発達障害者の雇用について、当事者に向けて、最新状況・就職活動のコツ・サポート団体などを紹介!

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田淳平です。
発達障害の診断を受けた方(またはそうではないかとお思いの方)は、就職について、以下のような悩みを持っていませんか?
- 発達障害に関連した就職活動のコツはあるのか?
- 発達障害者の最新の雇用状況はどうなっているか?
- 雇用側は、応募者のどういった点に注目しているのか?
- 就職活動中や前後に、職場に伝えておくべきことはあるのか?
そこで今回は、発達障害者の就職活動のコツを徹底解説いたします。
実際に3,500人規模の職場で人事を担当していた私自身や、就労移行支援を行うキズキビジネスカレッジ(KBC)の視点から、雇用側の企業が注目するポイントや、就職をサポートしている支援機関も紹介します。
発達障害があって就職・転職活動でお悩みをお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
【本文に入る前に…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2022年7月現在9校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
執筆寺田淳平
てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→
目次
発達障害者の最新の雇用状況
発達障害者を取り巻く雇用状況は、年々、改善されています。
雇用を促す法改正が進むにつれて、実際の雇用数も増加傾向にあるのです。
この章では、そうした最新の雇用状況を確認していきましょう。(参考:厚生労働省※PDF「令和3年3月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになります」、※PDF「精神障害者である短時間労働者に関する算定方法の特例措置Q&A」)
①法改正による雇用増加(法定雇用率と特例措置)

各企業や公的団体には、「法定雇用率」というものが定められています。
法定雇用率とは、「その職場の従業員数に応じて、一定の障害者の従業員を雇用するように定められた割合」のことです。
2018年4月の障害者雇用促進法の改正以来、発達障害を含む精神障害者が雇用義務の対象となり、「法定雇用率」も民間企業の場合で「2.0%から2.2%」に上昇しました。
民間企業の法定雇用率は、2021年3月には、さらに「2.3%」へ引き上げられました。
それらをまとめて、法定雇用率は、2021年3月時点では以下のようになっています。
事業主区分 | 法定雇用率 | 民間企業 | 2.3% |
---|---|
国、地方公共団体等 | 2.6% |
都道府県等の教育委員会 | 2.5% |
②企業側の不安を解消して雇用を促進する特例もある
法定雇用率については、企業の障害者雇用を促す特例もあります。
障害を持つ労働者の算定方法は、次のようになっています。
- 短時間労働者:0.5人
- 短時間以外の常用雇用労働者:1人
2018年4月の改正に伴い、発達障害者を含む精神障害者の雇用につき、以下のような特例措置が取られています(ただし5年間限定)。
- それまで0.5人としてカウントされていた、短時間労働の精神障害者も1人として算定
この特例措置があることで、より少ない人数の雇用で、法定雇用率を満たしやすくなります。
「法定雇用率を満たすための人数(=雇用人数)が減るのに、なんで雇用が促進されるの?」とお思いかもしれませんね。
ですが、特にこれまで障害者雇用に実績のない企業は、次のような不安を抱くことがあります。
- 精神障害者を雇用したことがなくて不安だ
- 最初からフルタイムでは、雇用が難しい
- 必要な配慮や管理手法が整備できるまで、定着が難しそう
そうした不安を持つ企業が、特例によって「より少ない人数で法定雇用率を満たせる」ために、「少人数の雇用からであれば環境も整えていきやすい」などと考えることで、障害者雇用に積極的になれるのです。
そして、特例措置の期限が切れることで、「少人数の雇用」も「もともとの人数の雇用」に変わっていきます。
発達障害の人が就職しやすくなる改正は、今後も続くことが見込まれます。
③発達障害がある大学生・短大生・高専生の雇用~学生数と就職率~

