精神障害者が雇用されるためにできること6選〜雇用状況や雇用後の留意ポイントも解説〜

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田淳平です。
精神障害のある人(統合失調症、気分障害、不安障害、適応障害、てんかんなどの人)の雇用状況は、年々よくなっていると言われています。
しかし、実際に精神障害のある人の中には、「本当によくなっているの?」「自分にも関係あるの」などと疑問をお持ちの人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、精神障害者の雇用の現状と課題について、徹底解説いたします。
雇用されるためにできること、雇用後に気をつけるべきことまで、あわせて紹介します。「精神障害と仕事」にお悩みであれば、ぜひ読んでみてください。
【本文に入る前に…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2022年7月現在9校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
執筆寺田淳平
てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→
目次
精神障害者の雇用の現状
精神障害者の雇用の現状は、「改善されつつある」というのが、一般的な認識です。
これには、2018年4月に、精神障害者が「障害者雇用の義務対象」に加わったことが関わっています。
求人・雇用の中には、「障害者を対象とする求人・雇用枠」である「障害者雇用枠」というものがあります。
障害者雇用枠ではない求人・雇用は、「一般雇用枠」と言います。
そして民間企業や自治体は、雇用している総労働者の数に応じて、障害者の雇用者数(率)が「法定雇用率」という一定の割合を満たすように、国の法律で定められています。
つまり、精神障害者が障害者雇用の義務対象に加わるということは、「精神障害者が雇用される機会がこれまでより増えた」ことを意味するのです。
障害者の「法定雇用率」は上昇中

その上で、障害者の法定雇用率自体も、年々上昇しています。
例えば、民間企業の法定雇用率は、定期的に以下のような見直しがなされてきました。
~1987年 | 1988年 | 1999年 | 2013年 | 2018年~ | 法定雇用率 | 1.5% | 1.6% | 1.8% | 2.0% | 2.2% |
---|---|---|---|---|---|
この民間企業での法定雇用率は、2021年3月までに「2.3%」に引き上げられることが決定しています。(参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「図16 民間企業における障害者雇用状況の推移(各年6月1日現在)」)
精神障害者の障害者雇用枠での雇用数は3年で2倍近くに
これまでに解説してきた、精神障害者の雇用状況の改善傾向は、実際の雇用数にも表れています。
2017年には42,028人だった障害者雇用枠での精神障害者の雇用数は、2020年には78,092人と3年で2倍近くまで増加しています。(出典:厚生労働省「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」)
精神障害者の雇用の課題は「職場定着」

しかしながら、精神障害のある人の雇用には、「職場定着」という課題が残っていると言われています。
2017年時点の障害者職業総合センターの調査によると、「精神障害者の職場定着率は他の障害に比べて最も低い」という統計結果が出ています。
具体的な数値としては、就職1年後の職場定着率が、身体障害で60.8%、知的障害で68.0%、発達障害で71.5%に対して、精神障害は49.3%となっています。(出典:障害者職業総合センター「障害者の就職状況等に関する調査研究」)
これまでの解説と併せてまとめると、「精神障害者の雇用状況は改善傾向にあるものの、雇用後の職場定着という課題は依然として残っている」というのが現状かと思います。
なお、精神障害のある人の職場定着には、後で詳しく述べるように、公的機関で実施されている「職場定着支援」を受けるのが有効と考えられています。
精神障害のある人が雇用されるためにできること6選
この章では、精神障害のある人が雇用されるためにできることを紹介します。
前提として大切なのは、あまり焦らずに、就職活動の期間を長めに見積もっておくことです。
精神不安がある場合には、焦燥感が精神的な重圧となってのしかかり、症状を悪化させる可能性があります。
また、焦りゆえに、実際には自分に合っていない就職先でも「採用してもらえるならどこでもいい」などと考えて、ミスマッチであっても、就職を決める場合もあるでしょう。
上記のような事態を避けるために、就職を焦らないことを心掛けてください。
①医師やカウンセラーに相談する

