うつ病の初期症状とは?仕事でうつを感じたときの確認事項10選

就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田です。
仕事をしているときにふと、「これはうつ病の初期症状かもしれない」と感じることがありますよね。
しかし、実際にうつ病かどうかを見分けるのは容易ではありません。
あなたも、下記のようにうつ病かどうかの区別がつかずに悩んではいないでしょうか?
- 仕事をしていたら憂鬱になることくらいあるはず…
- 仕事で落ち込んでもまだ病院に行くほどじゃないはず…
- 気が滅入るのは確かだけど、うつ病かどうかわからない…
そこで今回は、お仕事をしている人向けに、うつ病かどうかを判断するポイントを解説いたします。
ご本人はもちろん、「あの人はうつ病になりかけているかもしれない」と思っているご家族や職場の人の参考にもなるかと思います。
以前の職場でうつ病になった経験のある私の事例とあわせてセルフケアの方法まで紹介しますので、うつ病の初期症状でお悩みの人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
ただし、あくまでも「参考」です。
この記事を読んで「うつ病かもしれない」と思い当たったときは、本当にうつ病かどうか、ケアや治療をどうするかについて、医療機関にきちんと見てもらいましょう。
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監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
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翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2022年7月現在9校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
執筆寺田淳平
てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→
目次
うつ病の初期症状とは?日常生活で見られる10のサイン
うつ病の初期症状は、以下のように3つの側面から確認することができます。
- 身体面
- 精神面
- 行動面
この章では、上記の3つに見られるうつ病の初期症状を合計10個のサインにわけて紹介いたします。
なお、本項目は、厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳 うつ病とは」と、書籍『現役 精神科産業医が教える「うつ」からの職場復帰のポイント[第2版]』を参考にしていますので、うつ病についてもっと詳しい内容を知りたいという人はご参照ください。
①身体面にあらわれる4つのサイン

身体面にあらわれるうつ病の初期症状は、主に4つのサインに分けることができます。
- 睡眠障害:寝付けない、目が覚める
- 慢性疲労:だるい、身体が重い
- 微熱:熱っぽさが続いている
- 身体の痛み:原因不明の頭痛や腹痛がある
上記の4つに共通するのは、「慢性的に続く」という点です。
例えば、疲労であれば休養を取れば通常は解消されるはずです。
頭痛や腹痛も一過性の場合が多いでしょう。
しかし、うつ病の場合、波はあるものの症状が長く続きます。
とはいえ、うつ病以外の疾患による症状の可能性もあるため、身体の痛みなどを感じた際にはまず内科を受診するようにしましょう。
内科を受診して、特に原因が認められない不定愁訴や自律神経失調症などと判断されたり、ストレスの影響であると明言されたりしたら、うつ病を疑ってみてください。
ちなみに私が仕事をしながら「うつ病かもしれない」と思ったときは、上記の4つすべてを初期症状として感じていました。
何度か内科へ通院はしましたが、いつも自律神経失調症としか診断されなかったため、メンタルクリニックを訪れたところ、はじめてうつ病という診断をくだされたのを覚えています。
上記の初期症状をもとに病院へ行っても解決しない場合は、心療内科などにセカンドオピニオンを求めてみるとよいでしょう。
②精神面にあらわれる3つのサイン

精神面で見られるサインとしては、以下の3つを挙げることができます。
- 感情の鈍麻:憂鬱で気が晴れない
- 欲求の減退:食欲や性欲が著しく減った
- 意欲の低下:何もする気になれない
上記の中でも特に注意してほしいのは、3番目の「意欲の低下」です。
うつ病になると、それまで楽しめていた趣味や他人に対する関心をすっかり失ってしまう場合があります。
これは、普段からあまり行動的でなかったり外向的でなかったりするタイプの人には気づきにくい点です。
人によっては「疲れているだけだろう」とか「忙しいから興味を持てないだけだろう」と思って見逃がしてしまうこともあります。
感情や欲求だけでなく意欲も減退していないか、自分の心を注意して観察してみましょう。
③行動面に現れる3つのサイン

