クローズ就労とは? メリットやデメリット、就職先の選び方を徹底解説 | キズキビジネスカレッジ  

クローズ就労とは? メリットやデメリット、就職先の選び方を徹底解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田淳平です。

あなたは、障害や病歴を開示せずに働く「クローズ就労」をすべきかで悩んでいませんか?

障害や病気がある人が就職や転職を考える際には、クローズ就労とオープン就労、それぞれのメリットとデメリットに関する正確な知識が必要です。

なぜなら、安心して働き続けるために、あなたに合った就労枠を選ぶことが大切だからです。

そこで本コラムでは、クローズ就労のメリットとデメリット、就職先の選び方を徹底解説いたします。

3,500人規模の職場で人事を担当した私の知見と合わせて、クローズ就労をする際の注意点も、障害ごとに分けてご紹介します。

クローズ就労について知りたいという方は、ぜひ一度お読みください。

クローズ就労とは?:自分の障害を言わずに就労すること

クローズ就労とは?

クローズ就労とは、「就職先に障害の内容を開示しないで働くこと」です。基本的には、障害者向けではない「一般枠」での求人に応募することになります(ほとんどの求人では、特に「一般枠」とは書いていません。「障害者向けと明記されていない、いわゆる『普通の求人』」のことです)。

そのため、メリットとデメリットを吟味した上で、あなたの障害特性に合った就労先を見つけることが重要です。

クローズ就労のメリット3点

クローズ就労のメリットは、大きく分けて3つあります。

これらは、障害者枠での就労になる「オープン就労」との比較から生じるメリットです。

そのため、後述するオープン就労のメリット・デメリットも確認した上で、どちらの雇用枠が自分に適しているかを考えるようにしてください。

大切なのは、「あなたが長く働き続けられること」です。

そのために、どの要素を重視すべきかを考えながら、順に確認していきましょう。

メリット①給与水準が比較的高い

給与水準が比較的高い

メリットの1点目は「給与水準が比較的高い」ということです。

クローズ就労では、障害者枠に比べて、一般枠での正社員登用が多い傾向にあります。

それに伴い、給与水準も高めに設定されていることが多いです。

とはいえ、個々人の給与は、実際の雇用形態や所定労働時間によって変わるため、一概には言えません。

業種や就労先によっては、特定の一般枠の給与よりも、他の(専門的な)職種での障害者枠の給与の方が高いというケースもあります。

そのため、給与水準の高さはあくまでも傾向としての理解に留め、実際の就職活動では、エントリー先の待遇をしっかり確認してから、比較するようにしましょう。

メリット②求人数や職種が豊富である

求人数や職種が豊富である

2つ目のメリットは「求人数や職種が豊富である」という点です。

2021年の障害者雇用促進法の改正に伴い、法定雇用率が引き上げられたことで、障害者枠の求人は増えています。

しかし、それでも、一般枠での求人数の方が多いというのが現状です。

たとえば、求人サイト「求人ボックス」で「正社員/東京都/障害者採用の求人」という条件で検索すると、2,599件の求人情報がヒットします(2023年11月2日現在)。

それに対し、先ほどの条件から「障害者採用の求人」という条件を外した場合には、求人情報の数は1,596,584件となります(2023年11月2日現在)。

求人数が多いと、あなたの希望する条件に合った職場が見つけやすいというメリットがあります。

さらに、第一希望が叶わなくても、次点の就職先で十分に満足できる可能性も高まります。

また、職種の選択肢も一般枠の方が多いです。

障害者枠のオープン就労では、事務職や一般職が多数であるのに対して、一般枠でのクローズ就労では、事務職・一般職に加えて、総合職や専門職などの多様な職種が選択可能なことが多いです。

