ASDの人に向いてる仕事 向いてる職場環境や仕事の探し方、探すときの軸を解説

コミュニケーションが苦手な反面、規範意識や論理的な思考力が高いと言われるASD。向いてる仕事はもちろんあります。
この記事では、ASDの人が職業を考えるときに知っておきたい長所と短所、向いてる仕事と向きづらい仕事、適職を探す方法などを解説します。
目次
ASDの人に向いてる仕事

この章では、「ASDの人に向いてる可能性がある仕事」を紹介します。
ただし、これは一般論です。ご紹介する内容は、まずは「ASDの特性があっても、向いてる仕事はある」という安心材料にしてください。その上で、「実際のあなた」に向いてる仕事は、支援団体などと話をする中で、具体的に見つかっていくはずです。
- 経理事務
- 会計士
- 法務
- 専門事務
- 設備点検
- トラック運転手
- プログラマー
- ソフトウェアなどのテスター
- デバッガー
- ゲームクリエーター
- 校正・校閲
- テクニカルライター(専門的な技術に関する文章を書くライター)
- 研究者
- 数学者
- 設計技術者
- 工学系デザイナー
- CADオペレーター
- フリーランスのデザイナーやライター
- アニメーター
- カメラマン
- 駅員
- 動物の調教師
- その他、ルーティンワーク(定型的な業務)が可能な仕事(ライン作業、軽作業、清掃員など)
上記は、定型作業が中心で淡々と仕事を進めやすい仕事、または専門性やこだわりや視覚処理能力を活かせる仕事です。ご紹介したもの以外にも、同様の特徴がある仕事であれば、ASDの人に向いてる可能性が高いでしょう。
法令などの公的なルールに強い「こだわり」を持つ人が法務部門に就職。他人の意見に惑わされずに、正確・堅実に仕事を行えるようになりました。
言葉や文字への「こだわり」と視覚情報処理の強みが合わさったASDの人が文章のチェックや校閲の仕事を担当。確認ミスがないことから、重宝されるようになりました。
ASDの人に向いてる職場環境

ASDの人が働く上では、職場環境も大切です。特に、感覚過敏が特性として強くあらわれている場合には職場に配慮を求めることも必要になってくるかもしれません。
一般的には、次のような職場環境が向いてる可能性が高いです
- 来客など、人の出入りが激しくない職場
- 季節や年間でスケジュールが決まっている(先の予定を立てやすい)仕事
このような環境で働ける可能性が高い仕事(部門・団体)の例としては、次のようなものがあります。
- 管理部門
- 研究・開発部門
- 学術・芸術系団体
- 学校関連
- 在宅ワーク(※)
※在宅ワークは、「リモート環境で指示があいまいになる」可能性もあるので、「リモートで何をどのように行うのか」も大切です。
ASDの人の長所と短所
ASDの人は、能力の凹凸から長所と短所が目立ちやすいと言われています。まずは、ご自身の特性を理解するために、特に「仕事」と関連したASDの長所と短所を簡単に紹介します(一般論ですので、「実際のあなた」の特性や性格と異なる可能性があります)。
木津谷岳『これからの発達障害者「雇用」』
本田秀夫『自閉症スペクトラム』
厚生労働省「No.1 職域で問題となる大人の自閉症スペクトラム障害」「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」
①ASDの人の長所
ASDの人には、以下のような長所があるとされています(個人差はあります)。
- 特定領域の記憶力に長けている
- 関心分野に高い集中力を発揮できる
- 規則に従順で規範意識が強い
- 論理的な思考が得意
ASDの人は、一般的に、こだわりが強く、見落としがちな細かいミスや間違いにもよく気付きます。ルールを順守したり、ロジカルに考えを組み立てたりするのも上手だと言われています。こうした長所を仕事で活かせる場面は多いです(具体的に向いてる仕事は後述します)。
②ASDの人の短所
一方、ASDの人には、以下のような短所が見られやすいです。
- 報告、連絡、相談がうまくできない
- 話の内容や暗黙の了解を理解しづらい
- 人の話を聞いていないと誤解されやすい
- 自分の体調や状態を把握しづらい
- 感覚過敏でストレスを感じやすい
対人面でトラブルを招きやすい短所が多いですが、自身の体調やストレスへの自覚が薄いという点も見逃せません。「過集中」やこだわりの強さから、休憩を挟めずに、倒れるまで作業を続けるという人もいます。
補足:コミュニケーションの傾向について
ASDの人には、「音声・会話でのコミュニケーションよりも、文字・文章を通じたコミュニケーションの方が得意」という傾向があることがあります。
逆に言うと、「音声・会話を通じたコミュニケーションの方が苦手」という傾向があることがあります。
ただしこれは比較の話であり、「文字・文章でのコミュニケーションが絶対的に得意」というものではありません。
ASDの人が自分に向いてる仕事を効果的に探す方法