行動面に見られるサインとしては、以下の3つがあります。
- ボーっとすることが増えた
- 時間を守れなくなった
- 人との接触を避けるようになった
上記の3点は、自分ひとりではなかなか気づきにくいかもしれません。
特に1と2は、周囲の人がうつ病の初期症状を疑いはじめたときに挙げる筆頭の症状です。
うつ病を疑いはじめたときには、自分に1・2のような傾向が最近ないかを身近な人に尋ねてみるとよいでしょう。
ちなみに2の「時間を守れなくなった」は、うつ病経験のある私の体感としては、時間の感覚が狂ったことに由来するように思われます。
「ボーっとすることが増えた」せいもあるかもしれませんが、気がつくとあっという間に締め切りや約束の時間になって、慌てて支度を始めるといった感覚です。
結果として遅刻が増えるという現象で自覚されます。
仕事で見られるうつ病の初期症状10項目:2つの事例とあわせて紹介

それでは、日常生活とは別に仕事で見られるうつ病の初期症状にはどのようなものがあるのでしょうか?
下記に東邦大学医学部教授の坪井康次先生が監修した『患者のための最新医学 うつ病』をもとに、代表的と思われる症状を10個に厳選してまとめました。
- 物忘れやケアレスミスが多くなる
- 同僚との会話を避けるようになる
- 遅刻や欠勤、当日の休暇連絡が増える
- 体調不良とは別にトイレ休憩などの離席が増える
- 書類整理ができなくなって机上が散らかりはじめる
- 電話の受け答えが緩慢になり沈黙が増える
- 眠気が強く、日中でも朦朧としている
- 自分を責めるような発言が増える
- 話し方に抑揚がなくなり、極端に声が小さくなる
- イライラして投げやりな態度を取ったり揉めごとが増える
上記の10項目の数が多い人ほど、うつ病である可能性が高いと考えられます。
こうした初期症状を放置しておくとどうなるのか、本当にそれは初期症状と言えるのかを判断する材料として、ここからは具体的な事例を見ていきましょう。
なお、これらから紹介する事例は個人の特定を避けるため、趣旨を歪めない範囲で一部事実を変更していますので、ご承知おきください。
事例①初期症状を見過ごしたことで重篤化したケース
事例のひとつ目は、初期症状を見過ごしたことでうつ病が重篤化した、私自身のケースです。
私がうつ病にかかったのは、オーバーワーク(過労)の結果でした。
振り返ってみると、初期症状として、書類整理ができなくなったり、電話応答時にうまく言葉が出てこなかったり、という現象があらわれていました。
ですが、「忙しくて疲れているのだろう」「通常の疲労の範囲だろう」と判断して、まとまった休みを取ることもなく仕事を続けていました。
しかしあるときに、朝起きると身体を動かすことができないほどに疲れ切っていることに気づいたのです。
少し休暇を取ったのですが、この段階までくると、休みを取った後ですら意欲が枯渇してしまい、掃除洗濯といった日常生活にまで支障をきたすようになっていました。
もはやトイレや入浴すら面倒になるほどです。
結果として、1年近い休職を余儀なくされました。
仕事などの社会生活に若干の支障をきたす程度の「軽症うつ」の段階で対処しないと、私のように日常生活にも問題が起きて回復までに時間がかかる場合があります。
逆に言うと、うつ病は上記の初期症状が見られた時点で早めに対処することで、回復も早めになります。
事例②うつ病の初期症状ではなく発達障害だったケース
事例の2つ目として紹介したいのが、うつ病の初期症状だと思っていたら実は発達障害だったというケースです。
以前私のいた職場には、軽度のADHDを抱えているけれど自分では気づいていないという人がいました。
ADHDの症状の代表例として下記のようなものがあります。(参考:田中康雄『大人のAD/HD』)
- 忘れ物やミスが多い
- 時間が守れずに遅刻してしまう
- 整理整頓が苦手で物をなくしやすい
ご覧のとおり、うつ病の初期症状に似たものがありますよね。
私の同僚は、ミス、紛失、遅刻などがあまりにも続くためうつ病を疑って病院に行きましたが、その際に受けた診断結果ではじめて自分がADHDだということに気づいたのです。
その人はご自身の障害を理解した上で仕事の進め方を工夫したり、同僚にADHDを開示することで配慮を受けたりすることで、問題解決に至りました。
上記のように、うつ病の初期症状だと思っていたら、実は発達障害の性質のひとつだったというケースもあるのです。
自己判断で「自分はうつ病になりかかっている」と決めつけて対応せず、適切に医療機関を頼ったことで「自分に合った対応」が見つかった事例としてご紹介します。
うつになる前にできるセルフケア7選
うつに限らず病気のときは適切に医療機関を頼ることが大切ですが、「風邪をひかないために、うがい・手洗いをする」ように、うつ病になる前にできるセルフケアもあります。
それでは、うつの初期症状を感じはじめたときにできるセルフケアにはどのようなものがあるのでしょうか?
この項目では特に有効なセルフケアの方法を7つ厳選して紹介いたします。
①生活リズムを整える

