ひきこもりの履歴書の書き方と面接対策〜ひきこもりから社会復帰への道(11)〜

こんにちは。ひきこもり経験者の橋本大樹です。
私は6年のひきこもり期間を経て、社会復帰のために少しずつ行動してきた者です。
私の経験や、長年ひきこもり支援を行ってきた「株式会社キズキ」の知見にもとづくと、ひきこもりの方には以下のお悩みがあるかと思います。
- このままでいいとは思っていないけど、何から始めたらいいのかわからない...
- 誰も味方がいない気がして、不安で動けない...
- 働いたり、施設に通ってみても、続かないのではないか...
- 無職の期間があるか、働いたことがなく、就職に希望を持てない...
これらの問題を解消してひきこもりが社会復帰する方法を、段階ごとにご紹介していきます。
今回はひきこもりから就活の準備をする方法、特に履歴書の書き方や面接の対策方法について解説します。
ひきこもりの方の社会復帰を目指すきっかけに、少しでもなれば幸いです。
※この記事は、シリーズ「ひきこもりから社会復帰への道」の第11弾です。
前回のコラムは下記よりご覧ください。
シリーズ全体のまとめは下記よりご覧ください。
目次
ひきこもりからの就職活動で大切なことは、履歴書の書き方と面接対策

ひきこもりからの就職活動で大切なことの一つに、「履歴書の書き方と面接対策」があります。
まず、就活のための作文法や面接での伝え方は、一般に日常生活で行っている型とは異なります。
次に、ひきこもりの経験についてどう話すか(または、話さないか)などを検討する必要があります。
就職活動の経験がない方であれば、就職活動の型に慣れるまでに時間を要するでしょう。
大まかでもいいので、文章構造の形式に沿って、作成してみてください。
また、文章作成後は、本格的に就職活動を始める際に、改めて修正を行ってください。
就労計画を進める上で、書類や面接で伝える内容が変わることもあるからです。
また、採用側へのアピールの仕方も、職種や業種、職歴の有無によって多少変わってきます。
したがって、ここでは、文章作成や面接の大まかなコツをお伝えします。
詳細な履歴書作成方法や面接対策については、ハローワーク・エージェント・就労移行支援などのサービスを利用しましょう。
サービスを利用しながら、書類作成や面接対策を行ってください。
ひきこもりの履歴書の書き方と面接対策における原則2点

面接や書類作成における2つの原則をお伝えします。
原則①具体的に伝える
自分が伝えたい内容は、具体的にしましょう。
具体的に伝える理由は、採用側に納得感を与えられるからです。
具体的な説明とは、理由や事例などを交えて、論理的に話すことを指します。
論理的に話すと、採用側は、就職希望者のことを理解しやすくなります。
したがって、コミュニケーションが円滑になります。
そして採用側に、以下の印象を与えることができます。
- 他人視点で説明できている
- 仕事を滞りなく進めてくれそう
- 業務上の人間関係づくりもできそう
原則②簡潔に伝える
自分が伝えたい内容は、簡潔にしましょう。
簡潔に伝える理由は、採用側の記憶に残るからです。
書類作成で言えば、履歴書やエントリーシートは、記載スペースがそもそも限られています。
また、採用側は、多くの就職希望者の書類を見ています。他の業務の合間に時間をつくって見ることも少なくありません。
そういった中で、端的な文章で書かれた書類を見ると、「こちらの忙しい事情を汲んでくれている。他者視点で考えられる人かもしれない」と、採用側は好印象を受けます。
面接で言えば、簡潔に伝えると、採用側にストレスを感じさせにくくなります。
1分以上の話は、興味を強く引くような話し方でない限り、面接担当者を飽きやすくします。
長く話しても、面接担当者の記憶に残るのは大まかなあらすじくらいです。
そのため、就職希望者は、前もって、伝える内容を整理しておく必要があります。
また、集団面接の場合は、他の就職希望者が話す時間も考える必要があります。
ちなみに、話すのが苦手でも、面接を上手くやることは可能です。
前述のとおり、相手に好印象を与えるには、たくさん話すよりも、端的に話すほうが重要だからです。
ひきこもりの履歴書の書き方

