就労移行支援を利用して就職できる?就職実現・不安解消のための7ポイントと就職事例

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田淳平です。
就労移行支援を通じた就職を検討中のあなたは、以下のような疑問をお持ちではありませんか?
- 具体的にどのような支援を受けられるのか?
- 就労移行支援事業所を選ぶときのコツは?
- 就労移行支援を通じて就職に結びつくのはどういう人?
- 就労移行支援を受けて就職した人の事例は?
また、「就労移行支援を利用しても就職できないんじゃないか…」という不安の声をお聞きすることもあります。
大丈夫です。
あなたに合った事業所で支援を受けることで、あなたに合った就職先を見つけることができます。
この記事は、そうした不安を解消しつつ、就労移行支援を受けて就職に結びつけるためのポイントと、事業所の見つけ方を解説します。
支援の具体的な内容や、実際に就職に至った人の体験談も併せて紹介しますので、就労移行支援に興味や不安があれば、ぜひ読んでみてください。
【本文に入る前に…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2022年7月現在9校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
執筆寺田淳平
てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→
目次
就労移行支援とは?
まずは就労移行支援の概要をお伝えします(少し長いので、すでにご存知のなら「不安を解消!就労移行支援を利用して就職するためのポイント7点」まで進んでいただいて大丈夫です)。
就労移行支援事業とは、障害者総合支援法に基づく、「一般企業への就職や仕事での独立を目指す、病気や障害のある人」向けの福祉サービスです。
各就労移行支援事業の運営は、公的な認可を受けた様々な団体が行っています(私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)もその一つです)。
平成30年(2018年)時点で、全国に3,503の事業所があります。(参考:厚生労働省「平成30年社会福祉施設等調査の概況」)
就労移行支援事業所では、体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要なスキルなどを学ぶことができます。
さらには、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。
この章ではまず、利用対象者の基本的な条件とともに、負担額、利用期間などを確認しましょう。
利用対象者の基本的な条件

就労移行支援を受けるには、原則として、次の3つの条件を全て満たす必要があります。
- 原則18歳から65歳未満であること
- 一般企業への就職または仕事での独立を希望していること
- 精神障害、発達障害、身体障害、知的障害や難病を抱えていること
対象となる病気・障害の内容や程度は多種多様です。
例えば、以下のような障害が対象となります。
- 精神障害:うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、適応障害、不安障害
- 発達障害:注意欠如・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム(ASD)、学習障害(LD)
- 身体障害:肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害
- 知的障害:精神遅滞等
- 難病:パーキンソン病等(障害者総合支援法対象疾病)
対象となる病気や障害は順次見直しがなされ、年々増え続けており、2019年10月時点では360超となっています。
対象となる病気・障害の最新・詳細は、厚生労働省のウェブサイト「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」をご覧ください。
なお、実際の利用の可否は、障害の程度や勘案すべき事項を踏まえた上で、お住まいの各市区町村にて個別に判断されます(判断によっては、障害者手帳の取得は必須ではありません)。
申請に必要なもの
就労移行支援サービスを受けるために必要な書類等は、基本的には以下のふたつです。
- 診断書
- 障害者福祉サービス受給者証
障害者福祉サービス受給者証は市区町村役場の担当窓口で発行されますので、詳細はお住まいの地域の市区町村役場にお問い合わせください。
なお、前にも述べたように、障害者手帳は必須ではありません。
医師の診断や定期的な通院だけで自治体が可能と判断すれば、利用することができます。
利用料(負担額)

就労移行支援サービスは、最低0円からを受けられます。
負担が生じる場合でも、月額で最大37,200円と、利用料に上限が設定されています。(参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」)
利用可能期間
利用可能期間は、最長で「24か月」です。
調子が安定せずに就職活動がうまく進まなくても、焦らずにスキルの向上等に集中できる期間となっています。
生活習慣の安定化や体調を整える段階から始めたい人も、時間をめいっぱい使って計画を立てられる期間設定です。
就職に役立つ就労移行支援のサポート内容5選
この章では、就職に役立つ就労移行支援事業所の一般的なサポート内容を紹介していきます。
具体的な内容は事業所によって異なりますので、気になるサポートについては、それぞれの事業所に問い合わせたり見学したりして確認してみましょう。
①体調管理やメンタル面の相談