求人数や職種の豊富さを優先したいという方には、このメリットは大きいでしょう。

メリット③キャリアアップしやすい

キャリアアップしやすい

最後のメリットとして、「キャリアアップしやすい」という点が挙げられます。

求人数や職種が豊富なため、クローズ就労では多様なキャリアを選択しやすいのです。

また、特定の業務で専門性を深めたり、ある部署で様々な業務を担当したり、異動したりすることは、一般枠に多い総合職ではよくあることです。

結果として、多様なキャリアを積むことができます。

そして、キャリアを積むことができれば、昇進や昇給につながるだけでなく、将来的な転職や独立を検討する際にも役立つでしょう。

加えて、「自分には実績がある」という自己効力感はあなたの自信になり、生きやすさにつながるはずです。

ただし、クローズ就労では、異動等で様々なキャリアを積めると同時に、「希望した部署へ配属してもらえない」「障害に配慮した業務を担当できない」ということもあります。

このように、ある程度の「不自由さ」を受け入れる場面も起こり得るため、注意が必要です。

クローズ就労のデメリット・注意点4点

この章では、クローズ就労のデメリット・注意点を3つ紹介します。

紹介するデメリット・注意点の中でも重要なのは、最初に挙げる「障害を隠すことで不安が生じる」という点です。

先述したように、クローズ就労ではキャリアアップしやすいというメリットがあります。

しかし、「障害を隠すことで生じる不安感によって、仕事に集中できない」という意見もあります。

そのため、クローズ就労を考える際には、メリットだけでなくデメリット・注意点も考慮することも大切です

注意点①障害を隠すことで不安が生じる

障害を隠すことで不安が生じる

クローズ就労で特に注意したいデメリットが、この「障害を隠すことで不安が生じる」点です。

クローズ就労を検討する方は、程度の差はあれ、障害や症状を職場の人に隠しておきたいと考える傾向があります。

そのため、単に仕事をこなすだけでなく、障害を隠すという別の努力も必要になるのです。

こうした「障害を隠さなければ」という気負いは、精神不安につながり、仕事のパフォーマンスに影響を与えることが考えられます。

また、人によっては、障害を明かさずに無理をした結果、うつや不安障害などの「二次障害」を発症する場合もあります。

クローズ就労を考える際には、障害の非開示で生じた精神不安と、無理なく向き合う余裕を持つことが必要です。

注意点②障害への配慮を受けられない

障害への配慮を受けられない

2番目に挙げられるデメリットは、「障害への配慮を受けられない」です。

クローズ就労の場合、障害を非開示にしているため、基本的には業務内容も非障害者と同じものになります。

つまり、「障害によって生じる、苦手な作業を担当する可能性がある」ということです。

例えば、不注意傾向の強いADHDの人は、細かな事務作業を苦手とする傾向があります。

しかし、障害を開示していなければ、勤め先では非障害者と同様に、事務作業を命じられることがあるでしょう。

また、障害をお持ちの場合は、体調の波に左右されることがあります。

体調不良のときに休暇を取るのは、非障害者も同じです。

しかし、体調の波に左右されて有給休暇を使い切り、コンディションを整えられないことが続くと、「大切な仕事を任せられない」という印象を、職場の同僚に与えるかもしれません。

クローズ就労を検討する際には、「あなたの症状に対して配慮が得られないことで、どのような影響があるか」をよく考える必要があるでしょう。

注意点③就職先と支援機関の連携したサポートが得られない

就職先と支援機関の連携したサポートが得られない

最後のデメリットは「就職先と支援機関の連携したサポートを得られない」です。

詳細は後述しますが、オープン就労の場合は、就職後も、就労支援機関を媒介して、企業に適切な配慮をするよう働きかけたり調整したりすることができます。

具体的には、「三者合同の定期面談を通じて、業務内容の調整ができる」「カウンセリングを通じてアドバイスをもらえる」といったメリットがあります。

しかし、クローズ就労の場合は、「支援機関とあなた」の間のサポートはできても、「支援機関と職場」の間のサポートができないのです。

そのため、人によっては、有効な仕事術を見つけられずに悩んだり、会社への働きかけができずに一人で抱え込んだりする恐れがあります。

オープン就労とは?:自分の障害をオープンにして就労すること

オープン就労とは

オープン就労とは、あなたの病気や障害などを相手先に開示した上で就職活動・就労をすることです。

障害者枠(企業や役所などが、障害者に限定して行う求人)での就労がメインになりますが、後述するように、オープン就労で一般枠(障害者に限定しない、通常の求人)での就労というケースもあります。

