発達障害のある人が一人暮らしを成功させる方法〜困りごと・対策・相談先を紹介〜

こんにちは、発達障害(ADHD)の当事者・伊東里奈(仮名)です。
発達障害のあるあなたは、「一人暮らしをしたいけど、自分にできるだろうか」とお悩みではないでしょうか。
発達障害があり、充実した一人暮らしをしている方はたくさんいます。皆さん、自分の特性を理解して対策をしたり、福祉サービスを活用したりしつつ、一人暮らしを通じて自分に自信をつけていっています。
今回の記事では、「発達障害の方の一人暮らし」について、注意しておくべきポイントと、お悩みへの対策法、相談先を紹介します。この記事を読むことで、「あなたの一人暮らし」も実現に近づくはずです。
グループホームの利用を検討している(一人暮らしとグループホームのどちらがよいか悩んでいる)発達障害の方は、コラム「発達障害者のグループホーム利用についてまとめて解説〜種類/スタッフ/メリット/注意点/利用の流れなど〜」も合わせてご覧ください。
【本文に入る前に…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%
目次
発達障害者が一人暮らしを成功させるために、押さえておくべき4つの観点・ポイント

一人暮らしをすると、いろいろなことを自分で管理する必要があります。
まずは、一人暮らしをする際に押さえておくべきポイント(注意点・困りごと)を、次の4観点別に、「一般的なポイント」と「発達障害の方が特に注意すべきポイント」に分けて紹介します。
- 金銭管理(お金)
- 食生活
- 身だしなみ
- 掃除・整理整頓
多いように見えるかもしれませんが、「自分の状況や特性から、特に注意すべきこと」についてしっかり検討しましょう。そうすることで、「充実した一人暮らし」が近づきます。
なお、それぞれのポイントの「解決策(対策)」は、後の章でまとめて紹介します。(解決策を先に読みたい方は、「発達障害の一人暮らしで役に立つ7つの対策」を先に読んでもOKです)
また、「対策」は、あなた一人で考える必要はありません。「発達障害の方をサポートする様々な団体」と話をすることで、「実際のあなたの一人暮らし」に役立つ具体的な方法などが見えてくるはずです。(サポート団体を先に知りたい方は、「発達障害者の一人暮らしについて相談できる団体」をご覧ください)
一人暮らしのポイント①金銭管理(お金)
一人暮らしを成立させるために一番大切な「お金」の話から紹介します。
(1)一般ポイント:平均費用を知る
一人暮らしで月々かかる費用を紹介します。あくまで平均ですが、一人暮らしでは、最低限「家賃+141,222円」が必要なようです。(金額は、総務省統計局『家計調査 2021年 10~12月期』に基づいています)
- 家賃:地域や条件によって大きく異なる
- 光熱・水道代:10,949円(うち電気代は5,068円、ガス代は2,577円、水道代は2,306円、その他は998円)
- 家具・家事用品:5,580円
- 被服及び履物:5,479円
- 食費:41,478円(うち外食は9,987円)
- 保健医療費:7,745円
- 交通・通信費:19,766円
- 教育費:28円
- 教養娯楽費:16,257円
- その他:33,940円
- 家賃を除く合計:141,222円
「実際のあなた」にどれくらいのお金が必要なのか、検討してみましょう。
年間の家賃が「年収の20~25%」であれば、家賃以外の支出を捻出しても貯蓄に回す資金を残せるギリギリのラインとなる場合が多いとのことです。(参考:三菱UFJ銀行『家賃の適正予算はいくら?あなたの年収から考える適正家賃』)
家賃と公共料金(電気代・ガス代・水道代)の支払い方法には、一般的に、次の2つがあります。
1:都度、送られてくる支払用紙を持って、コンビニなどで支払う
2:口座やクレジットカードからの自動引き落とし設定をする
(2)発達障害ポイント:衝動的な買い物などをする