まずは「医師やカウンセラーに相談する」ことが大切です。
医師には、雇用・仕事・就職のことを相談しづらい、してもいいのか、と考える人もいます。
しかし、精神障害が就労可能な状態まで安定・回復しているかどうかを判断するのは、かかりつけ医です。
ですので、通常は就職に関わる相談にも乗ってもらえるはずです。
また、医師の診断と薬の服用に加えて、臨床心理士などによる定期的なカウンセリングも効果的です。
カウンセリングを通じて話をするうちに、自分でも気付かなかった考え方の癖を自覚することで、症状が改善されたり、就職活動のヒントが見つかったりするなど、様々なメリットが期待できるでしょう。
また、経過観察を続けることで、カウンセラーは、あなたの調子の波や傾向を指摘しやすくなります。
精神障害にお悩みの人は、医師による治療は継続しつつ、カウンセリングを受けることも検討してみてください。
②自分の障害の程度や症状の把握に努める
2つ目は「自分の障害の程度や症状の把握に努める」です。
自身の精神障害を明かして応募・就職する形の場合(これを「オープン就労」と言います)、面接でも、就職してからも、自身の症状や困りごとについて話す必要が生じます。
そうすることで、採用時も配属の際も、精神障害に対する配慮を受けやすくなります。
また、自分の精神障害を明かさずに就労する場合(これを「クローズ就労」と言います)でも、安定した状態で働き続けるためには、ご自身の症状や調子の波について、自己理解を深めることが重要です。
さらに、自分のことを理解していると、精神障害(及びその症状)という直接的な表現以外で、職場への要望などを伝えやすくなります。
その日の調子を段階評価で記録したり、日記を付けたりして、障害や特性の把握に努めましょう。
ただし、そうした「把握」や「開示」については、あなた一人ではなく、かかりつけ医や、後述する専門の支援機関の助けを借りることをオススメします。
③支援機関にサポートを求める

3つ目は「支援機関にサポートを求める」です。
精神障害のある人の支援を行っている専門機関は、たくさんあります。
公的な機関や、公的な認可に基づいて運営される機関で言えば、主に以下のものが挙げられます。
- 就労移行支援事業所
- 精神保健福祉センター
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 発達障害者支援センター(発達障害の特性が見られる場合のみ)
「就労移行支援事業所」は、精神障害や発達障害のある人が就職できるよう、包括的かつ継続的な支援を行っている支援所です。(内容が多岐に渡るため、次項「④就労移行支援事業所に通う」で詳述します)。
「精神保健福祉センター」では、精神障害の確定診断が下りていなくても、憂うつ感や抑うつ症状などがあれば、相談を受け付けています(全国の一覧はこちらです)。
「地域障害者職業センター」「障害者就業・生活支援センター」では、特に仕事面での悩みをお持ちの人に対して、職業相談などを受け付けています(前者の全国一覧はこちら、後者の全国一覧はこちらです)。
最後の「発達障害者支援センター」は、一見すると、精神障害とは無関係に思えるかもしれません。
しかし、先述したように、発達障害の傾向のある人は、特性に伴って、うつ病などの二次障害を患うケースが少なくないのです。
発達障害者支援センターでは、そういった人たち向けに電話相談などを受け付けていますので、発達障害が疑われる人は、問い合わせてみるとよいでしょう(全国の一覧はこちらです)。
上記の機関は、いずれも、基本的には無料でサポートを受けられます。
どの支援機関に相談すべきかわからない場合には、お住まいの市区町村の、障害福祉を担当する部署が窓口になっていますので、そちらに問い合わせてみてください。
④就労移行支援事業所に通う
就職を検討中の人は、特に「就労移行支援事業所に通う」ことをオススメします。
前述のとおり、精神障害のある人は、就労移行支援事業所で、就労に向けたサポートを受けることができます。
主な支援内容は、以下の5つです。
- 生活習慣改善のサポート
- メンタル面のケア
- 就労に関連するスキルの講習
- 実際の就職活動の支援
- 就職後の、雇用側との調整を含む職場定着支援(事業所による)
就労移行支援では、直接的な再就職に向けた支援だけでなく、生活面・メンタル面のサポートも併せて受けられます。
生活習慣改善、メンタル面のケアは、各事業所が行う「改善プログラム」や日常的な相談を通じて行われます。
スキル講習は、とりわけ事業所の個性が出るところです。
事業所によって、基本的なスキル(ワード・エクセル・軽作業など)、専門的なスキル(ビジネスレベルの英会話、プログラミングなど)、各種資格の取得など、重視している方向性・分野が異なります。
実際の就職活動の支援には、あなたに向いた仕事・働き方・就職先探し、模擬面接、雇用枠の検討、インターン先探しなどがあります。
職場定着支援では、就職後に、必要に応じて雇用側も交えながら、労働環境の調整などの様々なサポートを行います。
具体的には、支援員が定期面談を行い、業務内容や業務量などについて、被支援者とお勤め先の間で調整します。
ちなみに、2017年に行われた障害者職業総合センターの調査によると、定着支援を受けた人たちの1年後の職場定着率が66.4%に対し、受けなかった人たちの職場定着率は42.8%と、20%以上もの差が出ています。(出典:障害者職業総合センター「障害者の就職状況等に関する調査研究」)
相談・見学は無料ですので、支援内容に興味を抱いた事業所が見つかったら、詳細を問い合わせてみてください(私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)も、就労移行支援事業所の一つです)。
⑤まずはアルバイトから始めてみる