ちなみに、一般枠とは、「障害者に限定しない、通常の求人」のことです。特に「障害者枠」と明記されていない求人は、一般枠と考えてよいでしょう。

では、オープン就労のメリットとデメリット、条件などを見ていきましょう。

オープン就労のメリット4点

オープン就労のメリットは、4つ挙げられます。

原則として、障害者枠で就労した場合を想定していますが、一般枠でも得られるメリットも含まれます。

メリット①業務内容や配属先への配慮を受けられる

業務内容や配属先への配慮を受けられる

1点目のメリットは、「業務内容や配属先への配慮を受けられる」という点です。

障害があると特定業務が苦手だったり、相性が悪かったりということが多々あります。

オープン就労であれば、障害に応じた不得手に配慮した業務や職場環境への配属となるのです。

例えば、聴覚過敏のせいで騒がしい職場や聞き取りが苦手という人であれば、その旨を申告することで静かなオフィスに配属されたり、電話応対を業務から除外できたりします。

ASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害者の人であれば、過集中によって疲れすぎないように休憩の時間を設けることができたり、残務がなくなるような配慮を受けたりできます。

こうした業務内容や配属先への配慮は職場定着に関わるため、大きなメリットと言えるでしょう。

メリット②障害を開示できることによる安心感がある

メリットの2点目は、「障害を開示できることによる安心感がある」ことです。

後で解説するクローズ就労の場合、障害を隠さなければならないという秘密を持つことになるので、人によっては精神不安が生じます。

オープン就労であれば、あなたの状態を理解してもらった上で働けるため、安心感があります。

もし体調が悪化して業務がつらくなっても、障害を開示してあることで状況を伝えやすくなります。

メリット③支援機関と就職先が連携したサポートを受けられる

「支援機関と就職先が連携したサポートを受けられる」というのも大きな利点です。

例えば、障害者の就労に関する福祉サービスに、「就労移行支援事業」というものがあります。

就労移行支援事業では、就職までのサポートを行うとともに、就職後の定期面談を含む職場定着支援を行っています。

こうしたサポートの有無によって、職場定着率が大きく変わってきます。

オープン就労の場合、支援者と職場で連携したサポート(定期的な面談など)が受けられるのです。

以下のチャートを見ると、支援機関によるサポートによって職場定着率が約20%もあがっていることがわかります(出典:障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」

職場定着率

支援機関によるサポートが受けられるのは、オープン就労の大きなメリットと言えるでしょう。

クローズ就労の場合も、就職後に「支援者とあなた」の間での話し合いはできますが、そこに「就職先」を加えることは難しいことを覚えておきましょう。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつ病や発達障害などの人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、通える範囲にお住まいであれば、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

メリット④その日の調子に合わせて勤務形態を変更しやすい

最後のメリットは、「その日の調子に合わせて勤務形態を変更しやすい」という点です。

障害のある人は、その日の天候や気温によって、体調が変動しやすい傾向があります。

いわゆる「気象病」というものです。

特にうつ病や双極性障害などの精神疾患のある人は自律神経が乱れがちなため、台風の前後などの気圧の変化に弱く、日によっては出勤するのもつらい場合があります。(参考:NHK首都圏ナビ『「気象病」 頭痛 めまい けん怠感 動画で見る症状をやわらげる方法』)

オープン就労であれば、そういうときに体調に合わせてその日を短時間勤務にしたり、早退したりと、融通を利かせることができます。

勤務形態を変更しやすいという利点は、長く働きつづける上で重要になってくるでしょう。

オープン就労のデメリット・注意点3点

それでは、オープン就労のデメリット(注意点)とは何なのでしょうか?

