就労継続支援A型事業所(A型作業所)とは? 仕事内容や利用の流れ、体験談などを利用経験者が解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ大阪校の松本茂樹です。
「就労継続支援A型事業所(A型作業所)」という言葉は、あまり聞きなれない言葉かもしれません。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)とは、「病気・障害があり、一般企業で働くのが難しい人と雇用契約を結び、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行う支援機関」のことです。
各都道府県の最低賃金以上の収入を得ることができるため、(障害年金なども併用しつつ)生計を立てていくことができます。
この記事では、実際に就労継続支援A型事業所(A型作業所)の利用経験がある筆者が、就労継続支援A型事業所(A型作業所)はどんな場所か、どんな仕事があるかなどについて、ご紹介していきます。
病気・障害があり、今後の働き方にお悩みのあなた(やご家族)の一助となれば幸いです。
目次
就労継続支援A型事業所(A型作業所)とは?
この章では、就労継続支援A型事業所(A型作業所)の概要を紹介します。
①就労継続支援A型事業所(A型作業所)の概要
厚生労働省は、就労継続支援A型事業所(A型作業所)のことを、次のように説明しています。(参考:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」、独立行政法人 福祉医療機構「就労継続支援A型(雇用型)」)
通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行う
もう少しカンタンに言うと、次のようになります。
- 病気や障害があり、一般企業で働くのが困難な人に、知識や能力をアップさせるために必要な訓練を行う機会をサービスとして提供する。一般就労を目指す人には、そののためのサポートも行う。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の数は、2020年時点で、全国に3922か所あり、7万5571人が制度を利用して働いています。
参考として、B型は全国に1万3828か所、28万2409人が働いています。
②就労継続支援制度が作られた背景
就労継続支援A型事業所(A型作業所)・B型事業所(B型作業所)は、2006年に国が障害者自立支援法(現在は障害者総合支援法に改称)の制度を設立したことによって登場した制度です。それまでの「共同作業所」や「授産施設」に変わるものとなっています。
③就労継続支援A型事業所(A型作業所)と就労継続支援B型事業所(B型作業所)の違い
就労継続支援には、就労継続支援A型事業所(A型作業所)と就労継続支援B型事業所(B型作業所)の2種類があります。この2つの制度の大きな違いは何でしょうか?
まず、大きな違いとして、受け取るお金の違いがあります。
- 就労継続支援A型事業所(A型作業所)は雇用契約を結び、「給料」という形でお金を受け取る
- 就労継続支援B型事業所(B型作業所)は雇用契約を結ばずに、「工賃」として、作業した分のお金を受け取る
このため、就労継続支援A型事業所(A型作業所)では、各都道府県の最低賃金水準以上の金額のお金がもらえます。
ただし雇用契約なので、通常の会社で働く場合と同じように、決められた曜日やシフトで、きっちりと勤務をする必要があります。
次のような勤務形態のところが多いようです。
- 原則として、週20時間以上の勤務
- 月〜金曜日の週5日勤務、または土曜日を含む週6日勤務
- 1日の勤務時間は4~5時間程度
なお、通院する必要がある人は、そのスケジュールもある程度考慮してくれます。
④就労継続支援A型事業所(A型作業所)を利用できる人は
厚生労働省の資料によると、就労継続支援A型事業所(A型作業所)を利用できるのは、下記のような人たちです。(参考:厚生労働省※PDF「障害者の就労支援について」)
- 移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった人
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった人・就労経験があるものの、現に雇用関係の状態にない人
「通常の事業所に雇用される事が困難であって、適切な支援により雇用契約に基づく就労が可能な障害者」という表現もなされています。
なお、働くのに障害者手帳が必須というわけではありません。
2018年3月までは65歳未満という年齢制限もありました。現在は、65歳までの5年間に就労継続支援A型事業所(A型作業所)で働いていた実績があれば、継続して利用することができます。
事業所の規模は、「最低利用者10人から」と少なめになっていて、一般企業よりも小規模な事業所が多く見られます。
また、スタッフの支援体制として、サービス管理責任者1名(以上)、利用者10名につき1名(以上)の職業指導員および生活支援員の配置が義務付けられています。
職業指導員については、事実上、一般企業での仕事の上司とほとんど同じ関係になります。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の仕事内容

就労継続支援A型事業所(A型作業所)では、対人コミュニケーション能力があまり要求されない軽作業の仕事を行うところが多いようです。(企業などから業務を受注して行う場合も、独自の事業である場合もあります)
