発達障害のある人のためのライフハック集 シチェーション別(モノ・情報・考え方)に体験談とあわせて解説 | キズキビジネスカレッジ  

発達障害のある人のためのライフハック集 シチェーション別(モノ・情報・考え方)に体験談とあわせて解説

発達障害のあるあなたは、下記のような困りごとに悩むことはありませんか?

  • 提出が必要な書類を一人だけ忘れて焦る
  • 友達との約束の時間ギリギリに家を出て結局遅刻する
  • 新しい仕事を振られるたび、対応に戸惑う

そんな発達障害のある人が日常生活を営む上で、大切になるスキルは、発達障害の特性に関わるライフハックかもしれません。

ライフハックとは、「丁寧な生活や仕事をするための基礎的な技術」のことです。

前述の困りごとがあるある話として笑いごとですんでいる間はライフハックが必要ないかもしれません。

一方で、「笑いごとですまなくなってきているので、もうそろそろ本格的に対策をしたい」「他の人がしているライフハックをもっと知って自分の生活に活かしていきたい」と思うのであれば、発達障害の特性に関わるライフハックを身につけるといいでしょう。

この記事では、発達障害のあるあなたのために、必要なシチュエーションを「①モノ」「②情報」「③考え方」の3つに分けて、困りごとの例とともに具体的なライフハック術をそれぞれ解説します。

あわせて、発達障害の当事者である筆者や同じ障害で苦労している人たちが実践しているライフハック術を体験談として紹介します。

ライフハックは、自分の困っていることに照準を合わせて考える必要があるため、他の人の事例がそのままスライドして使用できないことも一部あります。

ただ、考え方のポイントを抑えておくことで、困りごとに対応する「環境づくり」を自身や周囲とともにつくり上げていくことができるようになるかもしれません。

あなたの生活に役立てば幸いです。

モノに関するライフハック:忘れ物など

物について:忘れ物など

まずは、「モノ」に関する困りごとから解決策を提示します。

モノに関する困りごとの例:モノがなくなりがちなど

「モノ」に関する困りごとの例を紹介します。

  • モノがなくなりがち
  • 忘れ物をする
  • 置き忘れをする

モノに関するライフハックの目的:忘れ物対策など

「モノ」に関するライフハックの目的を紹介します。

  • 忘れ物対策、整理整頓

モノに関するライフハック術:持ち物をセット化するなど

ここからは、モノに関するライフハック術を紹介します。

ライフハック①持ち物をセット化する

出かける前に「定期・お財布・携帯の3点セット」を持ったかどうか確認する。きちんと確認することで、忘れ物が減る。

電車を使わない人は「定期」の代わりに「車のカギ」などにする、他に必要なもの(例:腕時計)があるなら加えるなど、自分が必要な物と数字を決めておく。

ライフハック②モノの置き場を決める

眼鏡などよく使うものは、置き場を3か所程度決めておくことで、なくすことが減る。

例:洗面所の台・リビングのテーブル・寝室のデスクなど

ライフハック③移動中もモノの持ち方を決める

電車の網棚や車の後部座席など、移動中に何となくモノを置かない。カバンは必ず手に持つ(助手席に置く)など、移動中も定位置を決めておくことで、置き忘れを防げる。

モノに関するライフハック術の考え方:モノをペットのように扱う

モノをペット(生き物)のように扱う
  • ペットの家はここ、と決めて、そこになければ違和感を感じるようにすると、忘れ物や置き忘れが格段に減る。

情報に関するライフハック:予定の記憶など

情報について:予定の記憶など

次に、「情報」に関する困りごとの解決策例を提示します。

情報に関する困りごとの例:必要な情報が出てこない

「情報」に関する困りごとの例を紹介します。

  • 予定を忘れて、やるべきことがわからなくなった
  • スケジュールの管理ができない
  • 資料がちらばっていて、必要なときに必要な情報が出てこない
  • 生活リズムの崩れ