給料といった経済的側面や就職活動をする上での困難が主なデメリット(注意点)になってくるでしょう。

この章では、3つに分けて解説いたします。

デメリット①給与水準が比較的低い

デメリットの1点目は、「給与水準が比較的低い」ということです。(以下出典・参考:厚生労働省※PDF「平成30年度障害者雇用実態調査結果」、国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」

厚生労働省の調べによると、2018年度の障害者の月額平均給与は以下の通りとなっています。

  • 身体障害者:21万5千円
  • 知的障害者:11万7千円
  • 精神障害者:12万5千円
  • 発達障害者:12万7千円

国税庁の出した給与所得者全体の平均給与が約36万8千円(年441万円を月数で除算)であることを考えると、給与水準の低さは明らかです。

原因としては、雇用形態の違いと週所定労働時間が少ない点が挙げられます。

精神障害者を例にとって見てみましょう。

一般的に「無期契約の正社員」がもっとも給与を得られますが、厚生労働省の調査結果によると精神障害者の雇用形態別の割合は以下のようになっています。

  • 無期契約の正社員:25.0%
  • 有期契約の正社員:0.5%
  • 無期契約の正社員以外:46.2%
  • 有期契約の正社員以外:28.2%
  • 無回答:0.1%

無期有期問わず、正社員以外が圧倒的多数を占めています。

また、週所定労働時間も通常(30時間以上)未満が半数以上となっています。

給与水準

非障害者と比較して、雇用形態と週所定労働時間の違いから給与に差が出ていると考えられます。

デメリット②求人数が比較的少ない

オープン就労での就職活動をする人が直面するのが、「求人数が比較的少ない」というデメリットです。

たとえば、求人サイト「求人ボックス」で「正社員/東京都」という条件で検索すると、1,596,584件の求人情報がヒットします(2023年11月2日現在)。

それに対し、先ほどの条件に「障害者採用の求人」という条件を追加した場合には、求人情報の数は2,599件となります(2023年11月2日現在)。

一般枠に比べて、障害者枠の数はまだまだ少ないというのが現状です。

しかし、障害者雇用での求人数自体は年々増えてきています。

2021年3月に障害者雇用促進法が改正されたことで、それまで2.2%だった民間企業での障害者の法定雇用率が2.3%に、国・地方公共団体では2.5%から2.6%に引き上げられました。

ちなみに、民間企業の法定雇用率は、2024年4月からは2.5%、2026年7月からは2.7%へと段階的に引き上げられることが決まっています(参考:厚生労働省※PDF「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」)

うつ病や双極性障害といった疾患のある精神障害者も「障害者雇用義務」の対象です。

現状求人数が少ないとはいえ、今後に期待が持てるのでご安心ください。

デメリット③職種の選択肢が比較的少ない

職種の選択肢が比較的少ない

最後のデメリットは、「職種の選択肢が減ってしまう」というものです。

障害者枠での職種は、定型的な一般事務が多い傾向にあります。

反対に営業職や総合職など、機動力や柔軟性を求められる職種の求人は、一般事務と比較すると少ないということは、覚えておいた方がよいでしょう。

たとえば、障害者向けの転職サービス「dodaチャレンジ」には1,429件の公開求人が掲載されていますが、その大半が事務系職種であり、その割合は約71%です(2023年11月2日現在)。

また、求人数や職種が限られるということは、「仕事のキャリア」を積み上げていく際のデメリットにもつながります。

オープン就労との大きな違い

オープン就労との大きな違い

それでは、クローズ就労とオープン就労の大きな違いは、どこにあるのでしょうか?