うつ病を予防するために最初にしておきたいことは、「生活リズムを整える」です。
睡眠障害が出るようになると、つい二度寝をしてしまったり、夜更かしをしてしまったりして、生活リズムが乱れてしまいます。日中も眠気を感じることが増えるでしょう。
しかしそれによって生活リズムが崩れてしまうと、意識が朦朧とした中で仕事をしなくてはならないため、ストレスが倍増します。
睡眠不足を感じた際は、こまめに昼寝をすることで補いましょう。
休むことは大切ですが、「休日は不規則に過ごす」のではなく、休日であってもできるだけ平日と同じ生活リズムを保つようにしてください。
②散歩や軽い運動をする

次にオススメしたいのは、「散歩や軽い運動をする」というものです。
これには科学的な根拠があります。
運動をすることで、不安や恐怖感といったうつ病の初期症状を抑える精神伝達物質セロトニンが分泌されるという研究結果が出ているのです。(参考:「Phys Ed: Why Exercise Makes You Less Anxious」)
セロトニンには、精神を落ちつかせるだけでなく、痛みをやわらげる効果もあります。
特に日光を浴びながら身体を動かせば目も覚めて、生活リズムも整ってくるでしょう。
具体的な運動メニューとしては以下の3つがオススメです。
- 近所を10分だけ歩いて帰ってくる
- 10分程度の縄跳び
- 30回だけスクワットをする
上記を行うことで、血流がよくなり、頭が冴えてくるというメリットも期待できます。
ストレスによる憂鬱感を払いたいという人は、ぜひ散歩や軽い運動を取りいれてみてください。
③身近な友達や家族に悩みを話す

セルフケアの3点目は、「身近な友達や家族に悩みを話す」です。
うつ病の初期症状のひとつに、人と話すのが面倒になるというものがありました。
その状態を維持していると、コミュニケーションがますます苦手になって、人と話しづらくなるという悪循環に陥るおそれがあります。
とはいえ、初対面の人といきなり話をするというのは難しいものです。
そこで、仲のいい身近な友達や家族に悩みを打ち明けて相談に乗ってもらうとよいでしょう。
信頼できる人に話してみることで、自分の感情や考えを俯瞰的に見られるようになります。
悩みの解決法が具体的に見つかったり、話すだけで気が楽になったり、悩みが大したことではないと気づいたりして、初期症状が緩和される場合があるのです。
また、声を出すことで、身体があたたまると同時に自然と呼吸が深くなってくるので、心を落ちつけられるという効果があります。
ひとりで抱え込まずに、身近な友人や家族にご自身の状態について相談してみてください。
④冬季性うつ対策として日光浴をする