こうした法改正が進んでいる理由の一つに、発達障害があると診断される大学生・短大生・高専生の数が増えていることが挙げられます(参考:独立行政法人日本学生支援機構「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」悉皆調査かつ回収率100%)
(1)発達障害を持つ大学生・短大生・高専生の在籍数(単位は「人」)
年度 | SLD | ADHD | ASD | 合計 | 2017 | 191 | 1,187 | 3,118 | 4,496 |
---|---|---|---|---|
2018 | 213 | 1,522 | 3,426 | 5,161 |
2019 | 231 | 1,883 | 3,781 | 5,895 |
2020 | 222 | 2,116 | 3,951 | 6,289 |
この増加の原因には、近年、発達障害の認知度が上がり、在学中に発達障害の診断を受ける学生が増えたことが一因として考えられるでしょう。
また、就職活動中に発達障害に心当たりを感じて受診する人も少なくありません。
ちなみに、それぞれの就職率は以下のようになっています。
(2)発達障害を持つ大学生・短大生・高専生の就職率(単位は「%」)
年度 | SLD | ADHD | ASD | 2017 | 52.2 | 65.4 | 57.3 |
---|---|---|---|
2018 | 85.7 | 78.4 | 64.2 |
2019 | 61.1 | 67.2 | 57.3 |
2020 | 87.5 | 81.5 | 69.6 |
就職率は、「求職者の発達障害の有無」「発達障害者への支援状況」だけではなく、景気動向や社会情勢にも左右されます。
それを踏まえた上で、就職率は上下しています。
また、一般的には、発達障害を持つ学生の就職に関しては、今後も充実していくと考えられています。
④障害者全体の雇用数は増加傾向にある
学生に限らない、「障害者全体の雇用数」自体は増加傾向にあると考えられています。
厚生労働省は、次のように発表しています。
民間企業(略)に雇用されている障害者の数は(略)、16年連続で過去最高となった ハローワークを通じた「障害者の就職件数」が11年連続で増加しました
上記厚生労働省の資料によると、2019年度の障害者の雇用状況は下記のとおりです。
障害分類 | 雇用数(前年度比) | うち、ハローワークを通じた 就職件数(前年度比) |
身体障害者 | 354,134.0人(2.3%増) | 25,484件(1,357件減、5.1%減) |
---|---|---|
知的障害者 | 128,383.0人(6.0%増) | 21,899件(335件増、1.5%減) |
精神障害者 | 78,092.5人(15.9%増) | 49,612件(1,572件増、3.3%増) |
前年比では、とりわけ、発達障害を含む精神障害者の雇用数が著しく伸びていることがわかります。
⑤2020年度は、新型コロナウイルスの悪影響があった

ただし残念ながら、2020年度は、新型コロナウイルスの影響で、障害者の雇用状況は悪化しています。
ハローワークにおける障害者の就職件数は(略)12年ぶりに減少しました
先ほども触れましたが、雇用状況は、社会情勢によっても大きく変動します。
あなた一人で情報収集を行うのは大変だと思いますので、後述する就労移行支援事業所などのサポート団体の利用をオススメします。
⑥補足:雇用されている発達障害者の障害手帳の等級と疾病など
ちなみに、厚生労働省が5年に1度実施する調査の最新版「平成30年度障害者雇用実態調査」では、以下のような追加情報もあります。
- 従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数82万1,000人のうち、発達障害者数は「3万9,000人」
- 精神障害者保健福祉手帳により発達障害者であることを確認している者が「68.9%」
- 精神障害者保健福祉手帳の等級をみると「3級」が「48.7%」で最多。
- 最も多い疾病は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」で「76.0%」となっている。
発達障害者の人が就職を有利に進める考え方・支援制度
発達障害者の人が就職を有利に進めるためには、有効な考え方(コツ)や支援制度があります。
考え方(コツ)としては、以下の7点が挙げられます。
- 医師やカウンセラーに相談する
- 焦らず治療に専念する(二次障害がある場合)
- 就労移行支援事業所に通所する
- 雇用枠や働き方を変更する
- 職業訓練を受ける
- 特性をカバーする習慣を身につける
- まずはアルバイトから始めてみる
支援制度の例には、次の4点が挙げられます。
- 障害者手帳の取得
- 専門の支援機関の利用(発達障害者支援センターなど)
- 就労移行支援の利用
- 就労継続支援A型/B型での就労
そちらについては、コラム「発達障害で働けない方が頼れる4つの支援〜特性別に向いている職業もご紹介〜」の、「発達障害で働けない人が就労に向けてできる7つのこと」「発達障害で働けない人が頼れる4つの支援」の章に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
このコラムでは、特に就労移行支援についてのみ紹介します。
就労移行支援事業所の概要