- ピッキング(商品の仕分けなど)
- 機械部品のシール貼り
- 洋菓子の箱作り、ライン作業での箱詰め
- 弁当作成
- 梱包
- 簡単な部品の組み立て
こうした軽作業は、物が相手であるため、臨機応変な対応が比較的要求されません。例えばASDの特性によって対人関係が苦手な人にとっては、比較的簡単に始めることができると言えます。
また最近では多様化が進み、パソコンを使った作業を行う事業所も増えてきています。
- データ入力の代行の作業
- インターネットオークションのための写真撮影
他にも、事業所自らカフェやレストランを営業したり、飲食店に「労働者」を派遣してホールスタッフを行うといったものも見られます。
こういった飲食店関係の作業は、対人コミュニケーション能力が要求されます。この場合、事業所側がスタッフに丁寧な指導を行うようにしています。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の給料

就労継続支援A型事業所(A型作業所)でもらえるお金は、都道府県での最低時給の金額以上となっています。例えば、2023年現在の東京都であれば、1,072円以上です。
①就労継続支援A型事業所(A型作業所)の平均月収は7万9625円
2020年度の実績を見ると、就労継続支援A型事業所(A型作業所)で働く人の全国平均の月収は7万9625円です。
最低賃金が最も高い東京都では平均9万7129円、最も安い宮崎県では平均6万5927円となっています。(参考:厚生労働省※PDF「令和2年度工賃(賃金)の実績について」)
②参考:障害年金の月額は6万6250円
障害基礎年金2級の支給額は、月額にして6万6250円です。(参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)
③就労継続支援A型事業所(A型作業所)と障害年金の併用
お住まいの地域や働き方にもよりますが、就労継続支援A型事業所(A型作業所)の給料と障害基礎年金は、ほぼ同額か給料の方が高いと言えるのではないでしょうか。
障害年金を受給しながら就労継続支援A型事業所(A型作業所)で働くということも可能です。その場合、上記平均金額と障害年金の合計金額は、月額163,379円です。
この金額を多いと見るか少ないと見るかは、人それぞれ、かつ労働時間や労働内容などにもよるでしょう(明確なソースがなくて恐縮ですが、就労継続支援A型の1日あたりの平均労働時間は4〜6時間程度と言われることもあります)。
心身の調子が安定したら、「労働時間を増やす」「就労継続支援A型事業所(A型作業所)で身につけた経験やスキルを活かして転職する」などで収入を増やしていくことはもちろん考えられます。
④就労継続支援A型事業所(A型作業所)では、交通費が出ないことも珍しくない
就労継続支援A型事業所(A型作業所)では、交通費が支給されないことも珍しくはありません。
支給される事業所では、上限月額を数千円を目安に支給しているところが多いようです。
私の場合、2社目は交通費を全く支給しない事業所でした。こういう場合、お金の観点からは、自宅から遠い事業所はあまりオススメできません。
⑤就労継続支援A型事業所(A型作業所)では、利用料が発生することもある
就労継続支援A型事業所(A型作業所)を利用するためには、利用料が必要になるケースがあります。
少しややこしいのですが、「就労継続支援A型事業所(A型作業所)が利用者(労働者)に払う給料」と、「利用者(労働者)が就労継続支援A型事業所(A型作業所)に払う利用料」の、双方向の支払いがあるということです。
利用料は、「本人と配偶者の所得に応じた上限額」と「事業所に通った日数」で計算されます。本人が18歳以上であれば、同居家族の所得は対象となりません。
以下、利用料の表をご覧ください。(参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」)
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 | 収入の目安 |
---|---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 | 年収100万~200万円以下 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 | 年収100万~200万円以下 |
一般1 | 市町村民税課税世帯 (所得割16万円未満) |
9,300円 | 年収600万円以下 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 | 年収600万円以上 |
入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。
- 所得の関係で利用料を払えなくても、それを気にする必要はありません(そもそも、そうした方々が利用できるために所得ごとの利用料が設定されています)。また、明確なソースがなくて恐縮ですが、「就労継続支援A型の利用者」の多くは、上記のうち「生活保護」や「低所得」の区分に入ると言われています。つまり利用料が無料の層が多いということです。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の利用の流れ

就労継続支援A型事業所(A型作業所)を利用するまでの流れを紹介します。
流れ①自治体への申請