具体的かつ簡潔に書類を書くには、文章を構造化して、組み立てる必要があります。
各書類の共通するポイントは、下記のとおりです。
- 文字数の目安は、400字以内
- 決めたテーマに沿って、文章構造に当てはめながら作成する
- 「自分が採用側にアピールしたいこと」を、話の着地点にする
- アピールしたいことを証明できるような角度で、過去の経験を切り取る
- 「過去から学んだこと」、「今後どうしていきたいか」など、前向きな表現にして書く
- 一般的に伝わりやすい言葉で書く。
- 専門用語は、できるだけ避ける。どうしても必要な場合は、補足説明を加える。ただし、短文で分かりやすく説明することが重要
- 数字で表せる実績があると、なおいい
ここでは、以下の3つの質問への答え方をご紹介します。
①自己PR
- 固定的な自分の強み(環境や時代に左右されない強み)をアピールする。
- 結論
- 過去(エピソード)
- 現在(具体例)
- 未来(就職後の貢献の仕方)
自己PRの文章作成のコツ
1.結論
・長所を1文で簡潔に表現する。
2.過去(エピソード)
・結論を証明する根拠として、過去のことを具体的に書く。
- 「どんな環境に属していたことで、長所が育まれたのか」
- 「自分が行動を起こした動機は何か」
- 「自分の行動の背景には、どのような意図や目的があったのか」など
3.現在(具体例)
・「その強みが、どのように発揮されたか」、「今の自分にどう影響を与えているか」を書く。
- 成功、達成、他者への影響などの事例
- 自分の強みが発揮された結果、もたらされる効果
4.未来(入社後の貢献の仕方)
・「就職後、社内で強みをどのように活かしていきたいか」を書く。
・応募の前段階であれば、まだ書かなくてもいい。
<自己PRの文章作成の例>
1.
私は、人に教えて助けることに、やりがいを感じます。
特に、相手が困っているときほど、教えることで助けたいと思います。
2.
具体的なエピソードとして、中学時代に、私が友人に勉強を教えたことで、テストでいい点を取れたことがあります。
きっかけは、同じクラスの友人が、「テストが憂うつだ」と嘆いていたことでした。
私が話をさらに聞くと、友人は「特に社会が苦手だ」と言っていました。
私は友人を助けたいと思ったので、友人を自宅に招いて、一緒に勉強することにしました。
3.
その結果、テストの結果が毎回40点代だった友人が、初めて70点代を取りました。
友人が嬉しそうにしていたのを、今でも覚えています。
この経験が、今の私の行動にも、影響を強く与えています。
精神障害の当事者が集まる雑談会では、困りごとに対して、私が知っている制度や相談先を教えています。
4.
就職後も、困難を抱えている人の気持ちに寄り添いながら、支援していきたいと思います。
②ガクチカ(過去に頑張ったこと)
「ガクチカ」とは、「学生時代に力を入れたこと」の略語です。主には新卒採用時の使われる言葉ですが、ここでは、学生時代も含めて「過去に頑張ったこと」として紹介します。
- 自分の中にある可変性や成長性、環境への適応方法、環境や状況への対処方法などをアピールする。
- 前職がある場合は、前職の話で考える。
- 結論
- 背景や状況
- 打ち込んだこととその理由
- 結果と教訓
<ガクチカの文章作成のコツ>
1.結論結果と教訓
・過去の経験を挙げ、「何を頑張ったか」を端的に書く。
2.背景や状況
・ABどちらかの方針を選んで、書いていく。
Aの方針:周囲(環境・状況・人など)を変えようとしたエピソード
Bの方針:自分を変えて、適応しようとしたエピソード
A:困難な状況に直面した背景と経緯
B:自分の内面にあった問題とその背景
3.打ち込んだこととその理由
A:困難な状況を変えようとした動機と、変えるための具体的な行動
B:自分を変えようと思ったきっかけや理由と、変えるための具体的な行動
4.結果と教訓
・挑戦した結果が失敗したり、自分をあまり変えられなかったとしてもOK。
・ガクチカでは、過去の経験から「何を学んだのか」を伝えることが大事。
A:困難な状況に挑戦した結果と、そこから学んだこと
B:自分の内面を克服したことで、行動や結果がどう変わったか
<ガクチカの文章作成の例>
1.
