アスペルガー症候群で忘れっぽい人ができる仕事術 ADHDとの違いも解説 | キズキビジネスカレッジ  

アスペルガー症候群で忘れっぽい人ができる仕事術 ADHDとの違いも解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田淳平(ケアストレスカウンセラー有資格者)です。

アスペルガー症候群(現:ASD)のあなたは、「忘れっぽい」傾向があることに悩んではいませんか?

  • 忘れっぽいのはアスペルガー症候群(現:ASD)のせいだろうか?
  • 忘れっぽい傾向をカバーするにはどうすればいい?

上記のように、物忘れの多さが、アスペルガー症候群(現:ASD)に由来するものか、そもそもわからないという方も多いと思います。

そこで今回は、アスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」傾向に焦点を絞り、具体的な症状から仕事術までを徹底解説いたします。

同じ発達障害の一種であるADHDとの違いも紹介しますので、アスペルガー症候群(現:ASD)でお困りの方はぜひ一度読んでみてください。

※かつて「アスペルガー症候群」とされていた名称や内容は、医学的には「ASD」に改まっています。ただし現在でも「アスペルガー症候群」という言葉が使われる場面は多いです(日常会話や法令など)。それらを受けて、この記事では、内容的には「現行のASD」のものを紹介しつつ、表記としては「アスペルガー症候群(現:ASD)」といたします。

アスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」の4つの特徴

この章では、アスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」特徴について紹介します。

特徴①一つのことに夢中で、他のことを忘れる

特徴①一つのことに夢中で、他のことを忘れる

1点目は、「一つのことに夢中で、他のことを忘れる」です。

アスペルガー症候群(現:ASD)の人の中には、特定分野への強い「こだわり」を持つ人が多くいます。

「こだわり」のある分野に夢中になると、寝食も忘れて没頭する「過集中」になることも少なくありません

特に過集中の状態では、集中力を注いでいる対象以外のことは、頭から抜け落ちやすい傾向があります。

このように、一つのことに夢中で、他のことに構わなくなる傾向ゆえに、忘れっぽさが生じる場合があるのです。

特徴②忘れっぽさにムラがある

2点目は、「忘れっぽさにムラがある」です。

先述した「こだわり」のある分野や興味のあることに対しては、アスペルガー症候群(現:ASD)の人は驚くべき記憶力を発揮することがあります。

その反面、興味を抱けない分野については、記憶しておかなくてはならない情報であっても、忘れっぽいことが多いです。

具体例としては、「仕事に関わる専門知識などはよく覚えているのに、同僚からの指示や業務手順などは忘れやすい」という状況が挙げられます。

このように「忘れっぽさにムラがある」というのも、アスペルガー症候群(現:ASD)の人の特徴と言えるでしょう。

特徴③口頭で伝えられたことは忘れっぽい

特徴③口頭で伝えられたことは忘れっぽい

3点目は、「口頭で伝えられたことは忘れっぽい」です。

アスペルガー症候群(現:ASD)に限らず、発達障害の人の中には、「口頭で説明を受けると頭に入りづらい」という人がいます。

これは脳の機能の偏りによる特質であり、聴覚情報だけを頼りに理解しようとしても、努力だけではカバーしきれないところがあるのです。

聴覚情報だと理解が不十分となることから、記憶も曖昧になり、忘れっぽさにつながるという人もいます。

特徴④同時並行で作業すると忘れっぽい

4点目は、「同時並行で作業すると忘れっぽい」です。

仕事や依頼を抱え込みすぎて忘れることは、誰にでもあることです。

しかし、アスペルガー症候群(現:ASD)の人は、一つのことに集中するのが得意な反面、「同時並行で進める」ことが苦手です。

案件が複数にまたがると、片方の作業をしているうちに、もう片方のことを忘れることが多いと言われています。

同時並行で作業をすると、特に忘れっぽいというのも、アスペルガー症候群(現:ASD)に見られる特徴です。

「忘れっぽい」アスペルガー症候群(現:ASD)の人の仕事術6選

ここからは具体的に、アスペルガー症候群(現:ASD)の人が「忘れっぽい」傾向をカバーするためにできる仕事術を見ていきましょう。

前提として大切なのは、すべてを自分一人で解決しようと抱え込まないことです。

発達障害は脳の機能に原因がありますので、あなたの努力だけでは解決できない部分があります。

逆に言うと、医者、同僚、家族、支援者など、周囲の人と力を合わせることで、解決は近づいてきます

また、人に限らず、仕事に役立ちそうなグッズや道具に頼るのも有効でしょう。

ぜひ、一人で気負わずに、周りの協力を仰ぎながら、以下の仕事術を試してみてください。

仕事術①徹底的にリスト化する

仕事術①徹底的にリスト化する

1つ目は、「徹底的にリスト化する」です。

特に、「あなたが関心を持つことができていない、けれど覚えておかなければならない作業」については、できるだけリスト化することをオススメします。

その上で、「何かに没頭した後は、ひとまずこのリストを読み返す」などのルールを定めておくとよいでしょう。

そうすることで、一度は忘れたとしても、思い出すことができます

また、アスペルガー症候群(現:ASD)の人の中には、口頭での説明よりも、リストや手順表など、目で見て確認できる媒体の方が理解しやすい傾向を持つことがあります。

そういった意味でも「徹底的にリスト化する」というのは、忘れっぽいアスペルガー症候群(現:ASD)の特徴がある人にとって、有効な仕事術の一つです。

仕事術②図を用いて説明してもらう

2つ目は、「図を用いて説明してもらう」です。

情報を図に置き換えて説明することを、専門用語で「視覚的構造化」と呼びます。

先述したように、アスペルガー症候群(現:ASD)の人は、脳の構造的に「目で見てわかりやすい状態」の方が理解しやすいケースがあります

その傾向がある人たちについては、専門機関での支援プログラムにおいても、いかにして視覚的構造化を行うかがカギとされています。

視覚的にわかりやすい形式の方が、コミュニケーションもうまく進み、記憶にも残りやすいのです。

忘れっぽさに悩んでいるアスペルガー症候群(現:ASD)の人は、指示を受けるときに、図に置き換えて説明してもらうように、周囲にお願いをしてみてください。

あわせて、あなた自身も「図を用いて整理できないか」を常に心がけてみるとよいでしょう。

忘れっぽさが「口頭での説明による理解の曖昧さ」に由来している場合は、大きな効果を発揮するはずです。

仕事術③身近な人にリマインドしてもらう

仕事術③身近な人にリマインドしてもらう

3つ目は、「身近な人にリマインドしてもらう」です。

アスペルガー症候群(現:ASD)の人は、1つのことに集中しすぎるあまり、他のことが疎かになって忘れっぽさにつながりやすくなります。忘れないように心がけていたとしても、特性はなかなか変えにくく、自身のみで対応をするには限界があります。

