学習障害の人が仕事でできる対策を5つの観点で紹介〜サポート団体なども紹介〜 | キズキビジネスカレッジ  

学習障害の人が仕事でできる対策を5つの観点で紹介〜サポート団体なども紹介〜

※この記事と同じ内容を、学習障害の人にも読みやすいとされるフォント「UD デジタル 教科書体」を用いたPDFで公開しています(PDF版はこちらをクリック)。

※学習障害の特性上、この記事の内容を独力で読み進めることが大変な方もいらっしゃるかと存じます。ご家族や支援者の方と一緒に読み進めていただいても問題ありません。あせらず、ゆっくりお読みください。

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ利用者の永嶋祥三(仮名)です。この記事は、「仕事をしている、学習障害のある人」に向けた記事です。

学習障害は、「勉強する子ども」によく見られるもの、と思われがちですが、子どもの頃から学習障害のある人が大人になって、仕事に就いてから困り事に直面する、というケースも珍しくありません。

今、この記事を読んでいるあなたも、働いていく中で、次のような困り事を抱えているかもしれません。

  • 会社の書類がうまく読めない…
  • 上司の話をメモできない…
  • 計算ができず作業が進まない…

こういったお悩みも、働き方に少し工夫を加えるだけで解決できるかもしれません。

この記事では、学習障害のある人によくある仕事上の困り事と、その対処法についてまとめました。また、学習障害のある人にオススメのサービス・雇用形態や、学習障害のある人が困り事について相談できる支援機関についても、あわせてご紹介します。

この記事を読むことで、仕事上の困り事を解消し、充実した社会生活を送れるようになると思います。

【本文に入る前に…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?

「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。

キズキビジネスカレッジ(KBC)を利用した方は…

初任給
うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
就職までの期間
通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
就職率
通常52%のところ、
KBCでは82%

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2022年7月現在9校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

学習障害のある人が抱えやすい仕事上の困り事5選と、その対処法・対策

この章では、学習障害のある人が抱えやすい仕事上の困り事の例と、その対策を、次の5つの観点からご紹介します。

なお、この章の内容は、以下の参考文献の内容に、キズキビジネスカレッジのスタッフの経験に基づいた見解を付け加えたものです。

参考文献

困難①仕事の資料・マニュアルなどの文章を正確に読み込むことが難しい

困難①仕事の資料・マニュアルなどの文章を正確に読み込むことが難しい

文字(メール、資料、マニュアルなど)をうまく読み進められない方は、特性に応じて、以下の対処法を試してみてください。

対処法(1)読んだ部分に蛍光ペンなどで色を引いていく

長い文章でも、時間をかければ読み進められるという方は、蛍光ペンなどを使ってみるとよいでしょう。文章に色を引きながら読み進めていくと、今読んでいる箇所が分かるため、文の読み飛ばしを防げます。

最近では、「カラーバールーペ」という文具も販売されています。カラーバールーペは、文の一行分を拡大し、色を引いたような状態にできるものです。書き込みができない書類を読む場合に役立ちます。

また、Wordでパソコン文書を読む際は、「ホーム」タブ→「フォント」の中にある「蛍光ペン」の機能を使用することができます。

蛍光ペン

対処法(2)文字のフォントを変更してみる

デジタル文字を読むのは不得意で、手書きの文字なら読めるという方は、文字のフォントを手書き風のフォントに変更してみるのがよいでしょう。

最近では、「ユニバーサルデザイン書体(UD書体) 」というフォントが登場しています。ユニバーサルデザイン書体は、「文字のかたちがわかりやすいこと」「文章が読みやすいこと」「読み間違えにくいこと」をコンセプトに開発されたフォントです。

ユニバーサルデザイン書体の一つである「UD デジタル 教科書体」は、読み書きが不得意な方に配慮したフォントです。具体的には、手書き文字のような形を保ちつつ、線の太さの強弱を抑える、文字の空白部分を広くする、などといった工夫が施されています。

Windowsのパソコンの場合、「Windows 10」以降のバージョンであれば、「UD デジタル 教科書体」が標準搭載されています。デジタル文書を読む際は、試しに使用してみるとよいでしょう。