私が学生時代に力を入れたことは、高校の部活動です。
2.
きっかけは、私が1年生のときに、合唱部のコンクールで予選敗退したことでした。
それを機に、顧問の指導が厳しくなりました。
私は、顧問の厳しさに耐えがたくなり、逃げ出したくなりました。
3.
しかし、私は歌うことが元々好きでしたし、先輩も私の気持ちに寄り添ってくれたので、やり続けようと決心しました。
顧問の指導による合唱練習が終わった後も、私は練習を毎日一人で行いました。
ピアノを使いながら、音程を一音ずつ、丁寧に合わせることを意識しました。
4.
これを1年間続けた結果、見違えるほど歌唱力がつきました。
顧問が招いた外部講師からも、「こんな上手い生徒いたっけ」と言われたのを、今でも覚えています。
私はこのことから、課題を細分化することと、解決策を継続して実行していくことの重要性を学びました。
③志望動機
<志望動機のポイント>
自分の価値観と、企業の価値観の共通点を書くやり方が、最もおすすめです。価値観とは、互いの「信念(譲れないこと)」だからです。よって、自分と企業の価値観が合えば、それだけ志望動機に説得力が増します。
自分の価値観=仕事の目的(大事なこと)
企業の価値観=企業理念や「代表からのメッセージ」などから読み取れること。
- 自分の価値観と絡めながら、「未来における、仕事人としての自分の成長」を想像しながら作成する。
- 長期雇用での就職を目指す場合は、10年後20年後を視野に考える。
- 自分の未来が想像できない場合は、企業のビジョンや成長目標を調べる。
- 企業の成長目標は、企業ウェブサイトにある「IR情報」などの投資家向けの情報を参考にしてみる。
- 「求める人物像」などの、就職希望者向けの情報を参考にしてもいい。
- 企業の未来に合わせて、自分の未来を想像してみる。
- 「入社後にやりたいこと」を、自分がやりがいを感じることを踏まえて考える。
- 主張
- 企業選びの軸
- やりたいこと
- 理由
<志望動機の文章作成のコツ>
1.主張
・志望する最大の理由を書く。
・その企業ならではのやりたいこと、達成したいことを書く。
2.企業選びの軸
・業界と自分の経験の接点や、興味を持ったきっかけを書く。
・企業を選ぶ上で譲れないことを書く。
・その理由や背景も書く。
3.やりたいこと
・「入社後、企業の価値観(企業理念や方針、成長目標)に対し、業務でどう貢献していくつもりか」を、自分の長所と関連付けて書く。
・長所となりそうな強み(得意なこと)や、独自のコンセプトやアイデアを具体的に提示する。
4.理由
・「企業に貢献することは、自分にとってどんな意味があるのか」を書く。
<志望動機の文章作成の例:株式会社キズキへの就職を希望する場合>
1.
貴社の公民連携事業部で、私の社会福祉士の知識を活かしていきたいと思っています。
2.
私は、「生きづらい人たちの抱える課題を解決していきたい」と考えているからです。
貴社のウェブサイトを拝見したところ、「様々な生きづらさに寄り添う事業の創造」を行っていらっしゃるとありました。
私自身も、生きづらさを抱えた一人でした。
過去の挫折経験から、ひきこもり生活を5年間送っていました。
ひきこもりから抜け出す過程で、様々な方たちにお世話になってきました。
その方たちとは、主治医や福祉職員や、私と同じ悩みを抱えている当事者です。
3.
また、私からも、少しでも生きやすくなるような情報を、同じ悩みを抱えている方達に積極的に教えていました。
4.