それゆえ、前にも述べたとおり、「一度は忘れても思い出せるようにすること」が大切です。

そう考えたときに、「身近な人にリマインドしてもらう」という仕事術は、単純ではありますが、理にかなった方法と言えるでしょう。

日常的なことは家族や支援者に、業務のことは同僚にリマインドをお願いしましょう

忘れたまま放置するよりは、「リマインドしてもらえると助かります」とお願いされた方が、周囲の人も安心してフォローできるはずです。

忘れっぽさに悩むアスペルガー症候群(現:ASD)の人は、無理のない範囲で周囲の人に頼れるように相談してみましょう。

仕事術④手順をできるだけ簡略化する

4つ目は、「手順をできるだけ簡略化する」です。

複雑な手順は、誰もが忘れやすくなるものです。

加えてアスペルガー症候群(現:ASD)の人は、「自分のこだわり」が手順をさらに複雑にしている可能性があります

手順を簡略化できれば、忘れっぽさのカバーにつながります。

「職場のルールや慣行とされているもの」と「あなたのこだわり」の両方をよく検討して、「本当に必要な手順」をリスト化したり手順表に落とし込んだりしましょう。

ただし、「職場のルールや慣行」は、ひとりで簡略化するのではなく、上司や同僚にも相談しましょう

あなたが省いても問題がないと思った作業が、他の人からすると必要な作業である場合もあるからです。

相談すること自体が難しいという人は、手順を図に落とし込んだ段階で、同僚に見てもらうのもよいでしょう

手順の簡略化は、忘れっぽさの克服だけでなく、作業効率のアップにつながり、職場全体に利益をもたらす場合もありますので、ぜひ一度、作業手順を見直してみてください。

仕事術⑤戸棚や物にラベルを貼る

仕事術⑤戸棚や物にラベルを貼る

5つ目は、「戸棚や物にラベルを貼る」です。

アスペルガー症候群(現:ASD)の人は、「興味関心の狭さ」や「過集中」などの傾向により、作業に集中するあまり、その時に自分が使っていたものが元々どこにあったものなのか、誰から借りた物だったのかなどを忘れるといったことが多いと思います。

そうしたときに、戸棚や物にラベルを貼っておけば、どこから持ってきたものなのか、誰のものなのかを思いだすことができます

自分のデスクの引き出しはともかく、職場の共用の棚などは難しいかもしれませんが、周囲の同僚に許可を取りながら、「共用」「会議室」など普段置いてある場所の名前や個人名などを「ラベルに貼る」ことで、整理できないかどうかを試してみるとよいでしょう。

仕事術⑥入れ物を一つにまとめる

最後は、「入れ物を一つにまとめる」です。

前述した「ラベルを貼る」と同様に、こちらも物や道具を忘れがちな人のための仕事術です。

アスペルガー症候群(現:ASD)の人は、物の持ち運びや保管についても、「自分のルール」や「こだわり」を持つことがあります。

そのルール・こだわりが、過集中などと相まって「忘れる」につながることがあるのです。

単純化した例

「ハンカチは、他の道具と分けて、ポケットやカバンなどに入れずに手に持って移動したい」というこだわりがある。電車の中で資料を読むことに過集中が起きて、いつの間にか手からハンカチが落ちていることに気づかないまま、電車を降りる。

日用品や普段よく用いる文具などは、肩にかけられる小型の袋やポーチに入れるなど、コンパクトな形でまとめて収納したり持ち歩いたりすることをオススメします。

また、必要最低限に物をまとめることは、考えをシンプルにしたり、日頃の行動を思い返したりしながら、頭の中で整理することにもつながるでしょう。

アスペルガー症候群(現:ASD)で忘れっぽい人は、ぜひ「入れ物をひとつにまとめる」ことを心掛けてみてください。

ADHDとアスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」の違い

ADHDとアスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」

ここまで、アスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽさ」の特徴について解説してきました。

同じ発達障害の一種である注意欠陥・多動性障害(ADHD)にも「忘れっぽい」傾向が見られる場合があります

アスペルガー症候群(現:ASD)とADHDの特徴の両方がある人も多く、その場合は、忘れっぽさの原因をアスペルガー症候群(現:ASD)とADHDできれいに分けることは難しいかもしれません。

ですが、特性と状況から、忘れっぽさにつながるパターンを考えることは可能です。

アスペルガー症候群(現:ASD)の特性によってこだわりが強い場合には、自分のやり方、手順にこだわることで「自分の想像どおりにやること」が目的となり、本来の指示内容を忘れる可能性があります。

ADHDの特性によって不注意傾向や衝動性が強い場合には、注意の対象が別なことに向き、事前に準備したものやスケジュールを忘れることもあります

このように多くの場合は、特性と状況の相互作用によって忘れっぽさが生じていることが分かるのです。

アスペルガー症候群(現:ASD)の人は、上記の特性別の忘れっぽさを念頭に置きながら、次章で紹介する仕事術を試してみてください。

関連リンク

改めて、アスペルガー症候群(現:ASD)とは?