ADHD傾向のある方に多いのですが、本当は必要ないのに「ほしい」と思ったものを衝動的に購入する(必要・不要をよく検討せずに購入する)ことがあります。特にストレスがあるときは、衝動性を抑えられずに後先考えない行動を取る、ということが起こりがちです。
また、「自宅に何があるかを覚えておらず、同じものを購入する」ということも見受けられます。
さらに、クレジットカードで支払っていると、「今月どれくらい使っているか」をその場で確認できず、結果として支払いが予想外の金額になった、という人も多いです。
(3)発達障害ポイント:家賃や公共料金を払い忘れる
「払い忘れ」は、自動引き落としではなく、自分で支払う方法を選択している場合にありがちなことです。
日々の生活に追われ、公共料金の支払用紙が届いても後回しにしたり、届いていても気づかずに後から督促状が送られてきたり、ということが発生します。
一人暮らしのポイント②食生活
一人暮らしでは、食事も自分で用意します。日々の食事をどのように摂るのか、想像してみましょう。
自炊か、惣菜か、外食か。栄養バランスは考える必要がありますが、自由度が高いのが一人暮らしの食生活の魅力ですね。
①一般ポイント:自炊レシピは豊富にある
一般論としては、節約や健康のためにも自炊はオススメです。
自炊のためのレシピは、「クックパッド」、「クラシル」、「白ごはん.com」のようなウェブサイトやアプリがあったり、YouTubeで多くの方が自身の調理方法を紹介していたりと、豊富にそろっています。
②発達障害ポイント:自炊をしようとしても続かない

自炊のためには、調理方法に合わせた道具や材料などをそろえたり、洗って片付けたりなど、管理を大変に思うことがあります。
料理自体も、洗う、皮を剥く、切る、煮炊きするなど、やることがたくさんあります。また、レシピにある「コショウ 適量」などの曖昧な表記に戸惑い、料理のハードルを高く感じることもあります。
発達障害の特性によっては、こうした「大変さ」は、発達障害のない方に比べて「自炊が続かない」という状況につながりやすいのです。
ですが、面倒だからと食べるものがパンや米などのみになると、栄養も偏り、体調不良につながるでしょう。
③一般ポイント:外食は(予想外に)高い
外食をすると、自炊の負担は減ります。しかし、一般的には自炊よりも出費は増えるでしょう。
下記の食事内容で、平日5日間・1か月(4週間)の食費を想定してみましょう。
- 朝食:コンビニのおにぎり(120円)
- 昼食:コンビニの弁当(600円)
- 夕食:ファミレスのセット(メイン500円、セット400円、ライス100円)
- 1日:120円 + 600円 + (500円 + 400円 + 100円) = 1,720円
- 1週:1,720円 × 5日 = 8,600円
- 1月:8,600円 × 4週 = 34,400円
平日朝昼晩の食事だけで、1か月に約3.5万円が必要になります(参考として、先ほど紹介したように、外食の平均費用は9,987円です)。飲み物代と土日分は計算に入れていないので、実際にはさらに必要でしょう。また、栄養バランスも考える必要があります。
外食のコストが高いこと自体は、発達障害の有無は関係ありません。また、収入によっては、ある程度の外食費が発生しても問題ないかもしれません。しかし、発達障害の特性によって金銭管理に苦手意識があると、「『思っていた以上に』外食費を使っていた」という状況が発生しえます。
④発達障害ポイント:食べられるもの(栄養)が偏る

自炊でも外食でも、発達障害の特性に伴って、食べ物(栄養)が偏りやすいのも注意点かもしれません。
例えば、「調理が楽で味が好みだから」とインスタント麺ばかり食べると、ビタミンなどの必要な栄養が不足するでしょう。
「野菜やソーセージなどを切ってインスタント麺に加える」など、作業を1つ2つ増やせばよいかもしれませんが、特にADHDの方は、その「1つ2つ増やす」が苦手な場合もあります。
また、特にASD傾向があれば、「好きな食べ物を優先」というレベルを超えて、「限られた物しか食べられない」という特性を抱えていることもあります。
一人暮らしのポイント③身だしなみ
社会人(場合によっては学生も)に求められるTPOスキルの一つである身だしなみ。実際にかかる費用も含めて見ていきましょう。
①一般ポイント:毎日行うべきことを知る
特に社会人なら、服装、髪や肌のお手入れなどで清潔さを保つ必要がありますが、やるべきことは多いです。
ちなみに、単身世帯で理容関係の平均費用は、以下のようになっています。(出典:総務省統計局『家計調査 2021年 10~12月期』)
- 理美容サービス費:2,789円
- 理美容用品:2,909円
②発達障害ポイント:毎朝、着る服に悩む