まず、オープン就労のメリットとして挙げられるのは、以下の2点です。

  1. 支援機関による定期面談などのサポートを受けられる
  2. 業務内容や配属先への配慮を受けられる

クローズ就労のデメリットと裏返しになりますが、特に大きいのは①の「支援機関によるサポート」です。

クローズ就労の場合は、特に就職後の「職場定着率」が課題と言われています。

障害を非開示にして一般求人で採用となっても、1年後に職場定着をしている人は、「約30%」しかいないというデータが出ているのです。(出典:障害者職業総合センター『障害者の就業状況等に関する調査研究』

職場定着率

そのため、障害を持っている方の就労は、「いかに職場定着するか」が重要と言えるでしょう。

なぜ支援機関によるサポートが大切かというと、サポートの有無によって職場定着率が大きく変わるからです。

以下のチャートの通り、支援機関による定着支援の有無によって、就職1年後の職場定着率に「20%以上」の差が出ます。

就職1年後の職場定着率

職場定着を目指す上で、支援機関の果たす役割の大きさが伺えるかと思います。

一方、デメリット(注意点)としては、主に以下の2点が挙げられます。

  1. 給与水準が比較的低い
  2. 求人数や職種が少ない

こちらもクローズ就労のメリットの逆となっています。

しかし、就職先や職種によっては、オープン就労での一般枠よりも給与などの条件が良いこともあります。

なお、オープン就労の際には、基本的に障害者枠での採用になるため、障害者手帳が必要です。

障害者と国民全体の月額平均給与の比較など、オープン就労をした際のメリットとデメリットについて、より詳細に知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。

関連リンク

クローズ就労での就職先を選ぶときのポイント3点

クローズ就労での就職先を選ぶときのポイントは3つあります。

ポイント①休職制度や福利厚生制度の整っている就職先を選ぶ

休職制度や福利厚生制度の整っている就職先を選ぶ

ひとつは「休職制度や福利厚生制度の整っている就職先を選ぶ」です。

障害を非開示にしているとはいえ、体調を崩したときは、止むを得ず休職(=1日・2日の病欠ではなく、週・月単位で欠勤しての療養)することも考えられます。

そうした際に、休職制度の適用期間が長かったり、休職中も給与が発生したり、復職に向けた厚生制度の整っている勤め先であれば、安心して休養に専念できます。

仮に休職に至らなかったとしても、そうした事態になったときの備えができているのは、日頃の安心感につながるでしょう。

ポイント②メンタルヘルス研修を行っている

メンタルヘルス研修を行っている

ポイントの2点目は「メンタルヘルス研修を行っているかどうか」です。

2014年の改正労働安全衛生法の施行以来、2015年12月にはストレスチェック制度が義務化されるなど、コンプライアンスの面で労働者のメンタルヘルスへの取り組みが重視されつつあります(参考:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」)

それに伴い、管理職だけでなく、一般職に対してもメンタルヘルス研修を行う職場が増えており、企業の採用サイトなどで、メンタルヘルスへの取り組みを掲げているところもあります。

クローズ就労をする場合であっても、希望する勤め先が、労働者の健康に対してどのような配慮しているのかを知っておくのがよいでしょう。

ポイント③長く働き続けられる職場であるかを考えて選ぶ

長く働き続けられる職場であるかを考えて選ぶ

最後のポイントは「あなたが長く働き続けられる職場であるかを考えて選ぶ」です。

先述したように、障害がある場合の就労には、職場定着が非常に重要です。

就職先を選ぶ際には、どうしても給与やキャリアに注目しがちですが、判断の軸として「長く働き続けられそうかどうか」を考えるようにしてください。

具体的には、「職場の雰囲気が合っているか」「通勤時間が長過ぎないか」「頻繁な転勤といった過度な環境変化がないか」などを確認するとよいでしょう。

また、最初に挙げた休職制度や福利厚生制度の有無も、「長く働き続ける」ための判断材料になるでしょう。

精神障害でクローズ就労をする際に気をつけたいポイント3点

この項目では、特に精神障害でクローズ就労をする際に気をつけたいポイントについて解説します。

今回はうつ病、躁うつ病、統合失調症の3つに焦点を絞りますが、そのいずれにも共通するポイントがあります。

それは、「医師の診断に従うこと」、そして「必ず無理はしないということ」です。

特に、医師の診断は重要です。

定期的な診断や、何かしら不調を感じたときの診断を受けることで、ご自身でも気付かない体調の変化をそれとなく指摘してもらえたり、療養が必要かどうかを判断してもらえたりするからです。

