うつ病で退職する人へ、失業保険の受給方法を解説〜他の支援もたくさんあります〜

うつ病の人が退職したときの「失業保険」についての概要と、「傷病手当金」や「障害年金」との違い、その他の支援制度についてご紹介します。
うつ病に関連して退職するときにまず不安になるのが、生活費や治療費などのお金のことでしょう。
うつ病を理由に退職した人も、失業保険(失業手当)などの支援制度を利用できます。
経済的支援を利用することは、恥ずかしいことで決してはありません。支援を利用しつつ、しっかり休養・治療することが、うつ病からの回復(や、その後の再就職など)には欠かせません。
この記事では、うつ病を理由に退職する際の失業保険(失業手当)の解説を中心に、傷病手当金や障害年金との違いなどをご紹介していきます。
【本文に入る前に…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
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翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2022年7月現在9校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
執筆内田青子
うちだ・あおこ。1982年生まれ。上智大学文学部卒。
大学卒業後、百貨店勤務などいくつかの仕事を経た後、2018年から発達障害・不登校・中退経験者などのための個別指導塾・キズキ共育塾で講師として国語(現代文・古文・漢文)と小論文を指導し、主任講師となる。
並行して、聖徳大学通信教育部心理学科を卒業。現在、公認心理師の資格取得を目指して、発達障害や不登校支援についてさらに勉強中。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→
目次
「うつ病と失業保険」の大前提〜支援はたくさんあります〜
失業保険の仕組みは、カンタンなようで複雑なこともあります。後で紹介するように、退職の理由やうつ病の状態などによって受給期間を延長できたり、「今すぐには」受給ができなかったりすることもあります。
また、各種制度は随時改定・改正が行われます。
(この記事でも、「うつ病と失業保険の全て」をお伝えできるわけではありません)
この記事は、まずは「失業保険も含めて、『うつ病の失職者』をサポートする仕組みはたくさんある」という安心材料にしてください。
その上で、「実際のあなた」がどのようなサポートを利用できるのかは、医師に尋ねたり、サポート団体などを利用したりすることで、具体的に見えてくると思います。
失業保険以外の経済的支援制度やサポート団体については、以下のコラムも併せてお読みください。
失業保険とは
「失業保険(失業手当)」について、以下を参考にご紹介します。
厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」
①失業保険とは?

失業保険(正式名称:雇用保険)とは、「雇用保険加入者で、失業・退職した人」が、安定した生活を送りながら一日でも早く再就職するための支援として給付される公的な支援金です。
雇用保険に加入していても、失業・退職したら「すぐに」受給できるとは限りません。また、人によって受給開始日や受給可能期間が異なります。
公務員や自営業の場合は「雇用保険」に加入していないので、失業・退職・廃業しても失業保険の対象とはなりません。ただし、公務員には失業保険に相当するサポートがありますし、職種に関係のないうつ病のサポートももちろんあります。(ご興味のある公務員の人は「公務員 失業保険相当」などとネット検索してみてください。その他、うつ病のサポート制度については、前掲のコラムをご覧ください)
②失業保険で受給できる金額

失業保険で受給できる金額(基本手当)は、ハローワークに提出する離職票に基づいて、以下のように計算します。
(離職前6か月の給与の総支給額の合計÷180)×給付率
給与の総支給額とは、保険料等が控除される前の金額で、残業代や賞与は除きます。
給付率とは「およそ50~80%」で、賃金の低かった人ほど高い率となっています(60歳~64歳については、45~80%です)。
平均して月額15万円程度の給与だった場合、支給額は月額11万円程度
平均して月額20万円程度の給与だった場合、支給額は月額13.5万円程度
上限額について、失業保険で受給できる金額は、年齢によって上限額があります。下記は、令和4年8月1日現在の、1日あたりの上限額です。
- 30歳未満:6,835円
- 30歳以上45歳未満:7,595円
- 45歳以上60歳未満:8,355円
- 60歳以上65歳未満:7,177円
なお、65歳以上の人が失業した場合には、「失業保険の基本手当」ではなく「高年齢求職者給付金」が支給されます。年金と併用して受給することも可能です。
③失業保険の相談先
失業保険の相談先は、ハローワークです。
④雇用保険の加入状況の確認方法