1つ目は、「体調管理やメンタル面の相談」です。
就労移行支援事業所では、最初にあなたの到達目標を「個別支援計画」として定めます。
この個別支援計画があることで、あなたの障害や病状、性格、スキル、就職を希望する業界、就労に向けた段階などに合わせた、様々な助言を受け取ることができるようになります。
個別相談に加えて、一般的な生活改善についての講習を実施している事業所も少なくありません。
また、睡眠について科学的に理解を深める研修を行ったり、ヨガやウォーキングを取り入れた健康管理を行ったりする事業所もあります。
②基本的なスキルの講習
サービスの2つ目は、「基本的なスキルの講習」です。
就労移行支援事業所では、どの企業に就職しても役立ちそうなスキル(例:PCにおけるWord、Excel、PowerPointの操作など)の指導を行っています。
まったくの初心者でもわかる内容から始められますので、安心して受講することができます。
さらに、職場でのコミュニケーション術やビジネスマナー講習などの実習も受けられます。
就職したことがない人も、社会人歴のある人も、社会人としての基礎を改めて学ぶ、良い機会になるはずです。
③専門的なスキルの講習

3つ目の「専門的なスキルの講習」は、事業所によって個性が現れるところです。
参考までに、私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)では、「専門的なスキルを活かせる仕事に就きたい人たちを支援する」という意図から、以下のような講習を行っています。
- 会計:簿記試験対策、ファイナンシャルプランニング講座、企業の財務分析
- 英語:文法学習、TOEIC対策、翻訳、英文メール作成
- プログラミング:プログラミング入門、Javaプログラミング、Webアプリ作成
- ウェブマーケティング:SEO記事の執筆、ウェブメディア運用基礎、広告作成、アクセス解析
専門分野に特化した内容ではありますが、どれも入門講座から始めることができます。
事業所によっては、製図ソフトのCAD、写真加工のPhotoshop、イラスト作成のIllustratorなどを学べたり、座学だけでなくグループワークを含む実践を行ったりするところもあります。
自分がどのようなスキルを身につけたいか、どのような仕事に就きたいかを考えることで、利用する事業所も異なってきます。
各事業所がどのような専門スキル講習を行っているか、調べてみることをオススメします。
ただ、専門的な講習の内容が「現時点での希望や想定」と異なっていたり、あなたに「現時点での希望や想定」がなかったりするときも、理念・雰囲気・通いやすさなどが気になる事業所があれば、一度相談してみても損はありません。
相談することによって、希望や想定が(新たに)見つかったり、またウェブサイトだけではわからない支援があったりするかもしれないからです。
④履歴書の準備や面接対策
就職活動を直接的に支援する「履歴書の準備や面接対策」も行っています。
履歴書の書き方に関する講習や、模擬面接などのほか、以下のような就職活動の準備段階での相談も受け付けています。
- 採用枠の相談(オープン就労かクローズ就労か、障害者枠か一般枠か)
- 障害者手帳の取得検討
とりわけ重要なのが、「採用枠の相談」です。
「オープン就労」とは、自身のうつ病や発達障害などを、求人先に明らかにして臨むことを言います。
「クローズ就労」とは、自身のうつ病や発達障害などを相手に開示せずに臨むことです。
就職活動においては、相手から聞かれない限りは、自分の病気や障害を明かす必要はありません(ただし、面接や書類を通じて、聞かれたときは正直に答えましょう)。
オープン就労を選んだ場合、「障害者枠」も選択肢に入ってきます(障害者枠については後述します)。
オープン就労とクローズ就労は、どちらがいいと一概に言えるものではありません。
「あなたにとって、どちらがよいか」については、就労移行支援事業所でしっかり相談することで、就活全体、または個別の応募先のための方向性などを考えていくことができます。
障害者手帳については、コラム「障害者手帳のメリットとは?具体例、注意点、申請手順を徹底解説」にてメリットの詳細を書いていますので、ご興味があればお読みください。
⑤インターン(職場体験)先と職場探しの手伝い