これから紹介する注意点について、留意しているつもりでも、通院や服薬を自己判断で中断しないようにしましょう。

ポイント①うつ病でのクローズ就労:小まめに休む

うつ病でのクローズ就労:小まめに休む

うつ病でのクローズ就労を選択する方は、「小まめに休む」という原則を意識しましょう。(参考:友常祐介『正しく知る 会社「うつ」の治し方・接し方』

うつ病の人は、気付かないうちに神経を使って、疲労をため込む傾向にあります。

そのため、トイレ休憩のような小休止を、業務の合間に挟むことがオススメです。

それと同時に、定期的に有給休暇などを取得し、終日休む日を作るように意識してください。

これには、疲れをため込み、ベッドから起き上がることもできない状態を防ぐ、疲労軽減の役割を果たします。

また、周囲の人に対して、「定期的に休みを入れるのが、この人の働き方なのだ」と認識させる大切な役割もあります。

小まめに休みを取ることで、長期間休んで仕事に大きな穴を空けることなく、体調を維持しやすくなります。

医師から長期の休養を打診された際には、それに従う方がよいですが、セルフケアで調子を戻すことに慣れるためにも、小まめに休みを取るようにしましょう。

ポイント②躁うつ病(双極性障害)でのクローズ就労:業務量をコントロールする

躁うつ病(双極性障害)でのクローズ就労:業務量をコントロールする

躁うつ病をお持ちの方は、「業務量をコントロールする」ことが大切です。(参考:こころの情報サイト『双極性障害(躁うつ病)』 、日本うつ病学会『双極性障害(躁うつ病)とつきあうために』

躁うつ病とは、気分が沈む「抑うつ状態」と、気分が高揚する「躁状態」の両極端の状態を行き来する病気で、現在は「双極性障害」という名称で知られています。

躁うつ病の症状の中で警戒しなくてはならないのは躁状態、もしくは抑うつ状態から躁状態に切り替わる「躁転」のタイミングです。

躁状態では衝動性が強くなるため抑制が効かず、周囲の人に迷惑を掛けたり、感情を抑えきれなくなったりするからです。

そして、躁状態のサインや躁転のきっかけになるものとして、過労が挙げられます。

躁のときには疲れ知らずになり自信にも満ちているため、つい過度に熱中して仕事をこなします。

しかし、そのまま続けて仕事をすると、症状を悪化させる可能性もあります。

そのため、躁うつ病での就労をお考えの人は、特に「業務量をコントロールする」ことが重要になります。

とはいえ、ご自身の力だけではどうにもならないこともあります。

障害を開示しないまでも、上司や同僚に「自分はスイッチが入ると働き過ぎてしまう傾向があるから、気づいたときに声をかけてください」など、働きかけるのがよいでしょう。

ポイント③統合失調症でのクローズ就労:服薬の時間をきちんと取る

統合失調症でのクローズ就労:服薬の時間をきちんと取る

統合失調症をお持ちの方は、「服薬の時間をきちんと取る」ようにしましょう(参考:こころの情報サイト「統合失調症」)