続いて、ASDの人が「自分に向いてる仕事」を探すための方法をご紹介します。各方法を実施していくことで、「実際の、あなた」に向いてる仕事や就活方法などが見つかっていくと思います。
方法①支援団体に相談する
ASDの人は、ぜひ、就職について支援団体(専門家)に相談してみてください。支援団体はたくさんあります。次項以下で紹介する方法も、各団体に相談しながら検討することで、より効果的に進めることができます。
支援団体の例として、就労移行支援事業所や発達障害者支援センターを紹介します。
就労移行支援事業所とは
障害のある人たちのための、就職・定着を支援するサービス。次のような幅広い支援を受けられます。
- 仕事で活かせる知識・技能の習得
- 仕事や私生活で活かせるメンタル面のサポート
- 「どのような仕事や働き方が向いているのか」のアドバイス
- 転職先候補の業務や雰囲気を体験できる「職場体験実習(インターン)」の紹介
- 履歴書・経歴書・エントリーシートの作成支援
- 面接対策
- 転職後の職場定着支援
利用の可否は、お住まいの自治体が、下記などに基づいて判断します。
- 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがある
- 18歳以上で満65歳未満である
- 離職中である(例外あり)
※上記を満たすなら、障害者手帳を所持していなくても利用可能です。
就労移行支援事業所の詳細は、下記コラムをご覧ください。
- 厚生労働省「就労移行支援について」
発達障害者支援センターとは
発達障害のある人が安定した生活が営めるよう、総合的な支援をしています。診断書がなくても、発達障害に特化した幅広い相談ができるため、現時点でASDの確定診断がない人にもオススメです。全国の一覧はこちらをご覧ください。
その他にもサポート団体はたくさんあります。詳しい紹介は下記コラムで行っていますので、ぜひご覧ください。
方法②自分の特性を理解する

ご自身の特性を理解しましょう。これまでに解説してきたASDの特性や向いてる仕事は一般論です。実際の特性は人によって異なります。「あるASDの人には難しい仕事」でも、「あなたには向いてる仕事」である可能性はもちろんありますし、その逆も可能性もあります。
「自分は何が苦手・得意なのか」「どのような業務ができそうなのか」を紙に書きだすなどして、一度、整理してみるとよいでしょう。専門家以外に、家族や友達などから意見をもらうことも効果的です。
こうした自己理解は、エントリーシートの作成や面接の場などでも役に立ちます。折に触れて、ご自身の特性を再確認しましょう。
方法③雇用枠を検討する
自分に合った仕事を見つけたい人は、雇用枠をじっくり検討しましょう。求人には、大きくわけて、「一般枠」と「障害者枠」の2種類があります。
障害者を対象とする求人・雇用枠のことです。障害者枠ではない求人・雇用枠は、俗に「一般枠」と言われます。障害者枠では、一般枠と比べて、業務内容や業務量への配慮を得ながら働きやすいです。一方で、一般枠に比べて、待遇(給料や昇進など)の選択肢が少ない可能性があります。
「どちらの雇用枠を選択するか」をよく考えることで、無理なく長く働き続けることができます。ご自身の特性、経済状況、生活と仕事の優先順位などを総合的に考えて判断しましょう。(※個別の求人ごとに、条件などを見て検討することが可能です)
障害者枠(障害者雇用)の詳細は、下記コラムをご覧ください。
方法④特性への対策を身につける