前提として、就労継続支援A型事業所(A型作業所)を利用する場合には、自治体の許可が必要です。
お住まいの市区町村役所の担当窓口に、「就労継続支援A型事業所(A型作業所)を利用したいこと」を申請しましょう。
申請後は、生活状況の調査、病気・障害の程度の調査、支援計画の作成などが行われます。
「就労継続支援A型事業所(A型作業所)を利用できる」と判断があった場合には、市区町村から「受給証」というものが発行されます。
次項以下と並行して行う場合もあります。
流れ②求人情報の見つけ方
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の求人は、次のような方法で見つかります。
なお、就労継続支援A型事業所(A型作業所)は福祉施設という特徴から、『タウンワーク』などの一般の求人雑誌やウェブサイトなどには載っていないことが多いです。
流れ③応募
求人情報を見つけたら、勤務地や勤務時間、給与体系、作業内容が自分に合っていれば、その事業所に応募します。
応募の前に、前項のハローワークや地域障害者職業センターなどの支援員によるサポートやアドバイスを受けながら、じっくり考えましょう。
応募にあたっては、履歴書または職務経歴書が必要な場合もあります。丁寧に書きましょう。書き方についても、支援員にに相談できます。
応募に必要な情報がそろったら、応募です。事業所と面接の日程を決めましょう。
流れ④面接&条件の確認
そして、事業所との面接を受けます。
面接では、人事担当者のほか、就労継続支援事業所に配置が義務付けられている「サービス管理責任者」と呼ばれる専門の資格を持った人が立ち会う場合もあります。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)を利用する場合、一般企業での応募時以上に、この面接は非常に重要です。
なぜなら、就労継続支援A型事業所(A型作業所)の職場環境は千差万別だからです。
「面接そのもので見聞きすること」の他に、下記のようなことも確認しましょう。
- 交通アクセス
- 現場の環境(周囲から聞こえる音声の大きさなど)
また、就労継続支援A型事業所(A型作業所)は、一般企業と比べると休みが多くないケースもあります。
事業所によっては土曜日も隔週で働く必要があるところもあります。その点は十分に考慮する必要があるといえるでしょう。
一方、通院が必要な場合の休みについては、一般企業と比べて手厚く対応してもらえるといえます。なお、一般企業で働く場合と同様、有給休暇を取得することもできます。
病気の症状や障害の特性は千差万別です。長く働き続けるためにも、この面接がカギといえるでしょう。
- 私が働いていた就労継続支援A型事業所(A型作業所)に、月の休みが最大8日程度のところがありまでした。そのため、土曜日も隔週で出勤となっていました。このほか、祝日も出勤していました。土曜日や祝日は休みたいという方は、出勤日に注意が必要です。
流れ⑤採用になったら労働開始
面接後は、採用または不採用の連絡があります。
採用された場合は、再度事業所と相談の上、勤務開始日を決めることができます。
こうして仕事を始めることができます。
補足:採用後の利用(労働)期間
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の利用期間には、原則制限はありません。
このため、理論上は、利用者の体調と事業所の経営が安定している限り、長期的に働き続けることができます。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)を、障害者雇用へのステップアップとして利用する人もいる

障害者雇用という、「病気・障害のある人に限定した求人・雇用枠」があります。
障害者雇用では、病気・障害への配慮を得やすい環境でありながら、就労継続支援よりも「通常の労働」に近い働き方を行います。
障害者枠が多い「特例子会社」という会社もあります。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)を、「障害者雇用を目指すためのステップアップ」として利用される人も少なくありません。
これは、就労継続支援A型事業所(A型作業所)で働くことが、転職のための多くの訓練になるからです。
ステップアップとして利用される方は、就労継続支援A型事業所(A型作業所)で働きながら就職活動を行います。
就労継続支援と障害者雇用のどちらがよいかは人によるので「ステップアップ」という表現が一概に正しいわけではありません。ですが1か月の平均給料だけを見ると、障害者雇用の方が多いと言えます。(参考:厚生労働省※PDF「平成30年度障害者雇用実態調査結果」)
- 障害者雇用(身体障害者):21万5000円
- 障害者雇用(精神障害者):12万5000円
- 障害者雇用(知的障害者):11万7000円
- 就労継続支援A型事業所(A型作業所):7万9625円
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の中には、ハローワークやジョブコーチと連携し、働きながら障害者雇用を目指す人を支援する制度を設けているところもあります。
ただし、気軽に相談に乗ってくれるところと、業務に追われていて対応が難しいというところもあります。その点も含めて、面接時によく確認しておくことをおすすめします。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の施設外就労とは?