統合失調症とは、脳の様々な働きをまとめる機能に障害が生じたことで、幻覚や妄想などの症状が出る病気のことです。

統合失調症の治療には、幻覚や妄想を抑える抗精神病薬による薬物療法と、カウンセリングなどによる精神療法の2つがあります。

この2つはどちらも欠けることなく、両方を組み合わせることが重要ですが、中でも抗精神病薬の服用は治療の「前提」となるものだと考えられます。

というのも、統合失調症は非常に再発率の高い病気で、服薬を中止した場合には1年以内に「約80%」、2年以内に「98%」の方が再発することが知られているからです。

そのため、症状が軽快しても医師の診断があれば、服薬は欠かさないことが大切です。

もし統合失調症向けの薬であることを知られたくないという場合は、サプリメントや持病のためという言い方で茶を濁すのもひとつの手段でしょう。

クローズ就労Q&A

最後に、クローズ就労に関するよくある質問に、Q&A形式でお答えいたします。

面接での質疑応答に関する問題など、クローズ就労を検討中の方が悩みやすい内容を厳選しましたので、就労をご検討中の方は適宜ご参照ください。

Q1.クローズ就労とオープン就労のどちらが合っているかわからない

クローズ就労とオープン就労のどちらが合っているかわからない

「クローズ就労とオープン就労のどちらを選んでよいかわからない」という方には、国の法律に基づいて設置されている「就労移行支援事業所」への相談をオススメいたします。

就労移行支援事業とは、障害者総合支援法にもとづいて運営されている障害のある方向けの就労支援サービスです。

就労移行支援事業所ではオープンかクローズかといった就労形態だけでなく、特性理解に向けたアドバイスや、あなたに合った就職先の紹介など、様々なニーズに対応しています。

最低0円からサービスを受けることができますので、興味のある方は無料相談を申し込んでみるとよいでしょう。

就労移行支援事業についてもっと詳しく知りたいという方は、サービス内容を下記コラムにまとめました。併せてご参照ください。

関連リンク

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつ病や発達障害などの人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、通える範囲にお住まいであれば、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

Q2.履歴書や面接で障害のことを話さなくても問題ない?

履歴書や面接で障害のことを話さなくても問題ない?

クローズ就労を望んでいる場合、自ら積極的に障害をオープンにする必要はありません。

ただし、質問されたのに正直に答えなかったり、病歴を詐称したりすることはできるだけ避けるようにしましょう。

法律的には「本当のことを言わなかった」ことを処罰されることはないのですが、職場によっては、採用後に虚偽の申告が発覚すると解雇につながる可能性も否めませんので、注意してください。

なお、クローズ就労における面接での受け応えなど、就職活動全般でお悩みの方は、前項の就労支援機関などに相談しながら、全体的な方針やエントリー先ごとの回答を作成することをオススメします。

まとめ:あなたに合った就労枠で安心して働きましょう

まとめ:あなたに合った就労枠で安心して働きましょう

クローズ就労のメリット、デメリット、就職先の選び方について徹底解説してきましたが、あなたが就労形態を検討する上で役立つ情報はあったでしょうか?

就労枠を決める際に大切なのは、ご自身の障害の程度や症状の波をよく理解して検討すること、そして周囲の人や支援機関を適切に頼ることです。

特に精神障害をお持ちの場合は、おひとりでは気付きづらい障害特性や体調のサインというものがあります。

それを知った上であなたに合った就労枠を選ぶことが、安心して働きつづけるための秘訣です。

これまでに解説してきた知識を参考に、あなたにあった就職先を探してみてください。

本コラムがクローズ就労での就職を考えている人の助けになれば幸いです。

よくある質問

クローズ就労のメリットは何ですか?

一般論として、次の3点が挙げられます。「給与水準が比較的高い」「求人数や職種が豊富である」「キャリアアップしやすい」。詳細はこちらをご覧ください。

クローズ就労の注意点は何ですか?

一般論として、次の3点が考えられます。「障害を隠すことで不安が生じる」「障害への配慮を受けられない」「就職先と支援機関の連携したサポートが得られない」。詳細はこちらをご覧ください。

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

Amazon
翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

執筆寺田淳平

てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

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