ご自分が雇用保険に加入しているかどうかは、一般的には「給与明細に雇用保険の名目で控除があれば、加入している」と判断できます。逆に、控除がなければ加入していません。
ごく一部ではありますが、例外的に「雇用保険名目の控除があるけれど、実際には加入していない」という、いわゆる「ブラック企業」がないわけではありません。気になる人は、ハローワークにご確認ください。ハローワークには、「雇用保険の被保険者資格取得の届出が適正になされているか否かの確認を労働者自らが照会できる仕組み」があります。
⑤失業保険の受給期間
失業保険を受給できる期間は、「離職した翌日から1年間」です。
ただし、申請したらすぐに受給できるわけではなく、また、1年間ずっと受給できるわけではありません。「受給できる日数(給付日数)」は、勤続年数などによって変わります。
例えば、勤続年数15年の自己都合退職者の所定給付日数は、120日です。退職後にすぐに申し込み、申請が認定されれば、1年間の受給期間のうちの120日間分受給できます。
申請が大幅に遅れた場合、「本当ならば120日間受給できたはずなのに、申請が遅れた結果、受給開始から50日目に『退職からの1年』が経過するので、50日分しか受給できない」などの事態もありえます。
受給開始までに数か月(給付制限期間)を要することもあります。受給を考えている人は、早めにハローワークに行きましょう。
⑥失業保険の受給条件

失業保険は、基本的に「離職状態にあり、今すぐ働く意思があるが、仕事を見つけられない人」が受給できます。
例えば、以下のような人が対象です。
- 積極的に就職しようとする意思があること
- いつでも就職できる健康状態や環境などであること
- 積極的に仕事を探しているにも関わらず、現在職業に就いていないこと
ですので逆に、例えば次のような場合は、受給することができません。
- 妊娠・出産・育児・病気・ケガなどのために、すぐに就職できない人
- 就職するつもりがない人
- 家事に専念している、学業に専念している、会社などの役員に就任しているなどの人
- 自営業の人
⑦うつ病は、失業保険の対象とならないことがある
うつ病で今すぐ働けない人は、「病気やケガですぐに働けない人」に当てはまり、失業保険を受給できない可能性があります。
「うつ病がありつつ、失業保険を受給したい人」は、自分がすぐに仕事ができる状態かどうか、医師に相談して考えておく必要があります。(状態によっては、うつ病があっても働くことが可能です)
ただし、今すぐ働けない人でも、後述する「期限延長」をしたり「就職困難者」に認定されたりした場合は、失業保険を利用できることがあります。
失業保険は働ける状態になれば改めて申請できますし、うつ病の人への金銭的なサポートは失業保険以外にもあります。「失業保険を受給できなさそう」だからといって、変に不安にならないようにしましょう。
失業保険対象者の3種類と、種類による違い
失業保険の対象者は、退職の状況によって、3つの種類に分けられます。
①自己都合退職者・特定理由離職者・特定受給資格者の基本
「うつ病の人の退職」は、基本的には(1)となり、個別の状況やハローワークの判断によっては(2)(3)となることがあるようです。
(1)自己都合退職者
病気や転職などの自己都合の理由で退職した人です。
退職時に「一身上の理由」と書くとこちらに分類されます。
(2)特定受給資格者
いわゆる「会社都合退職」です。
企業の倒産や解雇など、勤め先の都合によって離職を余儀なくされた人が当てはまります。長時間労働やパワハラが原因でうつ病になって退職を余儀なくされた人は、このケースに認定されることがあります。
(3)特定理由離職者
自分の意思に反する正当な理由(健康上の理由、出産育児、介護、家庭の都合など)があって退職する場合はこちらに当てはまります。
定年後、休養してから働きたい人もこちらに含まれます。
詳細は、次項以下で解説します。
②自己都合退職者・特定理由離職者・特定受給資格者の違い
各退職の分類によって、失業手当の受給などは次のように変わります。
失業手当を受給できるのは、ハローワークに行った日から7日間の手続き期間後、さらに2か月の給付制限期間が過ぎてからです。制限期間は、以前は3か月でしたが、2022年10月以降の退職者から2か月に変更になりました。
自己都合退職者だけでなく、自分に責任があって辞める場合(過失が原因で退職など)の場合も、2か月の給付制限期間が設けられます。
失業手当は、7日間の手続期間後に受給できます。待機期間の2か月がありません。とはいえ、実際には、「7日が過ぎたらすぐに受給」ではないようです。「求職の実績を積む」などの期間が少し必要なようで、申請・認定からおおむね1か月後くらいから受給可能だと考えておきましょう。
③特定受給資格者と「一部」の特定理由離職者は、給付日数が多くなる可能性がある
失業手当の受給可能期間も、次のように異なります。
自己都合退職
90〜150日
特定受給資格者・「一部の」特定理由離職者
90〜330日(年齢によって異なります)
つまり、特定受給資格者・特定理由離職者は、失業手当金をより長い期間受給できるということです。
ただし、「特定理由離職者」には、「一部の」という条件がつきます。(「会社に契約更新を拒まれた人」に限られます)。退職の理由がうつ病に限られる場合は、自己都合退職者と同じ期間になります
制度改正による変更などの可能性を考慮して、このページでは詳細は省略します。ご興味がある人は、ハローワークのウェブサイト「基本手当の所定給付日数 」をご覧ください。
④「特別理由離職者」は受給期限を延長できる
失業保険を申請・受給できる期限は、「失業・退職から1年間の間」です。(受給可能期間は、1年間丸ごとではなく、90〜360日間です)
「特別理由離職者」は、申請期限を最長3年間延長することができます=最長で4年(1年+3年)になります。
これはどういうことかというと、「最初は治療に専念して、4年以内に働ける状態になったら、ハローワークに失業保険を申し込むことができる」ということです。
受給期限延長にはハローワークへの手続きが必要ですので、気になる人は確認してみましょう。手続きは、窓口に行かなくても「郵送」や「代理人」で申し込むこともできます。
⑤うつ病の程度によって、「就職困難者」に認定されることもある
うつ病の程度が重く、将来的にも就労に障害がありそうな人は、「就職困難者」に認定されることがあります。
「就職困難者」は、失業保険について以下のように優遇されることがあります。
- 2か月の受給制限期間がない
- 受給日数が長くなる(区分は、年齢と被保険者であった期間によって、150日、300日、360日)
「就職困難者」に認定されるためには、障害者手帳を持っていることが条件です。また、あくまで「困難者」なので、全く求職できない人、する意志のない人は対象にはなりません。
⑥長時間労働やパワハラでうつ病になり会社を辞める場合