この章では、アスペルガー症候群(現:ASD)について改めて解説します。既にご存知かもしれませんが、これまでに紹介した内容の理解も深まると思いますので、ご覧ください。(参考:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、宮尾益知『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、姫野桂『発達障害グレーゾーン』、厚生労働省「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」

①ASDの概要

ASDとは、「自閉スペクトラム症、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)」を意味する発達障害の1種です。

ASDには多くの特性がありますが、その中でも下記の2点がよく見られるものとして挙げられます。

  1. 社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥
  2. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式

他に、感覚過敏(光や音や刺激への敏感さが目立つ)、発達性協調運動障害(不器用さが目立つ)などの特性がある人もいます。

なお、「スペクトラム」というのは、特性に様々なグラデーションがある、という意味です。一口に「ASD」と言っても、その特性の現れ方はひとりひとり異なります。

②ASDという名称・分類について

ASDという名称・分類が使用されはじめたのは、2013年に、アメリカ精神医学会が前掲の『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』を定めてからです。

それよりも昔には、「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などという名称・分類であり、診断基準も現在とは異なっていました。

かつての分類では、「言語発達に遅れのある場合を自閉症」、「知能が定型の人と同等で言語発達の遅れがないケースをアスペルガー症候群」と区分して判断する傾向がありました。

一方、ASDという分類では、厳密な区分ではなく、「地続きの障害(=スペクトラム)」としてとらえようとしています。

なお、現在も「正式な医学用語」以外の場面(日常会話や法令名など)では、アスペルガー症候群などの旧名称・分類が残っていることもあります。

③ASDによる具体的な困難について

ASDの特性は、具体的には次のような形・傾向で現れることがあります(例であり、「ASDの人には必ずこのような傾向がある」「このような傾向があれば必ずASDである」というものではありません)。

  • 人と目線が合いにくい
  • 場の状況や上下関係に無頓着である
  • 名前を呼ばれても反応しない
  • 一方的に言葉をまくしたてる
  • 会話による意思疎通がうまくできず、コミュニケーションの齟齬が生じやすい
  • 他人の発言をそのまま繰り返す
  • 相手の身振りの意味、意見・気持ちなどを察しづらい
  • 自分の考えと別の可能性を想定しづらい(相手の立場に立って考えることが苦手)
  • 質問の意図や発言の狙いを理解しづらい
  • 比喩や冗談を理解しづらい
  • 表情から気持ちを察しづらい
  • 自分だけのルールにこだわる
  • 決まった順序や道順にこだわる
  • 予定が急変するとパニックになる(パターン化した行動をする方が落ちついた生活を送ることができる)

④ASDの診断は医師だけが可能

「自分が(ある人が)ASDかどうか」の診断は、医師による問診や心理士が実施する心理検査を中心に行われます。

逆に言うと、医師以外には「ASDかどうか」の診断・判断はできません。

あなたが(ある人が)「発達障害かどうか」をハッキリさせたいのであれば病院を受診してみることをオススメします。

「診断を受けるのが不安」と思う人は、発達障害者のサポートを行う団体(各都道府県にある発達障害者支援センターなど)に「病院に行くべきかどうか」「診断をつけるメリットや注意点は何か」などを相談することができます。

⑤ASDの医学的な診断基準

下記は、2013年にアメリカ精神医学会がまとめた『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(精神障害の診察基準などを記した書籍)に挙げられているASDの診断基準を抜粋・一部編集したものです。

次のような診断基準に当てはまればASDの可能性があります(あくまで可能性です。「どの程度なら『当てはまる』と言えるか、他の病気や障害の可能性はないかなども含めて、「ある人がASDかどうか」は、医師だけが判断できます)。

A.複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥がある
  1. 相互の対人的-情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやり取りのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ
  2. 対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりのわるい言語的、非言語的コミュニケーションから、アイコンタクトと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ
  3. 人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、さまざまな社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ
B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上ある
  1. 情動的または反復的な身体の運動、ものの使用、または会(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同行動、反響言語、独特な言い回し)
  2. 同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的、非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)
  3. 強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限局したまたは固執した興味)
  4. 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音または触感に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)