5つ目のサービスは、「インターン(職場体験)先の紹介と職場探しの手伝い」です。
インターンを経験することで、就職後の職場定着がイメージしやすくなります。
実際の就職活動においても、あなたの病気・障害の程度、性格、適性、希望する待遇にあった職場探しをお手伝いしていますので、単独で活動をされている人に比べて活動を有利に進められるでしょう。
また、就労移行支援事業所では、実際の通所者が就職した業界や職種の紹介もしています。
あなたが就職を希望している業界での採用実績があるかを確認しつつ、相談してみてください。
不安を解消!就労移行支援を利用して就職するためのポイント7点
最初にもお伝えしたとおり、「就労移行支援を利用しても就職できないんじゃないか」という不安の声をお聞きすることがあります。
ですが、大丈夫です。
あなたに合った事業所を選ぶ、治療を継続するなどのポイントを押さえて、支援を受けつつ就職活動に望めば、あなたに合った就職先を見つけることができます。
この章では、キズキビジネスカレッジ(KBC)の知見と参考書籍に基づき、就労移行支援を受けて就職を実現するためのポイントを、7点ご紹介します。
ただし、ご紹介するポイントを全て網羅していなければ就職できない…というわけではありません。
「こういうポイントに気をつけて就職していった人がたくさんいる」という安心材料にしていただいた上で、「あなたの就職」については、就労移行支援事業所にしっかり相談しながら進めることで、よりよい方向に進んで行けると思います。(参考:木津谷岳『これからの発達障害者「雇用」』)
ポイント①自分に合った事業所を選ぶ

1点目は、「自分に合った事業所を選ぶ」ことです。
就労移行支援事業所を選ぶ際には、支援員への相談、見学、体験通所を重ねて、ご自身の目で事業所を判断することが、何よりも大切です。
先述のとおり、支援内容や雰囲気は「ウェブサイトだけ」で判断せずに、少しでも気になる部分があれば、(可能な範囲で)実際に話を聞いたり見学に行ったりしてみましょう。
前もってご自身の目で確認すれば、事業所の雰囲気や支援の内容を把握しやすくなるため、通所中のミスマッチを減らすことができます。
あなたの状況に即して、より効果的な就職支援を受けることができますので、規模や評判の実で判断するのではなく、「自分に合っているかどうか」という視点で事業所を選ぶようにしましょう。
あなたに合った事業所の見つけ方は、次章でさらに詳しく紹介します。
ポイント②治療を継続して状態を安定させる
2点目は「治療を継続して状態を安定させる」です。
就職活動の準備が始まると、忙しくなることもあり、「もう通院をしなくてもいい」と自己判断で治療をやめる人がいます。
しかし、いざ就職活動が始まると、ストレスや疲労のせいで、また体調を崩すことも珍しくありません。
また、一般雇用にせよ、障害者雇用にせよ、面接担当者は「安定して働けそうか」という点を見ています。
それゆえ、治療を継続して調子を安定させることは、二重の意味で寛容です。
あなたの健康だけでなく、「就職を成功させる」という観点からも、治療を続けて安定した状態を保つことを忘れないようにしましょう。
ポイント③就職までの期間に余裕を持つ