情報に関するライフハックの目的:思考の整理など

「情報」に関するライフハックの目的を紹介します。

  • 思考の整理
  • 情報をシンプルにする
  • まとめる工夫をする

情報に関するライフハック術:スケジュールを書き出すなど

ここからは、情報に関するライフハック術を紹介します。

ライフハック①スケジュールを書き出す

情報(スケジュールなど)は、時間別、目的別、場所別などに分類して全て書き出す。やるべきことが一目瞭然でわかるようになる。

手帳形式の年間予定表、Evernotegoogle alertTaskpediaリマインくんなどのアプリガジェットが便利。書いた内容にの追加・削除・変更が生じるたびに更新する。

ライフハック②自分の毎日を記録する

自分の毎日やルーティンを1冊のノートに記録する。自分の一連の動きや流れが確認でき、どこで『失敗』しがちなのかがわかる。(参考:『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』、『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』)

ライフハック③料理は具だくさんスープで

料理の手順がややこしいなら、具材をたくさん入れたスープ料理をつくる。簡単にできて一気に栄養が取れる。アルミホイル料理、冷凍、漬け置き料理も時短になる。

ライフハック④洗濯物は段階を踏んで

洗濯物の片付けがめんどくさくて手をつけられないときは、まずはしまうことだけを行う。干しっぱなし状態(=全く手のつかない状態のままにしておくこと)を防げる。後で時間があるときに畳む。

情報に関するライフハック術の考え方:情報を見える化する

身体知性に合わせた生活水準を保つ
  • 心、身体、どちらかが疲れたら、言語性=動作性の感覚を合わせることを意識してみる。
情報を見える化・一元化・簡略化する
  • 言語性IQと動作性IQの凹凸を考えて、動作性IQに合わせて生活を営む工夫をする。 簡単に言うと、「頭で考えながら(考えてから)行動する」のではなく、「これまでの自分の行動パターンを分析してから行動する」イメージ(次項「考え方や在り方」とも重複します)。 動作性IQ(PIQ)とは、ウェイクスラー試験(通称WAISⅢ)において、動作性能力や視覚-運動処理過程の能力を測定する指標のこと。言語性IQ(思考)に合わせて生活をしようとすると計画倒れを起こすので、動作性IQ(身体)に合わせて生活をする。

考え方に関するライフハック:新しい出来事への対応など

考え方や在り方について:新しい出来事への対応など

最後に、周囲から理解されにくい「考え方」に関する解決例を提示します。

考え方に関する困りごとの例:新しい出来事に戸惑うなど

「考え方」に関する困りごとの例を紹介します。

  • 新しい出来事に毎回戸惑う
  • 何事にもどう考えてよいのか基準がなくて困っている、いつも自分の判断に自信が持てない
  • 思い込みや勘違いから、コミュニケーションの問題が発生しがちである
  • 悩みや思考のループから抜け出せない

考え方に関するライフハックの目的:思考の型を見つけて対応しやすくする

「考え方」に関するライフハックの目的を紹介します。

  • 自分の思考の型やパターンを見つけ出し、出来事に対応しやすくする

考え方に関するライフハック術:思考・行動のパターンを見つけるなど

ここからは、考え方に関するライフハック術を紹介します。

ライフハック①思考・行動のパターンを見つける

よくある場面(朝の準備、対人関係など)から成功・失敗パターンを見つけ出し、メモをしておく。詳細に書くことで、自分にとっての成功パターン、失敗パターンを見つけ、成功対応で行動しやすくなる。

例:仕事で新しく会う人に対して、先に○○に注目すると●●のことを忘れがちだが、●●に先に注目すると○○を忘れない

ライフハック②二軸思考の癖をつける

価値判断の場面や新たな出来事に対して、「好き・嫌い」、「快・不快」等の2択で考える習慣をつける。

二軸思考で考えるようにすると、「好きな場合は、さらにこう行動すると失敗が減る」「嫌いな場合は、さらにこう考えると今後の役に立つ」などの「次の一手」が見えやすくなる。