就労継続支援A型事業所(A型作業所)では、「施設外就労」という働き方をすることがあります。
施設外就労とは、就労継続支援A型事業所(A型作業所)の運営会社が別の会社から引き受けた仕事を、その会社の拠点を借りて行うことです。
施設外就労で働く人は、就労継続支援A型事業所(A型作業所)である程度経験を積んで作業に手慣れた人から選抜されます。
施設外就労は、「事業所での勤務からステップアップ」と認識されることが多いようです。
この仕組みは、三者にとってメリットがあります。
- 就労継続支援A型事業所(A型作業所):委託料(収益)を得られる。利用者に自社事業以外の経験を提供できる
- 利用者:所属している就労継続支援A型事業所(A型作業所)の自社事業とは異なる業務を経験できる
- 委託元の会社:質の高い労働者を得られる
- 筆者も、ある就労継続支援A型事業所(A型作業所)での勤務開始から半年後に、施設外就労を開始しました。事業所で元々行っていた業務は「洋菓子の箱折り」で、これを比較的得意でスムーズに行えたことなどが、施設外就労開始の理由につながったと思います。施設外就労では勤務時間が30分増えて、一日5時間になりました。収入も、1日に30分ぶんが増えたということです。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)のバリアフリー化は、事業所によって様々

就労継続支援A型事業所(A型作業所)の施設のバリアフリー化は、事業所によって次のようにさまざまです。
- ビルの上階にあり、広いエレベーターもある
- エレベーターがあるが、広くない
- 施設内は段差がないように配慮されているが、靴を脱いで上がる必要がある
同じ会社が複数拠点で事業所を運営している場合、拠点によっても構造が異なります。
こうした事柄は、インターネットの情報だけではなかなかわかりません。あらかじめ下見に行くことがおすすめです。
- 私が働いていた事業所の一つは、古い雑居ビルの最上階にありました。1階のビルの入口からエレベーターに乗るまでの間にも段差がありました。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の利用について、筆者の経験談

筆者は、就労継続支援A型事業所(A型作業所)での勤務経験が2回あります。
1回目は2011年12月~2012年3月、2回目は2017年10月~2019年9月です。
この章では、その概要をお伝えします。
「私個人の経験」であり、どこまで一般化できる内容かは不明ですが、一事例として、就労継続支援A型事業所(A型作業所)の具体的なイメージにお役立ていただければ幸いです。
①1社目の最初の仕事:データ入力
1社目は、ニュータウンのはずれにある山のふもとに位置する二階建ての事業所です。
最寄駅からは徒歩20分ほどの場所にありました。
この事業所では、次のようなことを行いました。
- 簡単なデータ入力
- インターネットオークションへの、仕入れた洋服や衣類の出品
- うどん麺の手作り関係(製麺、加工、梱包)
最初に担当したのはデータ入力です。
Excelを使って、電話番号などを入力したり、並べ替えたりする作業でした。この仕事は分量が少なく、すぐに終わりました。
②1社目の2つめの仕事:インターネットオークション
2012年1月ごろまでのメイン業務は、衣類のインターネットオークションへの出品作業です。
まず、あらかじめ仕入れていた古着などの写真を、施設内の撮影スポットで撮影します。
撮った写真をインターネットオークションサイト上の店に入力し、商品の情報や送料を書き込みます。
商品が落札されれば、落札者とメッセージでやり取りします。
代金を振り込んでもらった後、運送会社を手配し、商品を発送するという流れです。
ネット上に非常に多数あるオークションサイトから自社の商品を選んでもらうためには、見栄えのよい写真や、購買意欲を増してもらうための文章作成などが求められます。
また、次のような業務の段取りのよい手配が必要でした。
- 梱包・発送の際に、数多くの商品の中から「今回の注文」に該当するものを選び出す。
- 入金をネットバンキングで確認しながら、メッセージをやり取りする