ASDの特性をカバーする対策を身につけることも大切です。面接で特性対策を聞かれることもありますし、実際に働く場面や私生活でも役に立つでしょう。
特に面接の場では、「具体的な困りごとと、その対策法」を伝えた方が好印象です。
ASDの人ができる工夫の例には、以下の方法があります。
- 曖昧な指示で混乱しないように、具体的な指示を得るための質問をする習慣をつける
- 体調やストレスへの自覚の薄さを補うために、アラームで(通常の休憩時間に追加して)休憩時間を設ける
- 説明を受ける際には、口頭ではなく文字や絵図の利用を求める
ASDの人に向いてる仕事を探すときの5つの軸
ASDの人にも、もちろん適職はあります。ここでは向いてる仕事を探すときに意識したいことを「5つの軸」にまとめて紹介します。
ただし、こちらも一般論です。「実際のあなた」が検討するべき軸は、支援団体などと話すことで、具体的にわかっていくはずです。
①ルールやマニュアルに沿って働けそうか
規範意識の強いASDの人は、ルールやマニュアルに沿った仕事がマッチしやすいです。原則を適用することで処理できる業務は適性が高いと思います。厳密さや細やかさが高評価される場合もあります。規則やマニュアルが整備されているかは確認したいポイントです。
②専門性やこだわりを活かせそうか

自分の関心があることや、こだわりを活かせる職業に就くのもオススメです。
ASDの人は、興味の強い事柄に対しては徹底的に知識を収集したり、細かな情報まで記憶したりすることが得意と言われています。他の人が見過ごしがちなことも丁寧に拾って対処できるため、専門職やプロフェッショナルとして評価されやすいです。
③視覚的・聴覚的な処理能力を活かせそうか
ASDの人は、図面やデザインなどの視覚情報が記憶に残りやすく、理解や把握もしやすいことがあります。また、文字や文書での説明の方が頭に入りやすいこともあります。向いてる仕事を探すときには、リアルタイムでの声でのやりとりが多い仕事よりも「視覚的な処理がメインの仕事」を意識して探すのもよいでしょう。
一方で、口頭での説明などの聴覚的な情報の処理を得意とする人もいます。その場合、前段とは逆に、「音声情報でのやりとりが多い仕事」などを意識して探すといいかもしれません。
- 一橋大学「自閉症スペクトラム障害」
④臨機応変さを求められないか

「苦手な仕事をできるだけ避ける」という視点も必要です。
ASDの人は、想定外の事態やマニュアルを逸脱した事柄への対応が不得手です。柔軟性を求められない仕事を探すことがポイントになります。ある程度は臨機応変に対応しなくてはならない仕事であっても、サポート者がいるかどうか、交代要員がいるかなどは確認しておきたいところです。
⑤対人折衝が少ないか
ASDの主な困難は、社会性やコミュニケーションに関係するため、対人折衝が少ない仕事の方が向いてます。取引先との交渉や部署間の調整が多い仕事の場合、ストレスを感じやすい傾向があります。人とのコミュニケーションがあまり多くなく、マイペースに進められる仕事の方が向いているでしょう。
ASDの人に向いていない仕事

反対に、ASDの人には、以下のような仕事が向いていないと考えられます。
- 接客業(ウェイターなど)
- 販売代理店(自動車ディーラーなど)
- 営業職
- お客さま対応窓口(コールセンター、案内係など)
- 総務職
- 秘書
基本的には、電話応対や取引先との交渉が多い仕事、マルチタスクが求められる仕事は不向きな傾向にあります。機転を利かせて処理をしなくてはならない仕事もパニックになる可能性が高いです。
何度も繰り返しますが、上記は一般論です。「実際のあなた」と、「実際の職場の環境・マニュアル・サポート体制」などによっては、上記の職種で充実して働ける可能性もあります。気になる仕事があるのなら、ぜひ、希望を失わずに、ご自身で詳しく調べたり、サポート団体に話したり、(サポート団体や転職エージェントなどを挟んで)実際の求人元に話を聞いたりしてみましょう。
ASDの人が仕事で感じやすい困りごと