⑥いわゆる「大人のASD」とは

「大人のASD」という言葉を聞くことがあるかもしれません。「大人のASD」とは、医学的な定義がある言葉ではありません。次のような状態を指す俗語です。

  1. 学童期には目立った特性や困難が見られなかった、またはその診断等を受けることはなかったものの、成人してから仕事の場などでその特性が顕在化し、ASDの診断を受けることになった例
  2. 子どもの頃からASDの診断を受けていた人が大人になった状態

1に関連して、発達障害は生まれつきのものであり、「大人になって(大人になるにつれて)発達障害になった」ということではありません。その上で、大人になって受けた検査でASDであることが初めて判明したというケースは少なくないようです。

⑦ASDの「グレーゾーン」とは?

ASDの傾向が確認されるものの、確定診断が下りるほどではないほどの状態・人のことを俗に「(ASDの)グレーゾーン」と言います

グレーゾーンの場合、確定診断がないことから利用できる公的なサービスが限定されることがあります(例:障害者手帳を取得できないため障害者手帳が必須なサービスを利用できない)。

ただし、グレーゾーンの人でも「発達障害者支援センター」のようなサポート団体への相談は可能です。

確定診断があってもなくても、またASDに関係してもしなくても「発達障害に関する悩み事」は専門的な知識を持つ人たちに相談した人が対策や解決策を見つけやすくなるでしょう。

⑧ASD以外の発達障害

発達障害はその特徴によって、いくつかのグループに分けられています。

ASD以外の主な発達障害には、ADHD(注意欠如・多動性障害)、SLD(限局性学習障害)などがあります。

ASDとADHDの主な違いは、対人関係でのコミュニケーション能力の差にあらわれます。

ASDの場合

他人の身振りの意味などを察することや、状況の推測・暗黙の了解を理解しにくいことが多いです。運動が苦手なことも多いです。

ADHDの場合

ASDの人と比べると、コミュニケーションに大きな齟齬が生じたり、会話のやり取りや身振りの意味の理解に不自由さが生じたりするということは少ないです。
一方で、書類の記入間違いや物忘れといったミスが多いです。

ASD・ADHD・SLDの複数が併存する人もいます。気になる人は、下記の参考記事をご覧ください。

まとめ:アスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」は工夫次第で改善できます

まとめ:アスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」は工夫次第で改善できます

アスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」に焦点を絞り、その特徴から、ADHDとの違い、仕事術までを解説してきました。

役立つ情報はあったでしょうか?

繰り返しにはなりますが、発達障害は脳の機能の偏りに由来しますので、頑張って克服しようとしても忘れっぽさを完璧になくすということはかなり難しいことだといえます。

できないことをできるようにしていくことも必要ですが、仕事をするうえでは忘れてもカバーできるような仕組みづくりを考えることが重要です。

特に、物事を本当に「忘れた」場合には、あなたひとりではうまくいかないことも多いと思います。

そのため、周囲の人や身近な道具に頼るという姿勢を持つことがとても大切です。

ぜひ、一人で抱え込まずに、周囲に協力を求めるようにしてください

このコラムがアスペルガー症候群(現:ASD)の「忘れっぽい」傾向に悩む人の助けになれば幸いです。

よくある質問(1)

アスペルガー症候群(現:ASD)特有の、「忘れっぽさ」の特徴はありますか?

一般論として、次の4点が挙げられます。「一つのことに夢中で、他のことを忘れる」「忘れっぽさにムラがある」「口頭で説明されると忘れっぽくなる」「同時並行で作業すると忘れっぽくなる」。詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

アスペルガー症候群(現:ASD)で忘れっぽい自分が使える仕事術はありますか?

一般論として、次の6点が考えられます。「徹底的にリスト化する」「図を用いて説明してもらう」「身近な人にリマインドしてもらう」「手順をできるだけ簡略化する」「戸棚や物にラベルを貼る」「入れ物を一つにまとめる」。詳細はこちらをご覧ください。

監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。 臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。

【著書など(一部)】
子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数

日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

監修角南百合子

すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい

執筆寺田淳平

てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

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