前述のとおり、ブラックな長時間労働やパワハラなどが原因でうつ病になって離職する場合は、「会社都合の退職となる」=「特定受給資格者に認定される」場合があります。
特定受給資格者となると、失業保険の受給開始時期が早くなる、受給日数が多くなるなどの優遇を受けることができます。
「該当する」と思うようであれば、退職前にパワハラがあることを勤務先に伝え、会社都合の退職にする必要があります。
ただし、そういう訴えをしづらかったり、訴えても真面目に受け止められなかったり、早く辞めたくて自己都合で辞めたり、というケースはよくある話でしょう。そのような場合でも、後からハローワークに相談して、退職理由を会社都合に変更できる可能性があります。
その上で、勤務先が長時間労働やパワハラを認めず、裁判などで争わなくてはならないケースもあります。必要に応じて、事前に弁護士などにも相談しましょう。労災認定を受けた場合は、労災保険や慰謝料を受け取れる可能性もあります。
うつ病がありつつ、(元)勤務先と(法的に)争うことは、大変だと思います。「実際のあなた」が「実際にどうするか」は、体調を見つつ、サポート団体などとも話し合いつつ、検討していきましょう。
(特定受給資格者に今すぐにはなれなくても、失業保険以外の手当を受給したり、勤め先への訴えは体調がよくなってから行ったりすることは可能です)
うつ病の人は、「今すぐ働けるか」「今すぐ働けないか」で、失業保険の利用方法が異なる
先述のとおり、失業保険は、「体調的には今すぐに働ける状態にあり、求職活動もしているけれど、失業状態の人」が利用できます。
そして、うつ病がある人が「今すぐ働けるかどうか」は、個別の状況によって(医師の判断によって)異なります。
①今すぐ働ける場合

「今すぐ働ける人」は、ハローワークで手続きを行い、求職活動を行うことで、失業保険を受給できます。
また、「特定受給資格者」や「特定理由離職者」と認められた場合は、2か月間の給付制限期間なしに受給できます。
②今すぐ働けない場合
「今すぐ働けない人」は、以下のような方法を考えましょう。
- 失業保険以外の経済的支援制度を検討する
- 失業保険の「受給期限」の延長手続きを行う
- 「就職困難者」の認定を検討する
失業保険以外の支援制度については、次章から詳しくご紹介します。
また、「今すぐ働ける場合」でも、うつ病や失業に関連して受給できるお金や利用できるサービスがあるなら併用をオススメします。
退職後の、失業保険の申請から受給までの流れ