ASDの人は、上記の特性を理解したうえで、それが仕事の場面で「どのようにあらわれるのか」を確認することが大切です。ASDの人が実際の仕事で感じやすい困りごとには、以下があります(こちらも一般論です)。
- 曖昧な指示によって混乱する
- 本気と冗談の区別がわからない
- 他者の言動の意図を読むのが苦手
- 状況に頓着なく率直にものを言ってしまう
- 意思疎通が取れずに同僚との人間関係に困る
- 緊急事態や想定外のことにうまく対応できない
- 上下関係などを考慮せずに発言・対応する
改めて、ASDとは?
この章では、ASDについて改めて解説します。既にご存知かもしれませんが、これまでに紹介した内容の理解も深まると思いますので、ご覧ください。(参考:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、宮尾益知『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、姫野桂『発達障害グレーゾーン』、厚生労働省「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」)
①ASDの概要
ASDとは、「自閉スペクトラム症、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)」を意味する発達障害の1種です。
ASDには多くの特性がありますが、その中でも下記の2点がよく見られるものとして挙げられます。
- 社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥
- 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式
他に、感覚過敏(光や音や刺激への敏感さが目立つ)、発達性協調運動障害(不器用さが目立つ)などの特性がある人もいます。
なお、「スペクトラム」というのは、特性に様々なグラデーションがある、という意味です。一口に「ASD」と言っても、その特性の現れ方はひとりひとり異なります。
②ASDという名称・分類について
ASDという名称・分類が使用されはじめたのは、2013年に、アメリカ精神医学会が前掲の『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』を定めてからです。
それよりも昔には、「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などという名称・分類であり、診断基準も現在とは異なっていました。
かつての分類では、「言語発達に遅れのある場合を自閉症」、「知能が定型の人と同等で言語発達の遅れがないケースをアスペルガー症候群」と区分して判断する傾向がありました。
一方、ASDという分類では、厳密な区分ではなく、「地続きの障害(=スペクトラム)」としてとらえようとしています。
なお、現在も「正式な医学用語」以外の場面(日常会話や法令名など)では、アスペルガー症候群などの旧名称・分類が残っていることもあります。
③ASDによる具体的な困難について
ASDの特性は、具体的には次のような形・傾向で現れることがあります(例であり、「ASDの人には必ずこのような傾向がある」「このような傾向があれば必ずASDである」というものではありません)。
- 人と目線が合いにくい
- 場の状況や上下関係に無頓着である
- 名前を呼ばれても反応しない
- 一方的に言葉をまくしたてる
- 会話による意思疎通がうまくできず、コミュニケーションの齟齬が生じやすい
- 他人の発言をそのまま繰り返す
- 相手の身振りの意味、意見・気持ちなどを察しづらい
- 自分の考えと別の可能性を想定しづらい(相手の立場に立って考えることが苦手)
- 質問の意図や発言の狙いを理解しづらい
- 比喩や冗談を理解しづらい
- 表情から気持ちを察しづらい
- 自分だけのルールにこだわる
- 決まった順序や道順にこだわる
- 予定が急変するとパニックになる(パターン化した行動をする方が落ちついた生活を送ることができる)
④ASDの診断は医師だけが可能
「自分が(ある人が)ASDかどうか」の診断は、医師による問診や心理士が実施する心理検査を中心に行われます。
逆に言うと、医師以外には「ASDかどうか」の診断・判断はできません。
あなたが(ある人が)「発達障害かどうか」をハッキリさせたいのであれば病院を受診してみることをオススメします。
「診断を受けるのが不安」と思う人は、発達障害者のサポートを行う団体(各都道府県にある発達障害者支援センターなど)に「病院に行くべきかどうか」「診断をつけるメリットや注意点は何か」などを相談することができます。
⑤ASDの医学的な診断基準
下記は、2013年にアメリカ精神医学会がまとめた『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(精神障害の診察基準などを記した書籍)に挙げられているASDの診断基準を抜粋・一部編集したものです。
次のような診断基準に当てはまればASDの可能性があります(あくまで可能性です。「どの程度なら『当てはまる』と言えるか、他の病気や障害の可能性はないかなども含めて、「ある人がASDかどうか」は、医師だけが判断できます)。