ライフハック③物事をよく観察(見る・観る・診る)し、事実ベースで考える

「自分の感情」と「事実」が同じではないことを知る。客観的に行動でき、生活しやすくなる。

例:「朝、隣の席の人に挨拶したが返ってこなかった。自分は嫌われているに違いない」

→「朝は挨拶が返ってこなかったけど、昼には普通に話しかけてきた。朝は、ボーッとしていたり、何か考え事をしていたりで私の挨拶に気づかなかったのかもしれない。私が嫌われていると決めつけるのは早計だ」(事実と感情を分ける方法は、書籍『メモの魔力』が参考になる)

ライフハック④自分の考えを文章にすることで見える化してみる

発達障害だと、何か出来事(問題)があると思考がそこへ一点集中しがちだが、周辺視野を拡げてぼんやりさせてみる。すると、そこに答えが落ちていたりする。

例:「私は忘れ物をしがちでダメな人間だ」

→「忘れ物をしやすいという自覚があるので、きっと対策もできるはず。自分だけで悩まず、同じような人に対策法を聞いてみよう」

書けないときは、自分の見えるスクリーンを拡げるイメージで物事を見直してみる。

例:「カギのかけ忘れ」

→「ドアのイメージ」

→「ドアに自分用の注意書きメモを貼ればよいかも」

考え方に関するライフハック術の考え方:感覚などを適切にアウトプットする

「感覚や、自分が今考えていること」を一度アウトプットし、見える化する
  • 画像認識によるディープラーニングなど、AIが学習していく過程もイメージとして参考になる

発達障害当事者のライフハック体験談

この章では、筆者以外の「KBCの利用者さん」が行っているライフハックを、体験談の形で紹介します。

スケジュール管理

私は、KBCを通じて、スケジュール管理のライフハック術を身につけました。

私はADHDの特性上スケジュール管理が苦手で、スケジュール帳もうまく使えていませんでした。

アナログのスケジュール帳は必要なときに手元にないことが多く、それによくなくしてもいました。

そのことをKBCで話したら、「スマホのカレンダーアプリを使ってみたらどうか」という意見をもらい、それを試してみたらびっくりするくらい上手くいったんです。

現代人である私にとってスマホは大親友で、まずなくしません。

そして入浴時以外常に手元にあるので、必要なときにすぐに取り出せます。今はシンプルカレンダーというアプリを使っています。

ただし、カレンダーに予定を入れていても、日時を忘れることはあります。

それについては、同じくKBCで知った、LINEの「リマインくん」というリマインド機能でカバーすることにしました。

シンプルカレンダーで全体のスケジュールを把握して、予定時間の前にリマインくんにリマインドしてもらう。

これがKBCで身につけたライフハック術(スケジュール管理)です。

まとめ:ライフハックは、自分の生活をより楽しくするための手段

まとめ

以上、現在の困りごとを切り口にそれを解決するためのライフハック術とその考え方や目的を併せて見てきました。

今の自分に活用出来そうなライフハックがあったら、ぜひ取り組んでみてください。

ライフハックは、自分の生活をより楽しくするための手段となります。

あまり気負わずに、まずは、自分がどういう気持ちで毎日を過ごしていきたいのかを決め、その気持ちを達成できるような方法を創造していきましょう。

また、実は同じようなことで悩んでいる人は身近にいたり、同じ問題を解決してきた人がいたりするかもしれません。

一人で抱えている悩みも、少しだけ勇気と希望を持って、他の人に話をしてみると、もしかしたらよい解決策が見つかったり、お互いに試していったりできることもあるでしょう。

解決策はひとつではなく、「あらゆるところ存在している」と気づけるようになることが、ライフハック術を創造していく醍醐味なのではないでしょうか。

この記事があなたのお役に立ったなら幸いです。

よくある質問(1)

発達障害の自分にできる、「物がなくなりがち」へのライフハック法を知りたいです。

例として、「持ち物をセット化する」「物の置き場を決める」「移動中も物の持ち方を決める」が考えられます。詳細はこちらをご覧ください

よくある質問(2)

発達障害の自分にできる、「情報(記憶やスケジュール)」に関するライフハック法を知りたいです。

例として、「スケジュールを書き出す」「自分の毎日を記録する」「料理は具だくさんスープで」「洗濯物は段階を踏んで」が考えられます。詳細はこちらをご覧ください。

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

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