失業保険は、次のような流れで申請・受給します。
(参考:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」)
- 離職票を用意する(※1)
- ハローワークで申請手続きをする
- 7日間(待期期間)と2か月(給付制限期間)の経過を待つ (※2)
- ハローワークの給付説明会に行く
- ハローワークで、決められた回数の求職活動をする(※3)
- 失業の認定を受ける(※4)
- 口座に給付金が振り込まれる
(※1)旧勤務先に、離職票を発行してもらいます。勤務先によっては、発行に時間がかかることもあるので早めに準備しましょう。
(※2)7日間の待機期間中は、アルバイトも禁止されています。
(※3)失業保険は「働く意思があること」が前提になっているので、決められた回数、「ハローワークでの」求職活動をする必要があります。転職サイトなどでの求職活動がメインの場合は、実際にはハローワークでは「形だけ」の求職活動になることも珍しくないようです。
(※4)現実として失業状態が続いている場合でも、継続して受給するためには、失業の認定を原則として4週間に一度受ける必要があります
失業保険と傷病手当金の違い
失業保険と混同しやすい「傷病手当金」について解説します。
①傷病手当金とは

傷病手当金とは、病気やケガのために仕事を休む場合に「健康保険(※)」の被保険者とその家族を保障するための制度です。(※国民健康保険の加入者は対象外です)
傷病手当金を受給する条件は「病気やケガによって労働不能であること」です。(医師の診断書が必要です)
つまり、傷病手当金は「退職前に受給するお金」ということです。ただし一定の条件を満たせば、退職後も継続して受給できます。
傷病手当金の窓口は、「全国健康保険協会、各健康保険組合、各共済組合」になります。
ご興味がある場合は、ご自身の加入している健康保険に問い合わせてみましょう。
「うつ病と傷病手当金」の詳細は、コラム「うつ病の方への傷病手当金の支給条件(2022年法改正反映)〜制度概要や他の支援も紹介〜」
②失業保険と傷病手当金は併用できない
傷病手当金は「働けない状態の場合に受給するお金」、失業保険は「働ける状態の場合に受給するお金」です。
よって、傷病手当金と失業保険は、同時期の併用ができません。
ただし、時期をズラして両方を受給することは可能です。
具体的に気になる場合は、次のような流れができそうか、健康保険やハローワークに確認してみましょう。
- 在職中に、傷病手当金を受給して治療
- 退職して、働けないうちは傷病手当金の受給を継続
- 働ける状態になったら、失業手当を申請・受給
失業保険と障害年金の違い
うつ病の人が受給できる可能性があるお金の一つに、「障害年金」があります。以下、概要を説明します。
①障害年金とは

障害年金とは、ケガや病気などによって障害を負い日常生活や仕事に支障が出た場合に、年金加入者が受給できる年金です。
年金という名前ではありますが、高齢者だけではなく、20歳以上の人なら受給できます。また、病気やケガが治るまでは、生涯にわたって受給可能です。
障害年金の詳細は、コラム「障害年金とは〜Q&Aで、障害年金の内容・受給条件・受給額・働きながらもらえるの?などの疑問にお答えします」をご覧ください。(年金未加入時期がある人のための特別障害者給付金制度についても解説しています)
②失業保険と障害年金は併用できる
障害年金は、求職しながらでも働きながらでも受給できます。
よって、「働く意思があり、働ける状態である場合」は、障害年金と失業保険を同時に受給できます。
「実際のあなた」が利用できるサービスは、サポート団体などに相談しましょう。
(退職した)うつ病の人をサポートする制度は、失業保険も含めてたくさんあります。
ですが、うつ病の症状があるときには、制度を調べたり申請したりすることは難しいかもしれません。
「実際のあなた」がどの制度を利用できるかについては、ご家族・主治医・サポート団体などの協力も得ながら、役所、ハローワーク、年金事務所、健康保険組合などに確認することをオススメします。
サポート団体には、次のようなものがあります。
- 精神保健福祉センター
- 就労移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 復職支援(リワーク・プログラム)
- その他の支援団体
詳細は、コラム「うつ病の方が利用できる7つの経済的支援と6つの就職支援」をご覧ください。
うつ病の人が利用できる、その他の経済的支援制度

うつ病で退職した人が受けられる経済的支援(お金を受給できる支援と、各種支払いが減免できる支援)は失業保険(失業手当)だけではありません。支援制度は他にもたくさんありますので、ご安心ください。
経済的支援を受けることは、決して恥ずかしいことではありません。支援を受けつつ、経済的に安心して適応障害の治療・休養に専念することで、「次の一歩」にも進みやすくなります。
例えば、すでにお伝えしたものも含めて、次のようなものがあります。
- 傷病手当金
- 障害年金
- 生活保護
- 障害者手帳
- 特別障害者手当
- 自立支援医療制度
- 労災保険(労働が原因の疾病の場合)
- 生活困窮者自立支援制度
うつ病で退職するときの流れ
最後に改めて、うつ病で退職するときの一般的な流れを説明します。(より詳細な、「うつ病が関係する退職の前後に行った方がよいことは、コラム「うつでの退職を考えている方へ|退職前後にすべきことを事例付き解説」をご覧ください)。
まだ退職(を決意)していないなら、参考としてご覧ください。
先にお伝えしますと、うつ病のときには、判断力などが衰えています。退職についてあなた一人で決断するのではなく、主治医、上司、人事部、サポート団体などによく相談しながら準備をしましょう。
①病院で診断を受ける