とは言え、全ての人にユニバーサルデザイン書体が合っているとは限りません。あなたが一番見やすいと思う書体を、ぜひ探してみてください。

この記事の全文を「UD デジタル 教科書体」に変更したPDFファイルはこちらです。

対処法(3)職場の人や読み上げソフトに文章を読み上げてもらう

文字を全く読めないという方は、資料やマニュアルの内容を、口頭で説明してもらうよう、上司など職場の人に相談してみましょう。職場の人に頼みづらいという場合は、音声読み上げができるソフトやアプリを利用してみるのもよいでしょう。

Wordの文書を読む場合は、「表示」タブの中にある、「イマーシブ リーダー」の機能が便利です。「イマーシブ リーダー」をクリックし、読み上げてほしい箇所をドラッグしてから「音声読み上げ」をクリックすると、選択した文の読み上げが行われます。

また、メールなどの文を読む際も、文をコピーしてWordに貼り付けることで、「イマーシブ リーダー」の機能を利用することができます。

イマーシブ リーダー

対処法(4)文書やメモに図解や表を使う

文字情報を視覚的なイメージで理解するようにすると、理解力が上がります。「イラストを描くことで、素早くメモを書けるようになった」という方もいます。

困難②業務のメモを取ることが難しい

書き取りが難しい方は、「手書きのメモ」にこだわる必要はありません。以下で紹介する道具を用いて、無理なく確実に記録することを心がけましょう。

対処法(1)ボイスレコーダーで録音する

口頭での指示を受ける際は、専用のボイスレコーダーやスマートフォンのアプリなどを使って録音するとよいでしょう。ボイスレコーダーには録音した日時も自動で記録されるため、データの検索もすぐにできます。

なお、「録音が問題視される状況」もあるため、録音の前には必ず相手に相談しましょう。

対処法(2)カメラで写真撮影する

会議でホワイトボードなどに板書された内容は、スマートフォンなどのカメラで撮影するとよいでしょう。会議が終わったタイミングや、会議中に消されそうになった際などに、相手の許可を取ってから撮影するようにしましょう。

対処法(3)動画で撮影する

道具の使い方や挨拶の仕方など、手順の多い動作を記録する場合は、動画で撮影するとよいでしょう。録音同様に、撮影は、事前に相手に相談してから行うようにしましょう。

困難③時計が読めず、時間管理が難しい

困難③時計が読めず、時間管理が難しい

時計を読むことが不得意であり、会議などの予定時間の管理が難しい方は、以下の対処法をお試しください。

対処法:アプリのリマインダー機能を使用する

時計による時間管理が難しい場合は、アプリのリマインダー機能を活用してみてください。リマインダーとは、予定や約束などを忘れないように、指定の時間にメールやメッセージ、アラームなどで通知してくれるもののことを言います。

リマインダー機能を活用することで、時計に頼らなくても、予定や約束の時間が近いことに気づきやすくなります。

リマインダー機能は、「Googleカレンダー」や「Lifebear」などのスケジュール管理アプリで使用することができます。また、iPhoneのスマートフォンには、「リマインダー」アプリが標準搭載されています。

困難④自分の力のみで計算を行うことが難しい

仕事上で金額などの数値データを計算する場合、自力でうまく計算を行うことが難しい方は、以下の対処法を行ってみてください。

対処法(1)電卓や電卓アプリを使用する

ちょっとした確認のために計算をするときは、電卓を活用しましょう。自分の計算が合っているか確かめたい場合は、職場の人に話して、ダブルチェックを行ってもらうようにすると、なおよいです。

計算の途中式に間違いがないか、ご自身で確認したい場合は、スマートフォンの電卓アプリが便利です。電卓アプリの中には、計算中に途中式が表示され、さらに計算結果を履歴に残すことができるものがあります。計算間違いをしても、どこで間違えたのかを確かめることができます

一例として、「計算機+式が見える電卓」というアプリには、途中式の表示や履歴の記録に加え、履歴の計算式を編集する機能があります。そのため、計算式の間違えた箇所のみを訂正することができます。

対処法(2)自分にとって難しいと感じたら丁重に断る

数値データを扱う業務は、正確さが求められる場合が多いです。職場で数値データの管理などの業務の依頼があったときは、正直に障害の事を話し、他の人に任せてもらうように頼んでみることも大事です。

無理をして取り組むと、業務に支障が出る上に、結果的にあなたの心理的負担にもつながってしまう事もあります。「できないこと」を無理して行うよりも、「できること」に取り組んでいくことを意識するとよいでしょう。

