行為
  • 強い貧乏ゆすりなどの落ち着かない動作の増加
身体的症状
  • 動悸
  • 頭痛
  • めまい
  • 冷や汗
  • 息苦しさ
  • 過呼吸
  • 手先や唇の震え
  • 倦怠感
  • 吐き気、膨満感
  • 耳詰まり
  • 耳鳴り

ただし、身体面の症状は、内臓疾患や他の病気に由来する要因も考えられます

内科の医療機関を受診を検討しましょう。

それでも原因が特定できない場合には、心療内科・精神科やメンタルクリニックを訪ねるとよいでしょう。

適応障害になった場合、特に仕事の現場では、以下のような状態になることがあります。

  • 欠勤、遅刻、早退が多くなる
  • 出勤するだけで動悸や息苦しさを感じる
  • 書類の記入ミスやデータの入力間違いが増える
  • 同僚や取引先とのコミュニケーションで口論になる
  • 話し合いを嫌がり、人付き合いを避けるようになる
  • 業務中にイライラしたり泣きたくなったり情緒不安定になる

適応障害の原因

適応障害は、特定可能な明確なストレスを原因に発症します。

仕事や学校、人間関係など、日常生活での様々なプレッシャーや負担が積み重なることで、心のバランスが崩れるのです。

また、環境の変化やライフイベント(結婚、出産、引っ越しなど)も適応障害の引き金となることがあります。

特に仕事に関連して適応障害になったときは、次のような原因が考えられます。

仕事・職場のストレスの例
  • 職場環境
  • 人間関係
  • ハラスメント
  • 担当業務
  • ノルマやプレッシャー
  • 働き方・勤務形態
  • 通勤手段

適応障害は、「ストレスの原因がなくなった場合、症状はそれから6か月以上は続かない」と定義されています(参考:アメリカ精神医学会『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』

そのため、治療のためには、原因であるストレス源から離れることが効果的です。ストレス源が仕事と関係する場合、休職・退職・転職をするだけで回復することは珍しくありません。

適応障害の診断基準

アメリカ精神医学会が定めた精神障害の診察基準『DSM-5』によると、適応障害の診断基準は、以下のとおりです。(参考:アメリカ精神医学会『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』

  • 明確なストレス源があり、そのストレス源にさらされて3か月以内に情緒面や行動面の症状、または身体的症状が出現した
  • 「ストレス源に対する反応としては不釣り合いなほど著しい心身の苦痛」「日常生活や社会生活への重大な障害」のいずれか、または両方がある
  • ほかの精神疾患では説明できない
  • 正常な死別反応では説明できない
  • ストレス源がなくなると症状が回復し、6か月以内になくなる

ただし、適応障害の診断は医師だけが可能です。

以上の症状があると自分で思っている場合でも、「必ず適応障害である」とは限りません。

そのため、一般の人が自己診断をすることは避けるべきです。

適応障害の場合、早期発見・早期治療と、しっかり病院に通うことが大切です。心身の状況に不安があるときは、早めに適切な治療を受けるために、医師や専門家に相談してください。

適応障害の治療方法①環境療法

環境療法とは、患者の生活環境を改善することを重視する療法のことです。

具体的には、ストレスの原因となっている要素を取り除いたり、心地よい環境を整えたりします。例えば、職場の環境を改善することで、ストレスの軽減や心の安定を図ることができます。

上司と話し合って、仕事のやり方を変えるのもひとつの方法です。また、転職するのも環境療法となるでしょう。特定のストレスが大きく、適応障害を繰り返していない人には有効です。