まだうつ病の診断が出ていない段階であれば、病院に行って診察を受けましょう。
インターネットなどにはうつ病の自己診断チェックシートなどもありますが、「ある人が、本当にうつ病かどうか」診断できるのは医師だけです。
実際にうつ病だったときには、各種支援の手続きなどのために、うつ病の診断書が必要な場合もあります。
うつ病と似た病気に、適応障害などがあります。病気によって治療法も異なりますので、「病気かもしれない」と思ったときには、病院で適切な治療を受けることが大切です。
②退職を決意する前に、有給取得や傷病手当金の受給を考える
退職を決意する前に、有給休暇で療養するか、休職して傷病手当金を受け取ることはできないか(=退職せずに、お金を受け取りながら休養できる可能性はないか)を考えましょう。
「病気休暇」という、病気療養のための休暇を取得できる職場もあります。お勤め先の制度を確認することをオススメします。
③勤め先に退職の意志を表明する(退職届を作成・提出する)

主治医・人事部・上司などにも相談しつつ、退職を決意したら、退職届を作成・提出しましょう。
退職届は、お勤め先にフォーマットがあればそれを利用したり、ネットで見つけた一般的な様式を利用したりしましょう。
退職理由は、「一身上の理由」で問題ありません。(うつ病と関連づける必要はありません)
ただし前述のように、特定受給資格者や特定理由離職者に該当すると思われる場合は、退職届もそのように作成しましょう。
退職届の提出時期としては、「退職日の2週間前から1か月前まで」と就業規則で決められているケースが多いようです。実際のあなたの職場がどうなのかは、事前に確認しておきましょう。
退職届を提出しても、「代わりの社員がいない」「業務の引き継ぎに時間がかかる」などでなかなか退職を許可されない(引き止められる)ケースもないわけではありません。
うつ病の症状がある状態で、あなた一人で引き止め交渉を行うのは大変な場合もあるでしょう。医師、うつ病の人をサポートする団体、法テラス、労働基準監督署などへの相談もオススメします。
④退職後、保険の切り替えや離職票の準備をする
退職後には「健康保険」と「年金」の切り替えなどが必要です。
(1)健康保険
正規雇用の人が退職すると、それまでの健康保険が使えなくなるので、以下の3つのうちのどれかの手続きが必要です。
手続きは、お住まいの市区町村の健康保険担当窓口で行います。
- 国民健康保険に切り替える
- 家族の健康保険の扶養者になる
- 社会保険の任意継続を申請する
(2)年金
正規雇用の人は、厚生年金から国民年金に切り替えましょう。
手続きは、お住まいの市区町村役所の国民年金担当窓口で行うことができます。
(3)離職票
職場に、離職票の発行を依頼しましょう(退職前の依頼も可能です)。失業保険の給付を受ける際に必要な書類です。
⑤ハローワークで失業保険の手続きをする

失業保険は、お住まいの地域を管轄するハローワークに行って手続きをすることで、受給可能になります。退職後は、できるだけ早くハローワークに行って、諸々の手続きを行いましょう。ハローワークの全国一覧はこちらです。(管轄は、インターネットでの「○○市 ハローワーク」などの検索でも見つかります。
また、傷病手当金や障害年金など他の支援制度を利用したい場合は、それぞれの窓口に行って必要な手続きをしましょう。
⑥医師の指示に従って、治療・休養する
すべての手続きが終わったら、医師の指示に従って治療・休養に専念しましょう。今は苦しいかもしれませんが、体調が回復してきたら、再就職に向けても動き出せるようになります。
まとめ

うつ病の人も、条件に当てはまれば失業保険を受給できます。また、失業保険以外にもうつ病の人の利用できる経済的支援はたくさんあります。
経済的支援の利用は、恥ずかしいことでは決してありません。支援を利用して、治療・休養に専念することが何よりも大切です。
「実際のあなた」が利用できる支援については、医師・役所・サポート団体などと話しつつ、具体的に探していくことをオススメします。
この記事が、うつ病に関連して退職した・退職を検討している人の参考になったなら幸いです。
【最後に改めて…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%