- 梱包などは、運送会社の集荷に間に合うように行う
個人的にちょっと苦手な作業であり、当時は指導員からいろいろとアドバイスを受けながら仕事を続けていました。
③1社目の3つめの仕事:うどん麺の手作り
2012年1月半ばに、転機が訪れます。
オークションサイトへの出品を行っていた部屋の下では、利用者2人によるうどん麺の手作りが行われていました。
そのうちの1人が交通事故でのケガでしばらく働けなくなったのです。そのため、オークション担当部署からの助っ人が急遽求められることになりました。
そこで、私が配置転換となりました。
うどん作りは、自分にとって、まったく初めての経験でした。
具体的には、次のようなことを行いました。
- 小麦粉などの原料を、決められた分量で配合する
- 配合したものを製麺機に入れてカットする
- カットされたものを、シーラーを使いながら袋詰めする
このうどんは、商品として販売し続けられていたものです。
「担当が変わったから(私にとって初めての作業だから)」といって、味などが変わるわけにはいきません。
上司にあたる職業指導員や、手慣れた他の利用者から指導を受けつつ、何とか手伝いを行いました。
④副業が軌道に乗って退職
その後、うどん作りは別の利用者と再び交代。
私はインターネットオークションサイトへの出品の仕事に戻りました。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)では、副業は表立っては認められていないところが多いですが、この職場では認められていました。
その副業が軌道に乗ってきたため2012年3月に退職し、フリーランスとして独立しました。
⑤再び就労継続支援A型事業所(A型作業所)へ。2社目の最初の仕事:インターネット通販の梱包など
フリーランスの仕事は、一旦は軌道に乗りました。
ですが社会情勢の関係で仕事が減っていきました。
そこで再び就労継続支援A型事業所(A型作業所)での仕事を探すことにしました。
2社目となる就労継続支援A型事業所(A型作業所)は、幹線道路沿いにある古い雑居ビルの最上階にある事業所でした。
主な業務内容は次のとおりです。
- 通販サイトで販売するための商品(工具などの)を仕入れる
- 商品を適切なサイズのポリ袋に封入する
- ポリ袋を加熱する器具で溶かして、綴じる
- ポリ袋にバーコードシールを貼る
- 商品を事業所の車に載せる
- その後は、指導員らが車で取引先に納品する
これを毎回メンバーが異なる各班に分かれ、チームワークで行います。
納入時間は毎日16時と決められていて、作業は15時までに終わらせる必要がありました。
私は、この仕事が非常に苦手でした。指導員が車で通販大手の倉庫に行くまでの納品スケジュールが厳しく、作業が遅かったり間違ったりして、指導員から注意を受けることも多かったです。
なお、この封入作業が少ない日や早く完了した日は、「洋菓子を入れる紙箱を折って、組み立てる」という仕事を行っていました。
私はこちらは得意で、作業の丁寧さを褒められるほどになりました(この仕事にはノルマがほとんどなかったので、安心して取り組めたのかもしれません)。
⑥2社目の2つめの仕事:施設外就労での箱折
その後、前述の施設外就労が決まり、本拠地から2kmほど離れた倉庫への配置転換となりました。
ある会社から委託を受けた業務です。
2018年4月から2019年2月までの1年近く、この施設外就労の倉庫で勤務しました。
このときの業務内容は、「利用者20人で、1日5時間勤務で、洋菓子の箱を2,000箱(1時間に400箱)を作る」というものでした。
その箱には10点ほどのパーツがあり、それを組み合わせていきます。
最初のころは方針やノルマが厳しく、ストレスも増えていきました。
ただ、途中で方針が変わり、ノルマの数も1,500箱程度に減り、働きやすくなりました。
それからは、指導員との相性もよく、作業にも慣れてきたことで、とても安定して働くことができました。
ベルトコンベヤーを使った洋菓子の袋詰めや箱詰め、包装作業なども行いました。
⑦2社目の3つめの仕事:作業所での部品詰めなど
しかし、2019年2月半ばに転機が訪れました。