就労移行支援事業所では、一般企業への就職を目指す発達障害や病気のある人に向けて、就労移行支援を行なっています。
就労移行支援の主な支援内容は、以下の5つです。
- 生活習慣改善のサポート
- メンタル面のケア
- 専門スキルの講習
- 実際の就職活動の支援
- 職場定着支援(事業所による)
事業所によっては、専門スキルの講習に注力をしているところもあり、業務で活かせる技能だけでなく、資格の取得までサポートを得られる場合も少なくありません。
実際の就職活動の支援では、履歴書の添削や模擬面接に加えて、就職先やインターン先の紹介などことも可能です。
また、就職後の職場定着の支援を行っているところもあります。
就労移行支援の利用によって就職した人には、原則として就職後6か月までの期間は、就労移行支援事業による継続的な支援(フォローアップ)があるのです。(参考:厚生労働省※PDF「就労移行後の継続的な支援(フォローアップ)のあり方)
職場定着の具体的な支援内容としては、一般的な定期面談の他に、就職先での業務内容や業務量の調整などのサポートが受けられます。
実際、障害者職業総合支援センターの調査研究によれば、職場定着支援を受けた人とそうでない人で、1年後の職場定着率に20%近い差が出ています。(出典:障害者職業総合支援センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」)
相談は無料ですので、お近くの事業所をいくつか見つけてみて、支援内容に興味を抱いた事業所に一度、詳細を問い合わせてみることをオススメします。
就労移行支援事業所のさらなる詳細は、コラム「就労移行支援とは?サービス内容から就労継続支援との違いまで解説」をご覧ください。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)も就労移行支援事業所の一つです。気になるようでしたら、お気軽にご連絡ください。
発達障害者を雇用している企業が選考時に注目する4つのポイント
発達障害者の雇用に注力している企業は、選考時にどのような点に注目しているのでしょうか?
この章では、一般的な観点から4つのポイントを紹介します。(参考:木津谷岳『これからの発達障害者「雇用」』)
それぞれのポイントは、完全に独立しているというよりは、それぞれ密接に関わっています。
また、どのポイントについても、あなた一人で考える必要はありません。
前述の医師や就労移行支援事業所など、あなたをサポートする人たちと一緒に考えていくことで、「よりよい伝え方」などがわかっていくはずです。
ポイント①自分の特性を理解できているか

1点目は「自分の特性を理解できているか」です。
発達障害には様々な種類があり、その程度や現れ方にも個人差があります。
面接などで、単に「私にはASD傾向があります」とだけ伝えると、面接担当者は具体的に「あなたの特性」をイメージするのが難しいのです。
逆に、あなたの実状に即して「どういう困り事を抱えやすいか」「どういう業務が得意・不得意か」などを説明することで、採用後のイメージや必要な配慮がわかりやすくなります。
そして、そうした説明をするためには、あなた自身が「障害特性を理解できているか」が重要になってきます。
ポイント②業務を遂行できそうか
2点目は「業務を遂行できそうか」です。
企業などが人を雇用する上では、「業務をこなせること」が大前提です(「職務能力」や「業務遂行能力」とも言います)。
ただしもちろん、「就活・就職の時点では行ったことさえない業務」や、「研修・OJT・随時の知識習得などを通じて、就職後にこなせるようになる業務」もたくさんあるでしょう。
ですので正確には、「現時点で遂行できそうか」というよりも、「就職後に学びながら業務をこなせるようになりそうか」と言えるかもしれません。
就職活動を通じて、次のようなことをアピールできるように、支援者とともに練習していきましょう。
- 自分の能力・スキル
- 能力・スキルが不足していたときに乗り越えた経験
- 募集要項と自分の能力・スキル・今後の目標などがマッチしている理由
なお、特に障害者枠での雇用の場合は、「職務内容・労働時間・勤務地などが採用時から変わらない、ジョブ型雇用(に近い雇用)」もないわけではありません。
ジョブ型雇用は、「業務に合わせて、人を雇用する」とも言えます。
逆に、新卒一括採用などに見られる「雇用した人に、いろいろな業務を充てていく」タイプは、「メンバーシップ型雇用」と言われます。
ジョブ型雇用では、担当業務が「職務記述書(募集要項)」に具体的に記載されていますので、メンバーシップ型雇用よりも、自分の特性や能力に合わせた就労がしやすいでしょう。
ただしジョブ型雇用では「望んでも異動がない」という可能性もありますので、どちらも一長一短です。
いずれにせよ、就職活動の際には、業務内容を理解した上で、役立てられる強みや体験があることをアピールすると有効でしょう。
ポイント③安定した就労ができそうか