「就職までの期間に余裕を持つ」というのも、重要なポイントです。
逆の言い方をすると、「就職を焦るあまり、自分の性格・関心と合致しないお勤め先にエントリー・就職することは避けましょう」となります。
短期間のうちに合わない仕事への志望動機を考えるのは難しいですし、面接などもうまく行えない結果、「不採用」が増えていき、プレッシャーが増えていきます。
仮に採用となっても、仕事内容や職場の雰囲気が自分に合わなければ、ミスマッチゆえに、苦しい思いや不本意な短期離職につながることもあるのです。
焦る気持ちはわかります。
ですが、せっかく就労移行支援を受けるのであれば、焦らずに「自分についての理解」を深め、より自分に合った仕事を探しましょう。
ポイント④特性や症状を理解して仕事を探す
前項とも関連しますが、4点目のポイントは「自分の特性や症状を理解して仕事を探す」です。
特に、発達障害のある人は、得意・不得意のムラがはっきり出やすい傾向にあります。
まずはご自身の特性を理解することがポイントです。
一般論としては、ADHDであれば、ミスを咎められない寛容な職場や、発案力が活かせる職種が向いているでしょう。
同様に、ASDであれば、対人折衝の求められない職場や、「こだわりの強さ」を活かせる専門職が向いているかと思います。
また、発達障害でなくても、うつ病などの精神疾患がある場合は、体調や調子の波にああわせて勤務形態を調整できる、労務管理の柔軟なお勤め先だと無理なく働けるかもしれません。
いずれにせよ、就労移行支援を受ける過程で、ご自身の特性や病状を理解しながら、仕事を探すことをオススメします。
ポイント⑤志望する業種・業界を絞り込みすぎない

前の項目で「自分に合わないお勤め先であってもエントリーすること」の難点を挙げましたが、「志望する業種・業界を絞り込みすぎる」こともまた問題です。
業種や業界を限定しすぎると、求人数自体が限られますし、条件によってはその少ない枠に応募が殺到して、競争率が上がります。
また、就職後に想定と異なる業務を与えられたときに抵抗を感じる可能性もあります。
このように、「志望する業種・業界の絞り込みすぎ」にもデメリットが予想されるのです。
「現時点で興味のない業界・業種」についても、調べたり支援を受けたりするうちに、次第に興味を持ったり、実は向いていたとわかっていくこともあり得ます。
最初から絞り込まずに、いろんな業界・業種について調べたり、就労移行支援事業所のスタッフに聞いたりしてみましょう。
ポイント⑥就職に対して、変に不安にならない
これまでに紹介してきたような注意点への対策は必要ですが、「就職に対して変に不安にならない」ことも大切です。
うつ病や発達障害による苦労や、その特性による退職経験があったりすると、就職や働くことに不安を覚える気持ちはよくわかります。
しかし、就労移行支援事業所では、スキル・知識、特性、生活、対策など、様々な「あなたのための支援」を受けることができます。
つまりあなたは、ご自身のことを理解して、どのような仕事をしたいのかを決める力、就職活動を進める力、実際に仕事をしていく力を身につけることができる、ということです。
「必要な対策」は行った上で、「こんな自分にできる仕事はあるんだろうか」「就職しても働き続けることができるだろうか」といった不安は持たず、就職に向けて積極的に進んでいきましょう。
ただしもちろん、不安に思うこと自体は不自然なことではありません。
その不安も、就労移行支援事業所のスタッフなどに相談することで、徐々に解消できると思います。
通所中に病状などが悪化した場合には、治療を優先することになりますが、病状が落ち着いたら再び就職に向かって進んでいけます。
変に不安にならず、就労移行支援の助けを借りながら、就職活動を進めていきましょう。
ポイント⑦雇用枠をしっかりと検討する