TPOに合わせた服を考えて用意するのが苦手なのも発達障害の特徴です。
「ビジネスカジュアル」など、本人に服装の判断を委ねられると、自分自身の客観視が難しい発達障害当事者には厳しい部分もあります。場違いな服を着て浮いていても、誰も教えてくれなければどうしようもありません。
また、感覚過敏のある方ですと、着られる服が限られるでしょう。「女性はストッキングとパンプスを履く」「男性はスーツにネクタイで革靴を履く」などの(暗黙の)ルールがある職場もありますが、それらの感覚が苦手な人もいます。
③発達障害ポイント:シワや毛玉などでだらしなく見える
服の管理ができないと、服にシワがよったり、毛玉がついたりします。ハンガーにかけたり、アイロンをかけたり、ブラシで毛玉を取ったりしなければなりません。
ですが、発達障害の特性によって、それらの作業のハードルが高く感じやすい傾向の方もいます。また、「シワがあること」などに気づかず、他の人から「だらしない」と思われることもあります。
夜遅くまで起きていて、翌朝起きる時間がギリギリだと、どうしても服装まで気が回らない、という人もいるでしょう。
一人暮らしのポイント④掃除・整理整頓
日常的には、部屋で掃除機や雑巾をかけたり、浴室やトイレを綺麗にしたり…、ということがあります。それ以外にも、何をしないといけないのか見ていきましょう。
①一般ポイント:掃除する場所を知る

家の広さにもよりますが、掃除しなければならないところは、居間、台所、風呂場、洗面所、トイレ、窓、ベランダなどなど、意外と多いです。夏場は、油断をすると水が溜まりやすい場所にカビが生えたりなんてことも。
また、自治体ごとに出すゴミの種類が曜日で決まっていて複雑なため、混乱することもあります。ゴミを出し忘れて放置し、ゴキブリやコバエが出る場合には、殺虫剤も必要になるでしょう。
②発達障害ポイント:整理整頓ができない
整理整頓は、「生活のしやすさ」や「部屋をきれいに保つ」などのために、もともと大切です。うまくいかないと、「どこに何があるかわからない」「この前しまった書類がどこにあるか忘れた」といった問題も起こります。
また、掃除や片付けをするためにも、ある程度のスペースを確保しなければなりません。衣類、カバン、本などが床やベッドの上に散乱していると、掃除はなかなか難しいです。
そして、発達障害の特性に伴って、整理整頓ができないというのはよく聞く話です。他の人が聞いたら「なぜ?」と困惑される、次のような状態は日常茶飯事ではないでしょうか。
- 必要な書類が見当たらない
- 使いかけのハンドクリームが洗面所から3つも出てきた
- 調理器具を適当に引き出しにつっこんだら開かなくなった
③発達障害ポイント:ゴミ出し日を忘れる

「決まった曜日に決まったゴミを捨てる」というのも、発達障害特性の人は苦手なことが多いです。出し忘れたり、後回しにしたりして、かなりゴミが溜まってから慌てて捨てることも。
スケジュール管理が元々苦手な場合、これは大きなネックになるでしょう。
④発達障害ポイント:掃除の途中で他のことに興味が出て続かない
いざ「掃除をやろう」と気合を入れて掃除を始めても、実は想定外な伏兵が自分の中にあります。
特にADHD傾向のある人に多いのですが、「他のこと」が気になって、掃除を途中で止めることがあるのです。
例えば、散らかった本を整理しようとして、どの本が必要か、どの順番で本を並べるべきか、と本を読みながら取捨選択しようとします。すると「あ、この本面白い!」と本を読み進めて、気づいたら1時間くらい経過していた……ということはありませんか?
↓参考:この記事の運営元・株式会社キズキ(キズキビジネスカレッジ)の執行役員で、発達障害の当事者である林田絵美による「なぜか部屋の片づけが途中で終わる」ことの図解
図解「なぜか部屋の片づけが途中で終わる」 pic.twitter.com/uc3bPtrlhr
— 林田絵美|キズキ執行役員 (@lin_douob) September 10, 2019
発達障害の一人暮らしで役に立つ7つの対策
ではいよいよ、発達障害の方が一人暮らしをする上で、可能な限り困りごとをなくしていく対策(方法・解決策)をご紹介します。事前に何をするか決めておくと、案外すんなり解決できることは多いんです。
対策・解決策を身につけることで、発達障害者の一人暮らしはより充実したものになっていきますので、ぜひご覧ください。
「一人暮らしで利用できる対策」ではありますが、実家やグループホームでも利用できます。一人暮らしを始める前に、試しにやってみることをオススメします。
あなたの特性によって、ここにご紹介する以外の対策ももちろん考えられます。後で紹介する相談先と話し合うことで、「実際のあなたの一人暮らし」は成功・充実に近づきます。
対策①スケジュール管理帳やアプリを使う