困難⑤自分の考えをまとめるのが苦手で、会議などで提案ができない

困難⑤自分の考えをまとめるのが苦手で、会議などで提案ができない

この困難は、学習障害に限らず、発達障害の人全般に見られる傾向です。「提案したいこと」は頭の中にあるはずなのに、それを「発言」の形にまとめて提案することが苦手…という状態です。

対処法:あらかじめ、自分の考えをまとめた原稿などを作成する

「提案したいこと」があるなら、会議の前に、「自分が読みやすい形の原稿」を作成しておきましょう。会議中には、その原稿を確認しながら発言することで、スムーズに提案ができるようになります。

対処法を行うには、職場の人の理解が必要です

ここまで、学習障害のある人によくある仕事上の困り事と、その対処法についてご紹介しました。

学習障害(LD)の特性の現れ方は、人によって差があり、それぞれ「できること」「できないこと」は異なります。そのため、自分の特性を正確に知り、リストを作り、自分が特に苦手な分野を書き出してみて提示する、という方法もあります。

その上で、「職場の人に理解を求めること」で、対処法は、より実施しやすくなります。職場の人の理解を得ることができれば、不得意な作業への援助を受けやすくなります。また、不得意な作業を極力行わなくて済むように配慮してもらえることもあります。

理解を求めるための具体的な方法の例としては、ナビゲーションブック(障害のある人が、自分の特徴・特性・対処法・配慮してほしいことをまとめたもの)の活用があります。(参考:障害者職業総合センター「支援マニュアルNo.13 発達障害者のワークシステム・サポートプログラム  ナビゲーションブックの作成と活用」)

学習障害のある人にオススメのサービス・雇用形態

前章で、学習障害のある人が困り事の対処法を行うために、「職場の人の理解」が大事、とお伝えしました。職場の人に障害への理解を求めるときに、助けとなるのが、「精神障害者保健福祉手帳」です。

この章では、「精神障害者保健福祉手帳」と、手帳を持つことで利用できる「障害者枠」について説明します。(参考:『最新図解 大人の発達障害サポートブック(小野和哉/著, 2017)』)

①「精神障害者保健福祉手帳」取得のススメ

①「精神障害者保健福祉手帳」取得のススメ

職場で学習障害への配慮を受けたい、という方には、「精神障害者保健福祉手帳」の取得をオススメします。

「精神障害者保健福祉手帳」とは、精神障害を持っていることで日常生活・社会生活への制約がある人を対象とした、「障害者手帳」の一種です。学習障害のある人も、取得の対象に含まれます。

「精神障害者保健福祉手帳」を持っていることで、公共料金の割引や福祉手当の支給などのサービスが受けられるだけでなく、「障害者枠」で働くことができるようになります。

手帳の申請には、医療機関での初診日から6か月が経過している必要があります。また、申請してから手帳が手元に届くまで2か月程度かかります。

「精神障害者保健福祉手帳」の詳細については、コラム「障害者手帳のメリットとは?具体例、注意点、申請手順を徹底解説」もご覧ください。

②「障害者枠」を検討してみましょう

「障害者枠」とは、「障害者手帳」をお持ちの方限定の求人枠です。「障害者枠」は、厚生労働省が「障害者雇用率制度」に基づいて、雇用する労働者の中に一定率以上、障害のある人を雇用することを、企業などへ義務づけているものです。

働く側にとっての障害者枠の大きなメリットは、障害の特性に合わせた配慮をしてもらえる、という点です。本人が不得意な業務を極力行わず、得意な業務を主に任せてもらえるように業務内容を調整してもらいやすくなります。

職場によっては、就労後でも一般枠(障害者枠以外の雇用・求人枠)から障害者枠への移行が可能なところもあります。「障害者枠」を検討される場合は、職場の担当者に確認してみてください。

③「一般枠」でも、合理的配慮を受けることは可能

③「一般枠」でも、合理的配慮を受けることは可能

「一般枠であれば、特性に対する配慮を得られない」というわけではありません。一般枠でも、事業者(雇用側)は、病気・障害などへの合理的配慮を提供することが努力義務となっています(ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合を除く)。(参考:厚生労働省「平成28年4月(一部公布日又は平成30年4月)より、改正障害者雇用促進法が施行されました。」)