正規雇用を目指している場合でも、まずはアルバイト・パートタイムなどの非正規雇用などから始めてみることも効果的です。
非正規雇用を通じて、あなたに合った職業・働き方を確認することができることがあるからです。
一般的に、非正規雇用には、正規雇用に比べて「採用されやすく、辞めやすく、掛け持ちもしやすい」というメリットがあります。
つまり、興味のある職種について、正規雇用よりも「お試し」で働きやすいということです。
あなたに合った業種・働き方がわかれば、その分野での正規雇用を求めてステップアップすることもできます。
お勤め先によっては、働いているうちに正規雇用への打診があるかもしれません。
ただし、自分に合う職種が見つかるまで非正規雇用で職を変え続ける…と考えていると、なかなか見つからないこともあります。
収入・生活・今後のプランなどとの兼ね合いも考慮しつつ、また支援機関も頼りつつ、あらかじめ期限や回数を区切っておくことも検討しておきましょう。
そして、向いている職種が見つからなかったとしても、「向いていない職種はわかった」とポジティブに考えましょう。
なお、ご家族も含めたあなたの状況によっては、非正規雇用でも生活が成り立つ・楽しく暮らしていける、といったこともあるでしょう。
もちろん非正規雇用は「悪い」ものではありませんので、そんな状況であれば、無理に正規雇用を目指す必要はないかもしれません。
その上で、一般的に、非正規雇用の注意点には、「賃金が少ない・上昇しづらい、景気によって求人数や稼働日が増減しやすい」というものがあります。
あなたを不安にさせるつもりは決してありませんが、「ずっと非正規でも大丈夫そうか」といったことは、支援者も含めて話し合ってみることをオススメします。
⑥雇用枠を検討する
精神障害のある人の場合、先述の「一般枠と障害者枠のどちらを選ぶか」を考えることも重要です。
障害者雇用枠の場合、働く上で精神障害への配慮がなされます(一般的には、障害者手帳の所持が必要です)。
具体的には、配属先の部署や業務内容について、ある程度の融通を利かせてもらえます。
ただし、一般雇用枠よりも給与水準が低い傾向にあるので、求人探しの際には、待遇まできちんと確認するようにしましょう。
どちらの雇用枠に応募するかを考える際には、それぞれのメリット・デメリット、あなたが「仕事に何を求めるか」までを考慮して、総合的に判断する必要があります。
あなただけで抱え込まずに、前述した支援機関の専門機関を頼りながら検討することをオススメします。
障害者雇用枠の詳細は、コラム「障害者雇用で働くための条件とは〜メリット・注意点・サポート団体なども紹介〜」をご覧ください。
精神障害者に向いている可能性がある仕事・働き方