「公共料金の払い忘れ」「ゴミの出し忘れ」といった「○○忘れ」が多発するのが発達障害(特にADHD傾向)の「あるある」です。
この対策として、スケジュール帳やアプリを使って「月・水・金:燃えるゴミ」「31日:ガス代」などと記入して確認できるようにしておく方法があります。
また、「日付」だけではなく、「その日のタイムスケジュールを作成して、その中にゴミ出しなどの予定を組み込む」と、より効果的な場合もあります。
リマインダー機能で予定が近づくと知らせてくれるアプリもあります。ちなみに筆者がよく使用しているのはGoogleカレンダー(iPhone版/アンドロイド版)です。
また、給料の振り込み日、家賃・公共料金・クレジットカードの引き落とし日なども入力しておくと、いつお金が入るか、出るかを逆算して、収支の調整に役立てることもできます。
「○○忘れ」はもちろん、衝動的な買い物や外食による家計の圧迫もだいぶ抑えられるはずです。
対策②家計簿をつける
家計簿をつけて、お金を「見える化」しましょう。1か月にどのくらい出費があるかを確認できるようにすることで、「自分はこれにお金を使いがち」と傾向を分析でき、対策が取りやすくなります。
支出の種類ごとに色分けされて見分けやすくなっている紙タイプの家計簿もあります。書く作業が面倒な方は、スマートフォンのアプリや、パソコンのExcel機能もオススメです。レシートを見ながらポチポチ打ち込むだけなので、ストレスはだいぶ軽減されます。
まずは「どうすれば無理なくできるか」ということに重点を置いてやっていきましょう。
筆者は、Excelで家計簿を管理しています。まとめ方はかなり大雑把で、家賃、公共料金、医療費、クレジット代、交通費、給料などは費目を書いて、食費・理美容費・娯楽費などは面倒なので「雑費」でくくっています。これには筆者なりの理由があります。厳密に細かく分け過ぎると、結果的に家計簿をつけること自体が嫌になるからです。
対策③カードはプリペイドまたはデビッドにする

カード類は、手持ちの現金以上の支払いをしなければならない場面に役立つため、持っておくと便利なことは確かです。
そこで、「支払い状況がわからなくなりがちで、上限まで利用できるクレジットカード」ではなく、プリペイドカードやデビットカードを使用する方法が活かせます。
使える金額をあらかじめチャージしておくカードです。チャージ金額がなくなれば、使用できなくなります。
使ったその場で口座からお金が引き落とされるカードです。ATMなどで口座残高を確認すれば、「今月はあとどのくらい使用できるか」がわかります。
対策④調理しやすい野菜・冷凍野菜・缶詰を使う
自炊のハードルを下げる方法としては、「調理しやすい野菜を使用して、少しでも手間を省き、栄養も摂れるようにすること」があります。
最近は、手間が省けて、保存がしやすい野菜もかなり増えています。
栄養のあるおかずを自炊しておけば、節約にもなります。そして何より、「自分で調理した」という達成感が自己肯定感に繋がります。
栄養が取れ、節約になり、自信に繋がる、というまさに一石三鳥です。「少しやってみようかな」と思ったら挑戦してみるのもいいかもしれません。
レタスの葉を手でちぎり、プチトマトのヘタを取り、器に適当に盛った後、缶詰のコーンやツナを乗せれば、簡単にツナサラダができ上がります。
もやしと冷凍ホウレンソウをフライパンにそのまま入れて炒め、醬油をかければ炒め物になります。
対策⑤1週間の服の組み合わせを決めておく