合理的配慮とは

事業主は、(略)募集・採用に当たり障害者からの申出により障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければなりません。また、(略)障害の特性に配慮した、施設整備、援助者の配置などの必要な措置を講じなければなりません。(略)(障害者雇用促進法第36条の2~36条の4)(参考:厚生労働省「事業主の方へ」)

「自身の学習障害の特性」と「興味のある求人」を考えて、「合理的配慮があれば、この一般枠で働きたい(働けそう)」と思った場合は、配慮の申請を行ってみるとよいでしょう。

ただし、どこまでが「合理的な配慮(義務の範囲)」なのかは曖昧な部分もあります。また、特に民間企業の場合は、「学習障害のある人の応募・勤務」が現実的には十分に想定されていないこともあります。

そうした部分についても、次章以下で紹介する支援機関に相談することで、適切な配慮を一緒に考えていくことができます。

学習障害のある人が気軽に利用できる支援機関4選

どのような働き方をするのであっても、専門の支援機関に相談する(つながりを保つ)ことは大切です。そうすることで、仕事以外の部分も含めて、「実際のあなた」の困り事への具体的な対策などが見つかっていくからです。

この章では、学習障害のある人が気軽に相談・支援を受けることができる代表的な機関として、次の4つをご紹介します。

①基幹相談支援センター

①基幹相談支援センター

「基幹相談支援センター」は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害・学習障害含む)のある人と、その家族を対象とした機関です。厚生労働省が市区町村に設置・運営を委託しています。

基幹相談支援センターの特色は、障害の種別や各種ニーズに合わせた「総合的・専門的な相談支援」を、主要な取り組みの一つとして挙げている点です。また、必要に応じて、医療機関や他の支援施設と連携しながら支援を行っていきます。

お近くのセンターは、インターネット検索で探したり、市区町村の役所に問い合わせたりすることで見つかると思います。(以上参考:厚生労働省※PDF「基幹相談支援センターの役割のイメージ」)

②障害者就業・生活支援センター

「障害者就業・生活支援センター」は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害・学習障害含む)のある人を対象に、自立に向けた支援を行っている機関です。厚生労働省や都道府県が、各地域の社会福祉法人や特定非営利活動法人へ設置・運営を委託しています。

「障害者就業・生活支援センター」の特色は、就業および日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問などを実施している点です。職場定着に向けた支援も受けることができます。

「障害者就業・生活支援センター」の全国一覧はこちらです。(以上参考:東京労働局「障害者就業・生活支援センターについて」)

③発達障害者支援センター

③発達障害者支援センター

「発達障害者支援センター」は、発達障害(学習障害含む)のある人への支援を総合的に行うことを目的とした専門機関です。都道府県、または都道府県知事が指定した社会福祉法人、特定非営利活動法人などが運営しています。

「発達障害者支援センター」の特色は、発達障害(学習障害含む)のある人の就労に関する相談に応じ、必要な場合はスタッフが就労先を訪問して、障害特性に合わせた助言や業務・職場環境の調整を行う、という点です。

それに加えて、発達障害(学習障害含む)のある人や、その家族の方の日常生活に関する相談も受け付けています。

「発達障害者支援センター」の全国一覧はこちらです。(以上参考:国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害者支援センターの事業内容」)

④地域障害者職業センター

「地域障害者職業センター」は、障害のある人それぞれの状況に応じて、就職に向けての相談や職業能力等の評価、就職前の支援、就職後の職場適応のための援助に至るまで、継続的なサービスを提供している機関です。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しています。

「地域障害者職業センター」の特色は、職場適応支援として、ジョブコーチ(職場適応援助者)を派遣し、障害のある人を職場で直接支援する、という取り組みを行っている点です。ジョブコーチによる支援期間は1~8か月です。この期間内で、障害のある人への適応支援、および職場の上司や同僚への支援方法の伝達などの活動を行います。

「地域障害者職業センター」の全国一覧はこちらです。(以上参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の方へ 就職支援・相談窓口」)

学習障害の人が仕事を探すためには、就労移行支援事業所もオススメ!

学習障害の人が仕事を探すためには、就労移行支援事業所もオススメ!