「安定した就労ができそうかどうか」も、雇用時に企業が注目するポイントです。
前にも挙げた「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、障害別の平均勤続年数は、下記のとおりです。
- 発達障害者:3年4か月
- 知的障害者:7年5か月
- 身体障害者:10年2か月
発達障害者の平均勤続日数は、比較的短いのです。
それゆえ、発達障害者の雇用においては、「職場定着・安定就労」が課題とされています。
雇用側は、あなたが長く働けるかどうかを懸念しているのです。
「あなたとその職場の相性がよさそうかどうか」は、前述の就労移行支援事業所などを利用すると、事前に確認しやすいと思います。
より具体的な要素を挙げると、1つには「二次障害による精神疾患が安定しているか」は重要になります。
容体が安定していない状況で就職すると、職場定着の前に欠勤を繰り返すなど、就労が不安定になりやすいからです。
うつ病などの二次障害の不安がある方は、心療内科などで治療を受けて、容体の安定化に努めましょう。
ポイント④頼れる支援者や家族がいるか
前項に関連して、「頼れる支援者や家族がいるか」も、雇用側が気にするポイントです。
発達障害や精神障害を持つ人を雇用する場合、採用担当は調子を崩したときの対応を考えます。
体調を崩して止むを得ず無断欠勤をした日などには、職場の同僚や上司が心配しますので、サポートをしてくれる第三者の存在があると、雇用側としても心強いのです。
もし、フォローしてくれる家族などがいないという場合は、こちらも前述の支援団体に相談することをオススメします。
就職前後に伝えたい、雇用先への要望について
発達障害のある人は、就職の前後に、人事部門の担当者と、労働環境等についてすり合わせをすることが大切です。
すり合わせを行うことで、あなたも、雇用側も、仕事や人間関係をスムーズに進めやすくなります。
ご紹介する例などは、もちろん全員に当てはまるとは限りません。
何度も繰り返しますが、「あなた自身のこと」については、支援者と話しながら、「何をどのように伝えるのか」を考えていきましょう。
①要望のよくある例

発達障害の人が職場に提出している要望については、以下のようなデータがあります。(出典:障害者職業総合センター※PDF『発達障害者の職業生活への満足度と職場の実態に関する調査研究 図表3-43 職場への要望(複数回答)』)
参考にご覧ください。
職場への要望(複数回答。クリックで拡大します)

②要望の具体的な例
前項の要望には、やや抽象的な部分もあります。
例えば、「分かりやすい指示をしてほしい」という要望にしても、「どのような指示が分かりやすいか説明しづらい」という人もいるでしょう。
以下に発達障害の特性に合わせて、就職先に伝えておくとよい点を例示しますので、参考にしてください。(参考:『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』)
③自分の特性は、しっかり伝えた方がよい

「就職前に特性や要望を伝えると、不採用になるのでは」ないかと心配な方もいるでしょう。
その可能性はないわけではありませんが、「特性や要望を伝えたから不採用とする職場」の場合、特性や要望を言わずに採用されても、苦労するであろうことは容易に予測できます。
よって、逆説的かもしれませんが、「伝えた上で不採用になったなら、その方がよかった」と考えることができます(伝え方には工夫が必要ですが)。
逆に、得意・不得意などを理解した上で雇用する職場の場合は、就職後の苦労もより少ないと考えられます。
また、あらかじめ得意・不得意や必要な環境を伝えておくことは、自分の特性をきちんと把握しているというアピールに繋がります。
あなたの方から「こういう環境・配慮があれば、パフォーマンスを発揮できる」と伝えておくことで、人事担当も、どのような態勢を整えればいいかがわかりますから、ミスマッチを減らせます。
なお、就労移行支援事業所などを利用する場合は、面接時に支援者が加わることが可能なケースもあります。
就職活動前に考えたい、特性別の仕事の向き・不向きについて

発達障害の人には、向いている可能性がある職業があります。
詳細は、コラム「発達障害で働けない人が頼れる4つの支援〜特性別に向いている職業もご紹介〜」の「発達障害で働けないという方へ:特性別に向いていると考えられる職業」の章をご覧ください。
ただし、向いている・向いていないは、各人の特性や性格によっても異なります。
それゆえ、ご紹介する職業は、必ずしも「あなた」に向いているとは限りません。
上記コラムでご紹介する内容は、「発達障害でも向いている仕事はある」という安心材料にしていただいた上で、実際のお仕事探しの際には、あなたの特性に詳しい医師や支援者にアドバイスをもらいながら、就職活動をすることをオススメします。
発達障害の概要
ここまでは、発達障害者の就職活動のコツについて解説してきました。
この章では、改めて発達障害について説明します。(参考:村上由美『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』、姫野桂『発達障害グレーゾーン』)
①発達障害とは、先天的な脳機能の偏りのこと