最後のポイントは「雇用枠をしっかりと検討する」です。
先述したように、雇用枠には大きく「一般枠」と「障害者枠」があります。
障害者枠とは、文字どおり障害者を対象として求人・雇用枠のことです。障害者枠ではない求人・雇用のことを一般枠と言います。
障害者枠では、発達障害の特性や病気の症状に対して、職場から業務量や業務内容への配慮が得られます。
障害者枠で働くためには、一般的に障害者手帳の所持が必要です。
実際に、障害者雇用で就職してから「働きやすくなった」と感じる人はいます。
ただし、一般枠に比べると、給与水準やキャリアパスに難点がある場合もあります。
障害や症状の程度や、あなたが「何を優先したいか」によっても、どちらの雇用枠が合っているかは変わってきます。
なお、ある企業にはクローズ就労・一般枠でエントリーして、ある企業にはオープン就労・障害者枠でエントリーする、といった方法も可能です。
就労移行支援事業所としっかり相談して、ご自身でも検討した上で、雇用枠を選びましょう。
不安を解消!就職に結びつく就労移行支援事業所を見つける5つのコツ
この章では、あなたに合った就職に結びつきやすい就労移行支援事業所、つまりあなたに合った就労移行支援事業所を見つける5つのコツを紹介します。
前提として、事業所を探すときには、自治体や専門機関にも相談したり、気になるところは(可能な範囲で)複数見学に行ったりすることが大切です。
というのも、就労移行支援の支援内容はバラエティに富んでいますので、独力やウェブだけで判断するのは難しいからです。
自治体や専門機関に相談すれば、あなたの病気や障害の特性、希望の職種などを踏まえた上で、あなたに合った事業所を紹介してもらえるかと思います。
また、見学に行くことで、実際の雰囲気もわかります。
就労移行支援に関する情報収集も兼ねて、自治体や専門機関の人の意見を取り入れるなど、詳しい人を頼りながら、以下のコツを実践していってください。
コツ①求めているサポートを実施しているか確認する

1つ目のコツは「あなたが求めているサポートを実施しているか確認する」ことです。
これまでにも述べてきたとおり、注力しているサポートやプログラムなど、事業所によって就労移行支援の内容は異なります。
あなたが求めているサポートがあるかを確認しましょう。
例えば、ASDのような発達障害に伴って、コミュニケーションスキルに不安を抱えている場合は、マナー講座、面接時の応答など、サポートが充実している事業所を選ぶのがよいでしょう。
「仕事に役立つPCスキルを学びたい」「簿記の講座を受けて経理職に就きたい」など、就職に向けて学びたいことが明確な人は、そうしたプログラムに力を入れている事業所が向いていると言えます。
事業所へ問い合わせたり、支援員に相談したりする際には、「あなたが必要とするサポートを実施しているか」「どんなサポートに力を入れているのか」を尋ねて、必要としているサポートを得られるか確認するようにしましょう。
ただし、これも前述のとおり、ウェブサイトや問い合わせだけではわからない「実際の雰囲気」などもあります。
また、ご自身のことをどう表現していいかわからなかったり、現時点で明確な希望がなかったりすることもあるでしょう。
ですので、可能な範囲で実際に見学に行ってみて、直接的にお話しすることをオススメします。
コツ②あなたの病気や障害へのフォロー体制を確認する
2つ目のコツは「あなたの病気や障害へのフォロー体制を確認する」です。
通常、就労移行支援事業所には、支援に関わる実務経験や資格を有する「サービス管理責任者」が在籍しています。
その上で、さらに社会福祉士や臨床心理士などの専門員を配置している事業所もあります。
精神障害がある場合であれば精神保健福祉士、身体障害の場合であれば介護福祉士など、「専門職の在籍があるかどうか」も、確認する上で重要なポイントの一つです。
こうした専門員が所属する事業所であれば、あなたの抱える病気や障害の実情に即した支援を受けやすくなるでしょう。
ただし、有資格者がいないと「適切な支援を受けられない」ということではありません。
有資格者はいなくても、基本的には各病気や障害に対応しているのが就労移行支援事業所だからです。
したがって「資格の有無」にこだわらず、あくまでも「あなたの病気や障害への対応状況や実績はどうか」を確認することに重きを置きましょう。
コツ③見学や体験通所をきちんとする