学習障害の人が就職・転職・再就職などを目指すときには、就労移行支援事業所の利用がオススメです。就労移行支援事業所とは、「病気や障害のある人の(再)就職・転職を援助する福祉サービス」のことです。

各事業所は、公的な認可を得た民間事業者が運営しています。そのサービス内容は、次のように多岐にわたります(一例であり、事業所ごとに様々なサービスを行っています)。

就労移行支援事業所のサービス
  • 転職のための知識・技能の習得
  • 履歴書・経歴書・エントリーシートの作成支援
  • メンタル面のサポート
  • 再就職・転職先候補や、職場体験実習(インターン)の紹介
  • 転職後の職場定着支援

利用の可否は、お住まいの自治体が、下記などに基づいて判断します。

  1. 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがある
  2. 18歳以上で満65歳未満の方
  3. 離職中の方(例外あり)

※上記を満たすなら、障害者手帳を所持していなくても利用可能です

ご自身が利用できるかどうかは、自治体や、各就労移行支援事業所に相談してみましょう。私たちキズキビジネスカレッジも、この就労移行支援に分類されます(ご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください)。

就労移行支援についてさらに詳しく知りたい方は、コラム「就労移行支援とは?サービス内容から就労継続支援との違いまで解説」をご覧ください。

学習障害の概要

最後に、学習障害とはどういった障害なのか、ということを、改めて説明します。(参考・出典『ニュートン式超図解 最強にわかる!!精神の病気 発達障害編(山末英典/監修, 2022)』)

すでに学習障害について理解できている方も、参考としてお読みいただければ幸いです。

①学習障害の特徴など

①学習障害の特徴
学習障害とは
  • 発達障害の一種です。読むこと、書くこと、計算することなど、特定の学習のみに困難が生じます(出典:厚生労働省「e-ヘルスネット 学習障害(限局性学習症)」)
  • 名称として、LD(Learning Disabilities)や、限局性学習症/限局性学習障害(SLD = Specific Learning Disorder)も用いられています
  • 学習障害は、知的障害とは全く異なるものです。学習障害のみがある人は、知的発達の遅れはありません(ただし、学習障害と知的障害の両方があることはあります)
学習障害の原因は
  • 学習障害の原因は不明です。現在のところ、「脳の機能障害」と考えられています。
  • 情報が目や耳から脳に伝達され、脳内で処理されるまでの過程で、何らかの問題が発生した結果であるとされています
  • 原因は、本人の努力不足、親の育て方、環境など「ではない」、ということは明らかになっています
学習障害との向き合い方は
  • 学習障害は、その人が生まれつき持っている、脳の「特性」の一つといえます。訓練などによって学習障害の程度が多少変化することはありますが、学習障害の特性が根本的になくなることはありません
  • しかし、あなたがご自身の学習障害の特性を理解し、不得意なことを補う手段をあらかじめ用意することで、学習障害と上手に付き合っていくことはできます

②学習障害の診断基準

学習障害は、「読む」「書く」「計算する」「推論する」のいずれかに困難が認められていることを言います。精神疾患の世界的な診断基準の一つである『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』では、学習障害の診断基準が以下のように詳しく示されています。

学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも1つが存在し、少なくとも6カ月間持続していることで明らかになる:

  1. 不的確または速度が遅く、努力を要する読字 (例:単語を間違ってまたはゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)
  2. 読んでいるものの意味を理解することの困難さ (例:文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)
  3. 綴字の困難さ (例:母音や子音を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)
  4. 書字表出の困難さ (例:文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)
  5. 数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ (例:数字、その大小、および関係の理解に乏しい、1桁の足し算を行うのに同級生がやるように数字的事実を思い浮かべるのではなく指を折って数える、算術計算の途中で迷ってしまい方法を変更するかもしれない)
  6. 数学的推論の困難さ (例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)

上記の引用文1の①から⑥のうち、どれに該当するかによって、学習障害は3つのタイプに分類されます。次項で詳しく見ていきましょう。

③学習障害の主なタイプ3つ

③学習障害の主なタイプ3つ

学習障害には、以下のように、主に3つのタイプに分かれます。

(1)読字障害(ディスレクシア)

目で見た文字や文章を「読む」ことに困難が生じる場合は、読字障害(ディスレクシア)に当てはまります。

具体的には、「読みの正確さ」「読みの速度」「読解力」のいずれかに困難が生じることをいいます。(前掲診断基準の①と②に当てはまります。)

特性の具体例
  • 形の似た文字を読み間違える(「ぬ」と「め」、「ね」と「わ」など)
  • 途中でどこを読んでいたのかわからなくなる
  • 読み飛ばしたり、文末を適当に変えて読んだりする

(2)書字表出障害(ディスグラフィア)