- 相互の対人的-情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやり取りのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ
- 対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりのわるい言語的、非言語的コミュニケーションから、アイコンタクトと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ
- 人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、さまざまな社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ
- 情動的または反復的な身体の運動、ものの使用、または会(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同行動、反響言語、独特な言い回し)
- 同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的、非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)
- 強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限局したまたは固執した興味)
- 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音または触感に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)
⑥いわゆる「大人のASD」とは
「大人のASD」という言葉を聞くことがあるかもしれません。「大人のASD」とは、医学的な定義がある言葉ではありません。次のような状態を指す俗語です。
- 学童期には目立った特性や困難が見られなかった、またはその診断等を受けることはなかったものの、成人してから仕事の場などでその特性が顕在化し、ASDの診断を受けることになった例
- 子どもの頃からASDの診断を受けていた人が大人になった状態
1に関連して、発達障害は生まれつきのものであり、「大人になって(大人になるにつれて)発達障害になった」ということではありません。その上で、大人になって受けた検査でASDであることが初めて判明したというケースは少なくないようです。
⑦ASDの「グレーゾーン」とは?
ASDの傾向が確認されるものの、確定診断が下りるほどではないほどの状態・人のことを俗に「(ASDの)グレーゾーン」と言います。
グレーゾーンの場合、確定診断がないことから利用できる公的なサービスが限定されることがあります(例:障害者手帳を取得できないため障害者手帳が必須なサービスを利用できない)。
ただし、グレーゾーンの人でも「発達障害者支援センター」のようなサポート団体への相談は可能です。
確定診断があってもなくても、またASDに関係してもしなくても「発達障害に関する悩み事」は専門的な知識を持つ人たちに相談した人が対策や解決策を見つけやすくなるでしょう。
⑧ASD以外の発達障害
発達障害はその特徴によって、いくつかのグループに分けられています。
ASD以外の主な発達障害には、ADHD(注意欠如・多動性障害)、SLD(限局性学習障害)などがあります。
ASDとADHDの主な違いは、対人関係でのコミュニケーション能力の差にあらわれます。
他人の身振りの意味などを察することや、状況の推測・暗黙の了解を理解しにくいことが多いです。運動が苦手なことも多いです。
ASDの人と比べると、コミュニケーションに大きな齟齬が生じたり、会話のやり取りや身振りの意味の理解に不自由さが生じたりするということは少ないです。
一方で、書類の記入間違いや物忘れといったミスが多いです。
ASD・ADHD・SLDの複数が併存する人もいます。気になる人は、下記の参考記事をご覧ください。
まとめ:専門家に相談しながら自己理解を深めて、自分に向いてる仕事を見つけましょう

ASDの人が向いてる仕事を探すときには、ご自身の特性(長所と短所)を知ることがポイントです。支援団体・専門家にも相談して、自己理解を深めながら、業務内容や職場環境や雇用枠を検討していきましょう。
あなたに向いてる仕事は必ずあります。この記事が、仕事について悩んでいるASDの人の助けになれば幸いです。
ASDの自分に向いてる仕事を知りたいです。
一般論として、次のような仕事が考えられます。経理事務/法務/専門事務/設備点検/トラック運転手/プログラマー/ソフトウェアなどのテスター/デバッガー/ゲームクリエーター/校正・校閲。理由とともに、他にも紹介しますので、詳細はこちらをご覧ください。
ASDの自分に向いてる職場環境を知りたいです。
一般論として次のような環境が考えられます。「来客など、人の出入りが激しくない職場」「季節や年間でスケジュールが決まっている(先の予定を立てやすい)仕事」。職種も併せて紹介しますので、詳細はこちらをご覧ください。
監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
執筆寺田淳平
てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→