貴社に入社後は、社員の方たちに協力をしながら、生活困窮者やひきこもりの方たちが、福祉制度の利用によって安心できるようにしていきたいです。
(参考にした企業の価値観)
- 「何度でもやり直せる社会をつくる」
- 「事業を通じた社会的包摂」というミッションを掲げ、様々な生きづらさに寄り添う事業の創造と拡大を自らの役割と考えています。
- 生きづらさを抱えた人たちがいる限り、私たちは新しい事業を生み出し、一人ひとりの課題に寄り添い続けていきます。
- 自主性を尊重する社風
- 「チームで働く力」を重要視
ひきこもりの面接対策

面接で適切な返答をするには、実際に受け答えをして慣れることが大事です。
面接で聞かれる質問には、様々なものがあります。
- 面接での一つの回答の目安は、20〜30秒。
- 「私」という主語で普段話さない人は、いつもの主語が出ないように気をつける。
- 会話のキャッチボールをして、面接相手とのやりとりの回数を増やせるようにする。
- 会話に余白を残しておく。余白を残して、相手が聞きたいことを聞いてもらうようにすると、採用側の質問の意図をあまり考えずにすむ。
- 聞かれたことだけに答える。そのため、結論を話すことが、もっとも重要になる。
- 結論以外の発言は、聞いてほしい端的な情報を、いくつかひそませておく。
- 面接相手に、自分が話したいことを聞いてもらえるようにする。
- 人間には元々、初対面の人を、見た目や声色で判断する傾向があるため、明るくハキハキ話したり、服装を整えることを意識する。
- 話す内容などに関しては、好印象の判断基準は、企業や面接相手の価値観によると意識する。
- いつもの話し方より、声の高さを上げる。
- 自分が伝えたいワードのときだけ、強調して言う。
- 言葉尻は、曖昧だったり早口になりやすいので、最後までゆっくりと言い切る。
- 声量を上げるのが難しい人は、話し方に工夫をする。
- 一般的に好印象なやり方がどうしても難しい場合は、第一印象に左右されにくい仕事を探す(スタートアップ企業、外資系企業など)。
- 障害者雇用での就職を目指すのであれば、話し方や表情などが障害由来の場合は、企業へ希望する配慮事項として伝える。
よって、ここでは、以下の2つの質問の答え方だけを記載しています。
①自己PR
- 10秒を目安に結論を話してから、一度間を置く。
- 残りの10秒~20秒で、自己評価や他者評価を伝える。
- 話す速さは、10秒を目安に言い切る。
- 複数の環境での他者評価を話すと、より興味を持って質問をされやすくなる。
<自己PRの話し方の例>
私は、人を手助けすることができます。
友人からは、「人の悩みに対して、毎回気持ちを汲もうとしている。解決案が思い浮かぶときは、積極的に教えている」と言われています。
私自身としても、相談してくれた相手を安心させられたときは、嬉しくなってやりがいを感じています。
この強みを活かして、貴社に入社後も、社会的に困りごとを抱えている方の悩みにも寄り添っていきたいです。
また、共に働く社員の方の課題解決も積極的にお手伝いしていきたいと思います。
②ガクチカ(過去に頑張ったこと)
- 結論を伝える
- 成果や結果を伝える
- 10秒を目安に結論を話してから、一度間を置く。
- 残りの10秒~20秒で、「気づき」「学び」「成長」の内のどれかを伝える。
- エピソードなどの過程は手短に、骨子だけが伝わるようにする。
<ガクチカの話し方の例>
私が学生時代に努力してきたことは、高校の合唱部での活動です。
歌唱力の向上に努めた結果、1年後には、部外の人も見違えるほど、上達することができました。
私はこのことから、自分に抱える課題についてしっかりと考えれば、解決することができることを学びました。
まとめ:あなたが前を向いて行動を起こすきっかけに

ここまで、ひきこもりからの就職活動につき、特に書類作成と面接について解説してきました。お読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、あなたが前を向いて行動を起こすきっかけになることを願っています。
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『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』 八木 仁平著
『「とりあえず」就職するための本』 しまだ やすひろ著