文字や文章を「書く」ことに困難が生じる場合は、書字表出障害(ディスグラフィア)に当てはまります。

具体的には、「字の綴りの正確さ」「文法・句読点の正確さ」「書字表出の明確さ・構成力」のいずれかに困難が生じることをいいます。(前掲診断基準の③と④に当てはまります。)

特性の具体例
  • 文字を正しく書けない、または書き写せない
  • 形の似た文字を書き間違える(「ぬ」と「め」、「ね」と「わ」など)
  • 左右が反転した文字を書く

(3)算数障害(ディスカリキュリア)

「計算する」または「推論する」ことに困難が生じる場合は、算数障害(ディスカリキュリア)に当てはまります。

具体的には、「数字の概念の習得」「数値の習得」「計算の習得」「数学的な推論」のいずれかに困難が生じることをいいます。(前掲診断基準の⑤と⑥に当てはまります。)

特性の具体例
  • 数の順番、または大小の理解が難しい
  • 暗算が難しい
  • 図形・グラフの読み取りが難しい

④「ごく一部の事柄に困難が生じる」のが学習障害

学習障害のある人は、上記の3タイプ全てに必ず当てはまる、というわけではありません。3タイプの中のどれか1つ、または2つに困難が生じている人もいます。「計算」のみが不得意、「読み」と「書き」が不得意、などといったように、人によって様々です。

また、1つのタイプの中でも、人によって得意なこと、不得意なことは異なってきます。例えば、一口に「読字障害」といっても、スムーズな音読が不得意な人もいれば、音読はできてもその内容を理解することが難しい、という人もいます。

このように、学習障害のある人は、学習する事柄が総合的に不得意というわけではなく、ごく一部の事柄に困難が生じる、というのが大きな特徴なのです。

⑤自分の「不得意」について理解することが大切です

⑤自分の「不得意」について理解することが大切です

学習障害でお悩みの方は、ご自身の不得意なことについて、詳細にまとめてみるとよいでしょう。不得意なことを理解することで、あなたのできること・得意なことが見えるようになり、「不得意なこと」を「できること・得意なこと」で補う方法を考えることにつながります。

あなたがご自身の不得意なことをまとめる際は、ご家族や支援機関の相談員、かかりつけの医師など、あなたの身近にいる支援者に相談し、一緒に考えてみることがオススメです。

まとめ:一人で抱え込まず、人やモノに頼ってみることが大切です

まとめ:一人で抱え込まず、人やモノに頼ってみることが大切です

この記事では、学習障害のある人が仕事上で抱えやすい困り事や、その対策法、さらに相談先として利用できる支援機関についてご紹介してきました。あなたのお悩みを解消できるような情報は見つかりましたでしょうか?

大事なことは、一人でお悩みを抱え込まずに、職場の人たちや専門の支援機関に相談しつつ、人やモノの助けを上手に借りることです。あなたの不得意な作業を、道具などを使って補っていくようにしてみるとよいでしょう。

ただし、無理はしすぎないようにしてください。道具を用いても難しいと感じる業務については、丁重に断ることもときには大切です。

職場の理解を得られない、または相談できる職場環境ではない、という場合は、「障害者枠」も含めて転職も考えてみましょう。

ぜひ、あなたが少しでも快適に仕事を進めていけるような環境づくりを、最優先に考えてみてください。

この記事の内容が、あなたの仕事上の困り事を解消する助けになることを祈っています。

【最後に改めて…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?

「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。

キズキビジネスカレッジ(KBC)を利用した方は…

初任給
うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
就職までの期間
通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
就職率
通常52%のところ、
KBCでは82%
よくある質問(1)

学習障害の自分が、仕事でできる対策を知りたいです。

次の5点について、対策を紹介します。(1)仕事の資料・マニュアルなどの文章を正確に読み込むことが難しい、(2)業務のメモを取ることが難しい、(3)時計が読めず、時間管理が難しい、(4)自分の力のみで計算を行うことが難しい、(5)自分の考えをまとめるのが苦手で、会議などで提案ができない。詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

学習障害の自分が利用できるサポート機関を知りたいです。

一般論として、次の5つが挙げられます。(1)基幹相談支援センター、(2)障害者就業・生活支援センター、(3)発達障害者支援センター、(4)地域障害者職業センター、(5)就労移行支援事業所。詳細はこちらをご覧ください。

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