前項でも簡単に述べましたが、3つ目は、「見学や体験通所をきちんとする」です。
医師や病院との相性があるのと同様に、事業所の雰囲気や支援員との相性もあります。
就労移行支援事業所に無理なく通い続けて、就職を実現させるためには、あなたの性格と事業所の雰囲気、または支援員の性格が合っているかが大切です。
見学や体験通所をきちんとして、通所中のイメージを掴むようにしましょう。
また、他の利用者が、どんな様子で過ごしているかを確認してみるのも効果的です。
ぜひ様々な機会を活かして、あなたの性格とマッチした支援員が多くいそうな事業所を見つけてください。
コツ④通いやすい距離・場所を選ぶ
「通いやすい距離・場所を選ぶ」ことも、事業所選びには欠かせないポイントです。
あなたの希望を満たす就労移行支援事業所が見つかったとしても、遠方にある場合などは、通うだけで疲れてがたまり、就職活動が中々進まない可能性があります。
就職に至るまでには、ある程度の通所期間を要することが多いので、長く、そして無理なく通い続けることを想定して選びましょう。
通いやすい距離・場所かどうかを確認する方法としては、実際に事業所までの道のりを通ってみるなど、ご自身で試してみることをオススメします。
ただし逆に、家から離れることが気分転換になる、近くの事業所には通いたくない、などという場合は、現実的に通える範囲の中で少し遠いところを選ぶという方法もあります。
コツ⑤就職実績や定着実績を調べる

最後のコツは「就職実績や定着実績を調べる」です。
「この職業に就きたい」という考えがある人は、就労移行支援事業所への問い合わせの際に、希望する職種での就職実績があるかを、必ず確認しましょう。
例えば、プログラマーになりたいという明確なビジョンがある場合、プログラマーの就職実績が豊富な事業所に通うことで、より目的に合ったサポートを受けられるようになります。
なぜなら、プログラマーとして必要なスキルが学べる講習や、紹介できる就職先の候補がたくさんあることが予想されるからです。
また、就職実績だけでなく、「職場定着の実績」まで尋ねることが大切です。
職場定着の実績が豊富な事業所ほど、より実際的なカリキュラムを組んでいたり、あなたの特性・症状に合った就職先を勧めたりと、就職後を踏まえたサポートを行っている可能性が高いです。
ただし、実績のない事業所であっても、あなたが希望するサポートを実施したり、フォロー体制が整っていたりする場合もありますので、通所を決める際は「総合的に判断する」ようにしましょう。
就労移行支援を受けた人の就職事例
この章では、私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)の就労移行支援を受けて就職を実現した例を、2つ紹介します。
事例①高校入学後に引きこもりを経験、適応障害から希望職種への就職を実現

コミュニケーションが苦手なことをコンプレックスに感じていたOさんは、高校入学後のある日、突然学校に行けなくなり、7年間の引きこもりを経験します。
医師による診断では、適応障害ということでした。
引きこもりの状態から社会復帰をするために、アルバイトでの経験を積むことにしたOさんは、その過程で就労移行支援事業所の存在を知ったそうです。
そしてアルバイトからのステップアップを目指して自分に合った事業所を探す中で、スタッフの印象が良く、信頼できると感じたキズキビジネスカレッジ(KBC)への通所を決めました。
通所を開始したOさんは「Microsoft Office基礎講座」のほかに、生活習慣を変えるきっかけになった「睡眠講座」、スタッフとの「月一回の面談」を通じて、スキルとメンタルの両面から自信を付けていきました。
就職活動の段階では、面接や履歴書の書き方について客観的かつ具体的な指導を受けられたことが、大きな励みになったそうです。
Oさんはサポートを得ながら、希望する事務職への就職を実現しました。
事例②発達障害の診断を受けて料理人を断念、スキルを身につけて事務職に就職
Sさんはキズキビジネスカレッジ(KBC)に通う以前は、料理人として働いていました。
しかし、注文の多い時間帯に、注文を聞きながら料理を作るといったマルチタスクが苦手で、混乱してしまうことが悩みでした。
疲れやストレスが溜まって病院を受診したところ、発達障害が判明します。
同時に、職場への不適応から退職を決意しました。
退職後、発達障害の当事者会で就労移行支援について知ったSさんは、キズキビジネスカレッジ(KBC)に通所しながら「自分の強み」を見つけることにしました。
スタッフの指導を受けながら、Microsoft Officeソフトの使用を含むパソコンスキルを身につけているうちに、退職前に抱いていた「あきらめ」の気持ちが消えて、自信を持てるようになったそうです。
また、利用者同士のチームワークも、モチベーションの向上につながりました。
そして、支援員との相談を重ねるうちに、障害者雇用枠で就労することのメリットを知ったSさんは、パソコンスキルを活かせる職種での就職活動を開始し、事務職への就労を実現しました。
就職に向けて就労移行支援をご検討中の人からの、よくある質問
最後に、就労移行支援をご検討中の人から、よく受ける質問を紹介します。
ここで紹介している質問以外にも、気になる点をお持ちの人は多いと思います。
そういった人は、どうぞお気軽に、私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)にお問い合わせください。
また、コラム「就労移行支援とは?サービス内容から就労継続支援との違いまで解説」 にて、就労移行支援の詳細を書いていますので、ご興味があればお読みください。
①就職後もサポートを受けられる?