精神障害のある人がたびたび抱く疑問に、「そもそも精神障害者に向いている仕事があるのか」というものがあります。
個々の症状にもよりますが、以下の4つの特徴に焦点を当てた仕事・働き方が、精神障害のある人に向いている可能性があります。
さらに具体的には、次のような例が考えられます。
「定型的な仕事」という観点では、規定の帳票類を処理する事務職や経理職が向いていると考えられます。
「マイペースにできる仕事」という意味では、研究職や開発職などが比較的オススメです。
「在宅勤務が可能」という視点で見ると、フリーランスでできるお仕事も向いているでしょう。
具体的には、エンジニアなど、遠隔で文字のみのやり取りなどで済むものですと、負担も少ないはずです。
実際にうつ病などの発症をきっかけにフリーランスの仕事に転向する人は、最近では珍しくないようです。
また、働き方について言えば、フリーランス以外にも、業務時間等を柔軟に変えられるフレックス制などは、その日の体調や気分にあわせて仕事ができますので、向いているでしょう。
ただし、上記はあくまでも例であり、実際のあなた及び職場によって、向いている仕事は異なります。
上記は、「精神障害でも向いている仕事はある」という安心材料にしていただいた上で、実際のあなたの仕事については、繰り返すように支援者を積極的に頼りながら探していきましょう。
精神障害者が雇用後に気をつけるべき5つのポイント
最後に、精神障害のある人が、雇用後に気をつけるべきポイントについて解説します。
なによりも意識していただきたいのが、悩みを一人で抱え込まないということです。
精神的に追い詰められているときは、周りが見えなくなることもあるかもしれません。
しかし、前に述べた支援機関やかかりつけ医、ご家族など、あなたが相談できる相手はたくさんいます。
ぜひ、そうした周囲の力を借りながら、無理のない働き方を模索していきましょう。(参考:佐藤隆『職場のメンタルヘルス実践ガイド』、川上憲人『基礎からはじめる職場のメンタルヘルス』)
ポイント①治療・通院を継続する

1つ目は「治療・通院を継続する」です。
実際に就職活動や就職してからの仕事が始まると、忙しさや疲労から、時間を取ることができずに、または「働けているんだから大丈夫だろう」などと思い、自己判断で治療・通院をやめる人がいます。
しかし、自己判断で治療をやめたことで、うつ病などの精神障害が再発するケースは少なくありません。
とりわけ働き始めは、環境に慣れていないことでストレスが溜まりやすく、調子を崩しやすい時期です。
医師から「もう通わなくてよい」という指示があるまでは、治療・通院を継続しましょう。
ポイント②徐々に慣らしていくことを意識する
2つ目は「徐々に慣らしていくことを意識する」です。
就労直後は、なかなか仕事が回って来なかったり、作業もスピーディーに進まなかったりと、もどかしい思いをすることが多いかもしれません。
「自分は飲み込みが遅いのではないか」「能力に難があるのではないか」と悩んで、ストレスを抱える人もいるでしょう。
しかし、そこで無理にペースを上げると、負荷がかかりすぎて、精神障害を悪化させるきっかけになる可能性があります。
新しい環境で働き始めるときには、少しずつ仕事に慣れていくことで、能率を上げていくのが普通です。
あまり気負いすぎずに、徐々に慣らしていくことを意識しましょう。
ポイント③残業は極力控える

調子を大きく崩さずに仕事を続けたいのであれば、「残業は極力控える」ようにしましょう。
うつ病のような気分障害では、調子のムラが生じやすいため、日によっては「具合がいいからもっと進めておこう」「今日は残業しても大丈夫そうだ」と過信することもあると思います。
しかし、そこで無理に残業をすると、週の後半に体調を崩したり、休日に身体を休めても疲れが取りきれなかったりと、どこかにひずみが生じる可能性があるのです。
精神障害の症状を考慮に入れて、無理はせず、普段から残業をしないで済むような仕事のスケジュールを立てることが肝要です。
また、就職活動の時点で、「残業が多い職場・職種かどうか」も確認しておきましょう。
ポイント④生活リズムの乱れに注意する
4つ目は「生活リズムの乱れに注意する」です。
特に双極性障害がある場合、生活リズムの乱れが躁うつ・抑うつに転じるきっかけになりやすいと言われています。
夜更かしをせずに、できるだけ就寝と起床の時間を一定にするよう心掛けてください。
睡眠のリズムが乱れると、生活リズムも崩れやすいです。
不調を感じた場合は、まずは睡眠時間の確保に努め、生活リズムの安定化を目指しましょう。(参考:貝谷久宣『よくわかる双極性障害(躁うつ病)』)
ポイント⑤必要に応じて短時間勤務や休職も視野に入れる