「日光浴をする」というのも、セルフケアとして有効な手段です。
近年話題にのぼるうつ病の一種として、「冬季性うつ」と呼ばれるものがあります。
冬季性うつは季節性情動障害(SAD)の一種で、秋から冬にかけて抑うつ状態が続くのが特徴です。
要因としては、体内時計が狂う「概日リズム障害」が挙げられますが、根底にあるのは季節変化に伴う日照時間の減少です。
この冬季性うつ病対策としては、日光浴のような光療法が有効と考えられています。
特に女性は男性の3倍近くかかりやすいと言われていますので、日に当たる時間が少なくなっていないか注意が必要です。(参考:Royal College of Psychiatrists「季節性感情障害(SAD)」)
冬季性うつ病対策のためにも、意識的に日光を浴びる時間を増やすようにしましょう。
⑤お風呂に浸かる時間を増やす

5点目は、「お風呂に浸かる時間を増やす」というものです。
湯船に浸かって体温を上げることで、不安や恐怖心を解消することができます。
また、血流が良くなり酸素が頭にめぐるようになることで、うつ病の初期症状として見られがちな「ボーっとする」感覚を軽減する効果もあります。
上述した冬季性うつ病対策としても有効なため、体温の下がりがちな冬などは特に湯船に浸かって温まる時間を作るようにしましょう。
⑥一日にあったことを紙に書きだす

うつ病の初期症状で悩んでいる人は、その日にあったことをぜひ紙に書きだしてみてください。
うつ病になる人は、自分が具体的に何にストレスを感じているのかを理解していないことがあります。
ストレス源がわかっていれば対処が可能ですが、それが認識できていないために行き詰まってしまうのです。
一日にあったことを紙に書きだすことで、自分が何にストレスを感じたのかを把握できるようになります。
医療機関からも治療の一環として日記を書くことを勧められることがあり、一日の出来事を紙に書きだすことは、うつ病対策として有効な手段のひとつです。
抑うつ感にお悩みの場合は、その日に起こった出来事や思ったことを紙に書きだしてみるとよいでしょう。
⑦ストレス源から離れる

疲れているときは、「ストレス源から離れる」ことも大切です。
うつ病の初期症状を感じている人は、自責感もあいまって「問題と向き合わないと」と気負うことがあります。
しかし、常に自分を追い込んでいると、どうしても心身ともに疲れてしまう場面が出てくるものです。
そうした事態を避けるためにも、ストレス源から距離を置くという選択肢を持っておくとよいでしょう。
具体的な方法のひとつに、有給休暇を繋げて休養を取ることが挙げられます。
まとまった休暇が取れないようであれば、煩わしさを感じる人間関係から少し距離を取ってみるだけでもかまいません。
本当に疲れ切ってしまう前に、ストレス源から離れる方法はないかを考えてみましょう。
会社(職場)で活用したい、3つのうつ病対策
2015年12月に労働安全衛生法の一部改正が施行されて以来、ストレスチェック制度が導入されるなど、国が主導するかたちで職業生活面でのうつ病対策が進んでいます。
この項目では、そうした企業で活用できるメンタル対策制度をご紹介します。
ご自身の職場の制度を、ぜひご確認ください。
なお、こうした制度がない場合や、あったとしても同僚などの例から効果が期待できない場合は、セルフケアも行いつつ、次章で述べるように病院を頼りましょう。
対策①産業医面談