事業所によって異なります。
「就労定着支援」を行っている事業であれば、就職後もサポートを受けられます。
就労定着支援では、一般的な定期面談の他に、就職先での業務内容や業務量の調整といった、職場で長く働き続けるためのサポートが受けられますので、これまで仕事が続かないことでお悩みだった人には、特にオススメです。
障害者職業総合支援センターの統計によると、職場定着支援を受けた人とそうでない人で、1年後の職場定着率に「20%前後」の差が出ています。(出典元:障害者職業総合支援センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」)
②複数の事業所で支援を受けることは可能か?
同じ日に複数の事業所に通うことはできません。
そのため、複数の就労移行支援事業所に通所することは、通常は不可能です。
複数入所ではなく、体験入所で自分に向いているところを見つけたり、入所したけれど合わなかったりしたときには、事業所を変えることはできます。
③就職先が自分に合わなかったら?

就労移行支援事業所を利用して就職したけれど、結果としてその就職先が合わなかった場合は、退職して問題ありません。
就労移行支援サービスの利用期間内であれば、退職後も同じ事業所で再度支援を受けることもできます。
ただし、誰にも相談せずにすぐに退職することはオススメしません。
先述したように、職場定着支援の一環として、本人、就労移行支援施設、就労先の三者で、就労環境や待遇の変更に向けて話し合うことが可能ですので、まずは会社と就労移行支援施設に相談しましょう。
就職に向けた就労移行支援を受けたいならば、問い合わせや見学を通じて「あなたに合った事業所」を探しましょう

就労移行支援の概要から、就職を実現するためのコツやポイント、事例などを解説してきましたが、具体的なイメージが湧いてきたでしょうか?
繰り返しにはなりますが、前提として大切なのは、「あなたに合った事業所を探すこと」です。
就職に関するお悩みを率直に話してもらえれば、支援員もアドバイスがしやすくなりますので、まずは相談してみましょう。
その上で気になる事業所があれば、ぜひ、見学や体験通所を行ってください。
このコラムが、あなたの就職に結びつく就労移行支援事業所探しの助けになれば幸いです。
【最後に改めて…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%
就労移行支援を利用して就職するためのポイントを知りたいです。
一般論として、次の7点が挙げられます。(1)自分に合った事業所を選ぶ、(2)治療を継続して状態を安定させる、(3)就職までの期間に余裕を持つ、(4)特性や症状を理解して仕事を探す、(5)志望する業種・業界を絞り込みすぎない、(6)就職に対して、変に不安にならない、(7)雇用枠をしっかりと検討する。詳細はこちらをご覧ください。
就職に結びつく就労移行支援事業所を見つける5つのコツを知りたいです。
一般論として、次の5点が考えられます。(1)求めているサポートを実施しているか確認する、(2)あなたの病気や障害へのフォロー体制を確認する、(3)見学や体験通所をきちんとする、(4)通いやすい距離・場所を選ぶ、(5)就職実績や定着実績を調べる。詳細はこちらをご覧ください。