平日5日間職場に着ていく服は何がよいかわからない、朝考えるのが難しい場合、パターンを決めて置くとだいぶ楽になります。
職場に「具体的にどんな服装がOK・NGか」を細かく確認しておきましょう(私服勤務や学生の場合は、「一般的に問題ない服装」を友人に聞いたり、「着回し」の紹介をしている本やWebサイトを見たりしましょう)。
OKな服装がわかったら、着ていく服の組み合わせを休日中に5通り決めてハンガーにかけておくと、当日の朝は、ハンガーから服を取り外すだけですみます。
対策⑥どこに何をしまうか決める
ものが片付かない(ために掃除ができない)理由は、単純に「どこに何をしまうかが決まっていないから」です。
「なんでここにハンドクリーム?」も「今、しまう場所がないから、いったんここに置いておこう」から、存在を忘れて長期間放置するのが理由です(ちなみにこれは筆者の経験談です)。
どこに何を置いておくか決めておきましょう。
- 書類を整理するために、「公共料金」「家電のトリセツ」「便箋類」など、種類ごとに箱をいくつか用意すると、だいぶ整理しやすくなります。シールで名前をつけてわかりやすくすると、さらによいです。(参考:『仕事&生活の「困った!」がなくなる マンガでわかる 私って、ADHD脳!?』)
そこまで細かくするのが苦手なら(ややパワープレイですが)くくりを大きくして、とにかく仕分けして、「とりあえず、そこに入っている」と目星をつけやすくしましょう。
これで大雑把な物の住所(箱や引き出し等)を決めてから、細かい仕分けを一つずつゆっくりじっくりやりましょう。しまう用の入れ物は箱に限らず、タンスの引き出しなどでも同じやり方ができます。
また、この方法は台所や洗面所でも活用できます。「使い終わったらそこにつっこむ」というルールをつくるだけで、部屋はだいぶ見違えるはずです。
実際に整理整頓をするときには、「本はここに集合!」「ポーチはこっちに集合!」と言いながら(「今、自分は箱に物を入れている」と言い聞かせながら)、なるべく「物の中身」を見ないでつっこんでいます。途中で本を読んで手が止まるなどを避けられます。
この方法は、先ほど紹介した『仕事&生活の「困った!」がなくなる マンガでわかる 私って、ADHD脳!?』の中で、ゴミの仕分け方として使われている方法です。それを筆者は、物をしまうときにも活用している形です。
対策⑦前日に翌日の準備をする

前日の夜に翌日の準備をしておくと、朝の準備が楽になる上に、「○○忘れ」も防げます。
例えば、あなたが勤めているのは「スーツ着用の職場」だとします。翌日は燃えるゴミの日で、水道代の支払い(コンビニ支払い)もしなければならないときには、前日(の夜)のうちに次のようなことを行うのです。
- シャツにアイロンをかけ、ハンガーにスーツ一式を用意する
- ハンガーのすぐそばには仕事で使うバッグを配置し、水道料金の用紙を入れておく
- 玄関に明日捨てるゴミ袋を置き、そのまま持って出て行けるよう準備する
- 朝、朝食や弁当の用意が難しいなら、お皿や弁当箱に食べ物を盛って、レンジで温めればすぐ食べられるようにしておく
- 最後に、スマホのスケジュールアプリに「水道代」「ゴミ出し」など、翌日の予定をアラームで教えてもらえるように設定して完了!
これだけ準備しておけば、朝の作業量が格段に減り、さらには身だしなみや食事まで手が回るようになります。「○○忘れ」だけでなく、着ていく服(綺麗にメンテナンス済み)もすぐに用意できて、身だしなみも整います。
発達障害者の一人暮らしについて相談できる団体