適応障害の治療方法②薬物療法

薬物療法とは、薬を使って症状を和らげる治療法のことです。

具体的には、抗不安薬や抗うつ薬が使われます。これらの薬は、脳内の化学物質のバランスを調整することで、精神状態を安定させる効果があります。

ただし、薬物療法はあくまでも補助的な役割です。そのためうつ病に移行しそうなときに使われることがあります。

適応障害の治療方法③精神療法

精神療法とは、自分がダメだと自分を追い詰めてしまう癖を改善していく療法のことです。

適応障害の場合、自分を追い詰める考え方を改善する必要があります。

まずは自分の考え方の癖を知り、そのうえでそれを減らせるように意識的に取り組んでいく必要があります。

適応障害の治療方法④生活療法

生活療法の一つの方法は、日常のルーティンを整えることです。

適応障害では、日常生活の中でのストレスや負担が増えることがあります。そのため、睡眠や食事、運動などの日常の生活習慣を整えることが重要です。

十分な睡眠をとったり、バランスの取れた食事を摂ったりすることで、身体的な健康状態を保つことができます。

また、ストレスを軽減するためには、リラクゼーションやストレス解消の方法を取り入れることも有効です。例えば、ヨガや瞑想などのリラクゼーション法を実践することで、心と体のリラックスを促すことができます。

補足①:適応障害の治療期間の目安

適応障害は、長期間にわたって継続することがあります。しかし、一般的には、適応障害の治療期間は個人によって異なります。治療期間は、症状の重さや個人の回復力によっても左右されます。

一般的には治療期間は3か月程度であり、長くても6か月です。(参考:おおかみこころのクリニック「適応障害」

治療期間中には、専門家の指導のもとで、適切な治療方法を選び、症状の軽減や回復を目指すことが重要です。また、治療期間中は、十分な休息やストレスの軽減も大切です。

適応障害の治療期間は長いかもしれません。しかし、適切な治療を受けることで、回復の道を歩んでいくことができます。大切なのは、焦らずにじっくりと向き合い、支えを受けながら治療に取り組むことです。

補足②:適応障害とうつ病との違い

適応障害とうつ病の症状は非常に似ている部分がありますが、それぞれ全く異なる疾患です。それぞれ誤診されることも少なくありません。

特に違うのは、「ストレス要因の有無と回復にかかる時間」です。

まず適応障害は、こちらで解説したとおり、ストレスや環境の変化など明確な原因によって引き起こされます。そのため、原因から離れることで、病状はよくなっていきます。

一方、うつ病は、発症する原因が不明の場合が多いです。また、原因が明確な場合も、原因から離れても症状が続くことがあります。

適応障害の治療は、ストレスの原因を特定し、それに対処することが重要です。心理療法やストレス管理の技術を学ぶことで、症状を軽減することができます。一方、うつ病の治療には、抗うつ薬や心理療法が一般的に使用されます。

ただし、適応障害とうつ病の境界はあいまいです。適応障害による症状が悪化したり長引いたりすれば、適応障害からうつ病に移行するケースもあります

適応障害もうつ病も、自力での治療は困難です。医師やカウンセラーとのつながりを保ち、適切に治療を続けましょう。今は苦しいかもしれませんが、きっとよくなっていきます。

まとめ:休職中にしっかり治しましょう

ここまで適応障害で休職する場合、利用する制度や復職する際の注意点、治療以外でできることについて解説してきました。適応障害は誰もがなる可能性があります。

適応障害になった際に支援制度をどのような利用したらよいか、復職した際の注意点や対応策についても知っておく必要があります。

また現在、適応障害を発症して、これから休職を考えている人は、このコラムを参考にして、休職中にしっかりと適応障害を治すようにしましょう。

よくある質問(1)

休職中に適応障害を治療します。何を意識すべきでしょうか?

休職中に適応障害を治療する際に意識すべきポイントとして、以下が考えられます。

  • ストレスの原因である環境を調整する
  • ストレスの原因を把握して、ストレスへの対処法を身に着ける

詳細については、こちらで解説しています。

よくある質問(2)

適応障害で休職しました。どう過ごせばいいですか?

適応障害で休職したときの過ごし方して、以下が考えられます。

  • 医師やカウンセラーと定期面談する
  • 休養を優先する
  • 就労支援機関を利用する
  • 規則正しい生活を送る
  • セルフケアの方法を学ぶ
  • 副交感神経を意識して行動する
  • 転職や異動について検討してみる

詳細については、こちらで解説しています。

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

Amazon
翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

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