労働者が希望した場合には、メンタルヘルスの専門家である産業医の面談を受けることが可能です。
産業医とは、労働者の健康管理に関して専門的な立場から助言や指導を行う医師のことです。
常時50人以上の労働者を使用する事業所に1人以上、3,000人超の事業所では2人以上の産業医を選任しなければならないことが労働安全衛生法に定められています。(参考:厚生労働省「産業医について」)
上記の条件を満たしていれば、あなたが勤めている企業にも産業医がいるはずですので、一度確認してみるとよいでしょう。
ちなみに労働者が希望しない場合でも、後述するストレスチェックで「高ストレス」という結果が出た場合や、一定以上の長時間労働をしている場合には産業医面談を受ける必要が生じます。
面談の結果次第では人事考課や給与査定に影響が出るのではないかと心配されるかもしれませんが、産業医は中立的な立場から診断を行いますので、ご安心ください。
もし企業側から説明を求められても、個人情報保護の観点から共有してよいかを原則ご本人に確認することになります。
料金等も発生しませんので、メンタルに不調を感じるなら、産業医面談を希望するとよいでしょう。
対策②ストレスチェック制度

2015年の労働安全衛生法の改正により、労働者が常時50人以上いる事業所では毎年1回、全ての労働者に対してストレスチェックを実施することが義務づけられました。
ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入し、それを集計・分析することで精神状態を調べる検査です。
(参考:厚生労働省こころの耳「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」)
セルフケアの項目で述べたように、メンタルに不調を抱えていても自分の状況やストレス源を把握できていないということは、往々にしてあります。
ストレスチェックを通じて、ご自身のメンタルの状態を確認するようにしましょう。
対策③メンタルヘルス研修

最後にご紹介するのは、企業ごとに行っているメンタルヘルス研修です。
具体的なメニューは事業所によって異なるため確認が必要ですが、厚生労働省がメンタルヘルス対策に注力しはじめてから、コンプライアンスの一環として研修制度を行う企業も増えています。
基本的には研修会社によるセルフケア講義やラインケア講習が中心になり、たいていは一般社員向けと管理職向けにわかれて実施されます。
メンタルヘルスに不調を抱えている本人だけでなく、職場にうつ病が疑われる人がいる場合の対処や部下への対応など、研修内容によって活用の幅が広がるため、大きな研修効果を期待できるでしょう。
ぜひ社内に研修プログラムがないかを確認してみてください。
悪化する前にまずは病院を頼ることが大切

これまでうつ病の初期症状へのセルフケア及び会社と関連する対応を中心に解説してきました。
この章では、医療機関についてお伝えしておきます。
セルフケアや会社提携の対応も大切ですが、専門医の判断を仰ぐことも重要です(そして次章で述べる休養も重要です)。
うつ病の初期症状を感じたとき、会社に相談先がないとき、会社提携の対応が自分に合っていないと思うとき、病院に行かずに症状が悪化したと感じたときなどには、遠慮せずに医療機関の診察を受けましょう。
うつ病になると、思考力と判断力が鈍ります。
ご自身ではまだ大丈夫だと思っていても、専門家の目から見るとすぐに治療・療養した方がいいと判断される場合があります。
診断を受けた段階で投薬や休職を提案されたときには、素直に従った方がよいでしょう。
医師の診断にどうしても納得できなかったり、処方された薬を服用することに抵抗があったりという場合は、セカンドオピニオンを求めて別の病院へ行くのもひとつの手です。
元の先生と違う方針を示された場合には、あなたが安心して治療を進められそうな方に従ってください。
ただし一般論として、セカンドオピニオンでも治療の方針があまり変わらないようなら、多少納得できないところがあっても、元の方針に従うことをオススメします。
また、代替医療や民間療法ではなく「病院」の治療を受けるという点も重要です。
行こうとしているところがきちんとした専門機関かどうかを確認してから診察を受けるようにしましょう。
仕事に支障が出るくらいにうつ病が悪化したときの3つの対応
次に、うつの症状が悪化したときの対応についてお伝えします。
うつが悪化したときは、病院にもかかりつつ、休養を取ることが大切です。
実際にうつ病になって休職した私自身の回復プロセスを元に書いていきます。
うつ病が悪化した本人だけでなく、似た状況のご家族などの参考にもなるかと思います。
対応①休職を申請する