発達障害者の一人暮らしについて、第三者からの支援を受けられる団体を紹介します。気になる団体があれば、お近くにあるか調べてみましょう。
「一人暮らし」だからといって、諸々の悩みなどをあなた一人で抱え込む必要はありません。専門的な知識を持つ人たちに相談に乗ってもらうことも可能なんです。
いずれも、実際に相談に行く前に、「生活や金銭など、どのようなことで困っているのか」をメモなどしておく、スムーズに行きます。
「一人暮らし」と金銭面などで間接的に関係する「障害年金」「自立支援医療」「精神障害者保健福祉手帳」などについても相談できます。
【関連コラム】
『障害年金とは〜Q&Aで、障害年金の内容・受給条件・受給額・働きながらもらえるの?などの疑問にお答えします』
『障害者手帳のメリットとは?具体例、注意点、申請手順を徹底解説』
①自治体の相談窓口
各自治体(市区町村役所)には、福祉相談窓口があるはずです。
その窓口で直接相談できることもありますし、より専門の別の機関・団体を紹介してもらえることもあります(このコラムで紹介する団体以外にも、相談できるところはたくさんありますので安心してください)。担当部署がわからないときは、ウェブサイトや総合窓口で確認しましょう。
都道府県・市区町村が、発達障害の方への支援を外部団体に委託していることもあります(東京都の例:「東京都発達障害者支援センターTOSCA」という団体が、東京都の委託を受けて、「発達障害のある、都内にお住まいのご本人やご家族からの相談や関係機関への支援」を行っています)。
②基幹相談支援センター
障害当事者やその家族のサポートをする機関です。
主に「生活全般における、障害者等の相談、情報提供、助言」や「地域の相談支援事業者間の連絡調整や、関係機関の連携の支援」をしています。
③特定相談支援事業所
障害当事者が自立できるように、市町村が中心となって運営しています。支援が必要な本人や家族がご利用できます。
具体的には、面談などを通じて相談者の状況に合わせ福祉サービスが受けられるよう「サービス等利用計画」を作成し、定期的にサービスの利用状況などヒアリングします。
④一般相談支援事業所
都道府県が指定する相談支援事業所です。
様々な相談に応じる「基本相談支援」に加えて、「地域移行支援」「地域定着支援」も実施しています。
障害者の方が、施設や病院から出て地域生活を送る際に必要になる支援のこと
障害者の方が地域で暮らし続けるための支援のこと
「適職探し」ができる就労移行支援事業所の利用もオススメ

あなたが現在離職中だったり、退職を検討していたりするなら、「(再)就職した後での一人暮らし」のために、就労移行支援事業所の利用もオススメです。就労移行支援事業所とは、「病気や障害のある方の(再)就職・転職を援助する福祉サービス」のことです。
各事業所は、公的な認可を得た民間事業者が運営しています。そのサービス内容は多岐にわたります。
利用の可否は、お住まいの自治体が、下記などに基づいて判断します。
- 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがある
- 18歳以上で満65歳未満の方
- 離職中の方(例外あり)
満たすなら、障害者手帳を所持していなくても利用可能です。
ご自身が利用できるかどうかは、自治体や、各就労移行支援事業所に相談してみましょう。私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)も、この就労移行支援に分類されます(ご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください)。
就労移行支援についてさらに詳しく知りたい方は、「就労移行支援とは?サービス内容から就労継続支援との違いまで解説」をご覧ください。
まとめ〜対策や相談を行えば、発達障害の方の一人暮らしは充実してきます〜

いかがでしたでしょうか。人にも相談しながら、自分ができること、苦手なことを掘り起こして分析し、どうすれば一人暮らしができるようになるか探ってみましょう。
自分の生活をいろんなことを工夫して営むことは、自分に自信をつけられるチャンスにもなります。あなたの一人暮らしが充実したものになるよう祈っています。
【最後に改めて…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%
発達障害の自分が一人暮らしを成功・充実させる対策はありますか?
一般論として、次の7点が考えられます。(1)スケジュール管理帳やアプリを使う、(2)家計簿をつける、(3)カードはプリペイドまたはデビッドにする、(4)調理しやすい野菜・冷凍野菜・缶詰を使う、(5)1週間の服の組み合わせを決めておく、(6)どこに何をしまうか決める、(7)前日に翌日の準備をする。詳細はこちらをご覧ください。
発達障害の自分が一人暮らしについて相談できるところはありますか?
例として、次のようなところがあります。自治体の相談窓口、基幹相談支援センター、特定相談支援事業所、一般相談支援事業所。詳細はこちらをご覧ください。