最後は「必要に応じて短時間勤務や休職も視野に入れる」です。
これは特に、調子の波が激しい気分障害の人などが意識したいポイントです。
気分障害がある場合、「朝はつらいけど午後からなら出勤できる」「調子次第で勤務時間に融通を利かせたい」と感じることが度々あると思います。
そういった人は、短時間勤務制度を活用することで、ある程度、自分の調子に合わせた就労が可能になります。
まずは人事部門に制度があるかを確認し、申請方法を教わりましょう。
また、「どうしてもつらいときは休職する」という選択肢を持つことも大切です。
仕事をある程度長く休む場合、通常の有給休暇をつなげるという方法もありますが、休職制度を利用した方が、より安心感を持って休養に専念できます。
ただし、お勤め先によって、休職中の「給与支給の有無」や「適用期間」など、条件が異なりますので、その点をきちんと精査してから休職に入ることが大切です。
実際に検討する際には、まずは医師に相談の上で、上司や人事担当者と面談をするようにしましょう。
なによりも優先すべきはあなたの体調なのだということを意識し、大きく調子を崩す前に、短時間勤務や休職などの人事制度を頼ってください。
改めて、精神障害の代表例と症状

この章では、改めて、精神障害について、種類やその概要を簡単にご紹介します。
すでにご存じかもしれませんが、これまでにご紹介した内容の理解も深まると思いますので、ぜひご覧ください。
精神障害とは、強いストレスなどによる脳の働きの変化によって、感情や認知といった精神機能に困難が生じている状態を指す総称です。(参考:厚生労働省『精神障害(精神疾患)の特性(代表例)』)
代表的な精神障害とその症状には、以下のものが挙げられます。
思考、知覚、感情、言語などの脳の様々な働きをまとめることが難しくなることで、妄想や幻覚といった症状が生じる精神障害
うつ病・双極性障害など。気分の波が主な症状として表れる精神障害。憂うつな気分が続く抑うつ状態のみを認めるときは「うつ病」、気分の高揚が続く躁状態と抑うつ状態を繰り返すときは「双極性障害」と呼ぶ
一時的に脳の一部が過剰に興奮することで発作が起こる精神障害。けいれんや意識喪失などを伴う場合がある
アルコールの服用やギャンブルなど、ある行為を繰り返さないと満足できない状態になった結果、心身に障害が生じたり家庭生活や社会生活に悪影響が及んだりしている状態
交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで、認知や行動に障害が出ている状態
上記の他にも、特定の対象や行動に強い恐怖や不安を感じる「不安障害」や、環境への不適応が主な原因となり抑うつ症状が生じる「適応障害」などが挙げられます。
また、先天的な脳の機能の偏りによって社会生活に困難を感じる「発達障害」の人が、仕事内容や職場への不適応が原因でストレスを抱え込み、「二次障害」として精神障害を発症することもあります。
こうした精神障害に対する治療法としては、症状を和らげるための向精神薬を使う「薬物療法」や、カウンセラーとの会話を通して思考の癖や偏りを修正していく「精神療法」が有効です。
精神障害の原因には、遺伝的な要因から後天的な要因まで様々な説が唱えられているため、多くの場合、薬物療法と精神療法を組み合わせた治療が一般的と考えられます。
まとめ〜精神障害のある人が就職する上では、周囲の人を頼ることが大切です〜

精神障害者の雇用の現状から、雇用に向けてできること、雇用後に気をつけたいポイントまでを解説してきましたが、あなたの就職に役立つ情報は見つかったでしょうか?
精神障害のある人が就職する上で大切なのは、悩みを一人で抱え込まずに、周囲の人を頼ることです。
ここで言う「周囲の人」には、ご家族やご友人だけでなく、かかりつけ医や、専門機関の支援員も含まれます。
適切な支援を受けることで、雇用されるチャンスは広がりますので、ぜひそうした支援を頼ってみてください。
このコラムが、精神障害のある人の助けになれば幸いです。
【最後に改めて…】
就労移行支援
という仕組みを知っていますか?
「就労移行支援」とは、「病気や障害のある人の一般企業での就職や仕事での独立と、その後の定着」をサポートする仕組みのことです。キズキビジネスカレッジは、就労移行支援の中でも、「これまでの職歴とは異なる、新たな業界・分野への就職」と「これまでの職歴を活かした就職」の両方に強いのが特色です。就労移行支援は公的な認可に基づいて行われており、病気や障害があることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
を利用した方は…
- 初任給
- うつや発達障害があっても、
KBCでは平均21万円
- 就職までの期間
- 通常約1年半かかるところ、
KBCでは平均4か月
- 就職率
- 通常52%のところ、
KBCでは82%