医師に相談した上で、職場に休職(=有給休暇とは別の、病気療養のための休暇)を申請することをオススメします。
休職する際には診断書が必要になりますので、病院から発行してもらうようにしてください。
休職には、「有給休暇の残数を気にせずに療養に専念できる」という大きな利点があります。
一度、仕事から距離を置いて、気持ちをリセットすることが大切です。
休職にどうしても抵抗があるなら、せめて有給休暇を繋げて1~2週間の休養を取れないかを考えてみましょう。
有給休暇で休む際は、うつ状態であることは、上司や同僚には必ずしも伝えなくて大丈夫です。
うつ病であることを言いたくないのなら、「体調不良で業務に支障が出ているから休みたい」とシンプルに伝えるとよいでしょう。
対応②復職するかを検討する

休職して心身の調子が落ちついてきたら、復職をゆっくり検討してみてください。
この復職というのは、現職への復帰だけでなく、場合によっては転職を検討するという意味も含まれています。
若い人を中心に広まっていると言われている「仮面うつ」や「現代型うつ病」のように、勤務地や働き方を変えることでうつ病が緩和される場合があります。
うつ病の治療や再発防止の一環として、転職という選択肢も考えてみてください。
うつ病の人の転職については、コラム「うつで転職する前に確認するべき4つのポイント〜転職を成功させる秘訣とは〜」にまとめてありますので、よかったらご覧ください。
3,000人規模の事業所で実際に人事を担当していた私の視点から、転職を成功させるポイントについても解説しています。
なお、大前提として、復職や転職を検討する際にもきちんと主治医に相談するようにしてください。
自己判断で通院をやめたり怠薬をしたりすると、症状がぶり返してしまう可能性があります。
必ず専門家の意見を仰ぎながら、復職や転職に向けた準備を進めるようにしましょう。
対応③復職支援を受けながら社会復帰

実際に社会復帰を目指す段階になったら、医師だけでなく専門の就労支援組織に頼ることをオススメします。
うつ病の人の復職・転職活動は、それ以外の人に比べて考慮しなくてはならない点が多いです。
復職であれば、復職後の業務量調整や異動申請などが焦点になります。
転職であれば、一般枠と障害者枠のどちらを選ぶか、精神障害者福祉手帳を取得すべきかといった点を考える必要があるでしょう。
そのようなときに、うつ病に理解のある専門組織の助けがあると、その後の職場定着も含めて大いに役立ちます。
国の定める法律によって設けられている就労移行支援事業所のように、最低0円から復職支援や転職の手助けをしてくれる機関もありますので、一度調べてみてください。
まとめ~うつ病は初期症状の段階での対処が重要です~

うつ病の初期症状から悪化した場合の対応策までを解説してきました。
うつ病は、初期症状を自覚しはじめた段階で対処することが大切です。
これは私自身が痛感したことでもあります。
自分がうつ病になっていることを認めたくないと思う気持ちもあるかもしれませんが、やせ我慢を続けていると無理がたたって起きあがることすらできなくなる場合があるのです。
しかし、初期症状の段階でセルフケアをしたり、医療機関で診察を受けたり、周囲の人に頼ったりすることができれば、そうした状況に陥るのを防げるので安心してください。
このコラムが、仕事の場でうつ病の初期症状に悩んでいるあなたの助けになれば幸いです。
【最後に改めて…】
就労移行支援
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「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
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仕事の場面で見られる「うつ病の初期症状」にはどのようなものがありますか?
「物忘れやケアレスミスが多くなる」「同僚との会話を避けるようになる」「遅刻や欠勤、当日の休暇連絡が増える」「体調不良とは別にトイレ休憩などの離席が増える」などがあります。詳細はこちらをご覧ください
会社(職場)で活用できるうつ病対策はありますか?
例として、「産業医面談」「ストレスチェック制度」「メンタルヘルス研修」があります。詳細はこちらをご覧ください。