発達障害とは、先天的な脳の機能の偏りによって、目立つ特性を持ち、社会生活やコミュニケーションに困難が生じている状態を言います。
また、「発達障害」は、病気ではありません。
発達障害に伴う、日常生活などにおける「困難」は、過ごし方の工夫などで対策できますので、ご安心ください(服薬が効果的な人もいます)。
②発達障害の、主な3種類
2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の定める診断基準『DSM-V』によると、主な発達障害の種類として、以下の3つを挙げることができます。
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- ASD(自閉症スペクトラム障害)
- LD(学習障害)
上記に加えて、発達障害の場合には、学童期や社会人生活での人間関係に困難が生じるケースが多く、ストレスを抱え込むことで、精神疾患を患いやすい(二次障害)とも言われています。
ADHD・ASD・LDのもう少し詳しい内容については、コラム「発達障害で働けない人が頼れる4つの支援〜特性別に向いている職業もご紹介〜」の、「代表的な3つの発達障害」章をご覧ください。
③発達障害かどうかは、医師だけが診断可能

「発達障害かどうか」は、専門医のみが判断できます。
「自分が発達障害かどうかを疑っている」段階の人は、医師の診断を受けるかどうかも含めて、各種支援団体への相談をオススメします。
病院で「発達障害である」と診断された場合、それは変更できません。そのために診察をためらう方もいます。また、状況によっては、診察・診断が不要な場合もあるでしょう。その上で、ご自身で「診察は受けなくていい」と判断するよりも、支援団体と話して方向性を考えた方が、もっとよい結論が見つかりやすくなります。最初の相談先が医師かどうかは問いませんが、ぜひ「詳しい人」と話をしてみてください。
なお、発達障害のために取得できる障害者手帳は、通常は精神障害者保健福祉手帳です。
障害者手帳の詳細は、コラム「障害者手帳のメリットとは?具体例、注意点、申請手順を徹底解説」をご覧ください。
④発達障害の重複とグレーゾーンについて
発達障害は、ADHD・ASD・LDなどが重複して現れる場合があります。
一人の人の中に「ASDとADHD」や、「ADHDとLD」など、複数の特性傾向が組み合わさっているケースがあるのです。
どの特性が強いかも含めて個人差があります。
また、近年では、検査を受けたものの、診断基準を満たさずに発達障害の確定診断が下りない「グレーゾーン層」と呼ばれる人もいます。
グレーゾーン層の方々は、次のような状況になりやすいとされています。
- 確定診断はないのに、特性と、特性に伴う困難は確実にある
- 確定診断がないために、困難解消のサポートを受けづらい
就職についても、次のようなケースがないわけではありません。
- 診断がないため、福祉サポートを受けられないことがある(必ず受けられないわけではない。サポート団体の例は前述の「発達障害者の人が就職を有利に進める考え方・支援制度」)
- 診断がないため、同僚や上司の理解を得づらい
- 障害者手帳を所持できないため、障害者枠での就職ができない
参考として、特に「グレーゾーンの人の就職・仕事」の詳細は、コラム「発達障害グレーゾーンの人へオススメの仕事術、仕事探しのコツを徹底解説!」をご覧ください。
発達障害の人は最新の雇用状況を理解して、就職活動を有利に進めましょう

最新のデータを使って、発達障害のある人の雇用状況や、採用企業が注目するポイント、就職を有利に進めるコツなどを解説してきました。
就職活動をする上で大切なのは、あなただけで全てを解決しようとしないことです。
ご家族などはもちろんのこと、あなたが頼れる支援団体はたくさんあります。
専門的な見地から、あなたの障害特性や、現在の就職事情に沿ったアドバイスをもらえる可能性が高いですので、ぜひ、そうしたサポートを利用してください。
この記事が就職活動に悩む発達障害の方の助けになれば幸いです。
【最後に改めて…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%
発達障害者を雇用する企業は、選考時にどこに注目しているんでしょうか?
一般論として、次のようなところに注目しています。(1)自分の特性を理解できているか、(2)業務を遂行できそうか、(3)安定した就労ができそうか、(4)頼れる支援者や家族がいるか。詳細はこちらをご覧ください。
就職前後には、雇用先に何を伝えたらよいのでしょうか?
具体的な例としては、ASDの人は、「指示は、口頭ではなく図や表などの形を要望する」などが考えられます。他の例も紹介しますので、詳細はこちらをご覧ください。