箱詰めの業務を委託してくれていた会社(施設外就労で就労継続支援A型事業所(A型作業所)の利用者に場所を提供し、働かせてくれていた会社)が、社内の経営環境の悪化や合理化などの事情で、人員削減などを行うことになったのです。
そこの社員ではない私たちも、影響を大きく受けることになりました。
その会社は、工場を就労継続支援A型事業所(A型作業所)に貸すのを止めることになり、洋菓子の箱作りの仕事の委託も大きく減らすことにしたのです。
そのままでは就労継続支援A型事業所(A型作業所)の施設外就労の利用者の雇用が危うくなります。
そこで、就労継続支援A型事業所(A型作業所)の代表は、新たに隣の市にある大きな駅前のオフィスビルの部屋を借り上げ、そこで別の作業をすることになりました。
新たな業務は、「金属部品などの加工や、袋詰め」など、以前とは異なる内容です。
個人的には、新たな環境は、下記の観点から不向きでした。
- 以前の職場よりも30分以上遠くなる
- 聴覚過敏の特性上、すぐ近くを行き交う電車の警笛の音がうるさく感じられる
そして、2019年5月、サービス管理責任者に直談判し、最初の事業所の施設に戻ることになりました。
ただし、事業所側からは「施設外就労からのステップダウン」という目で見られることになり、あまりいい顔はされませんでした。また、1日の勤務時間も5時間から4時間30分に減りました。
施設外就労から施設内就労(事業所)に戻る際にはこうした点には注意が必要かもしれません。
現在の私は、そうした経緯を経て、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジで就職に向けて勉強中です。
補足:給料と勤務時間について
1社目の給料・勤務時間は、「当時の県の最低賃金×1日あたり5時間×週に5〜6日勤務」でした。
給料は、多いときでは1か月で7万円ほどとなりました。
交通費は、一定額まで事業者が負担してくれました。
ただ、私の通勤環境では交通費の上限を超えており、その分は自分で支払っていました。
フリーランスでの仕事を掛け持ちするようになってから、勤務日数を週に3日程度に減らしてもらいました(この当時は就労継続支援A型に対する国の対応がまだ比較的緩かったためこのようにしてもらえました)。
2社目の給料・勤務時間は、「当時の県の最低賃金×1日あたり4時間半〜5時間×週に5日程度の勤務」でした。
給料は、多いときでは1か月で8万円強でした。
どちらの仕事をしていたときも、障害年金はまだ受給していませんでした。
ギリギリの状態でしたが、親の支えを得ながら一人暮らしをしていました。(「家賃だけは親に払ってもらう」「家賃も含めて支払いを全て自分で行いながら、たまに食事を届けてもらう」など)
就労移行支援というサービスもあります
「就労継続支援」とは別に、「就労移行支援」というサービスがあります。
就労移行支援とは、「病気や障害があり、働くことを希望する人たち」が安定して働けるように、就労についての作業スキルとコミュニケーションスキルの提供を通じて支援を行う福祉サービスです。
中長期的に働くためのスキルなどを身につけることができます。
この記事の運営元であるキズキビジネスカレッジ(KBC)も、就労移行支援事業所の一つです。
就労移行支援の詳細は、下記コラムをご覧ください。
まとめ:自分が安定して働き続けられる事業所を選ぶとよいでしょう

就労継続支援A型事業所(A型作業所)について、体験談を交えて説明してきました。
就労継続支援では、「最低賃金の保障(労働法の保障)」と「病気・障害への理解」を得ながら働くことができます。
その一方、給与水準は、障害者雇用などと比べると平均としては低くなっています。
また、雇用契約を結ぶ以上、一般の会社で働くように決められた日時に出社し、作業を安定してこなして、働き続けることが(ある程度)求められます。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)の内容は多種多様にわたり、さまざまです。
ハローワークの担当職員や施設サービス管理責任者と何度も相談したり、いろいろな事業所の見学を行ってから、本当に自分が安定して働き続けられる事業所を選ぶとよいでしょう。
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→